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死んでないけど、死んでいます。  作者: 八倍数 梅雨
プロローグ

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1/5

気がついて

あげなおしました。よろしくお願いします。ゾンビ大好き! カクヨムに掲載分は今日中に順番にあげます。

 気がついたとき、真っ先に感じたのは喉の渇きだった。まるで砂漠で何日も水を飲まなかったみたいな。砂漠なんて行ったことないと思うけど。

 でも、そう感じるくらいに喉が渇いていた。カラカラという言葉は今使うべきなんだろう、なんてばやけた思考で考える。


 次に感じたのは、全身からくる重み。泥の底に沈んだような倦怠感。重たくて、今にも倒れてしまいそうだ。

 そのふたつの感覚が、体を支配していた。


 水が飲みたい。

 だるく、(にぶ)った頭にシンプルな欲求が浮かぶ。今すぐにでも冷たい水を、思いっきり喉に流し込みたい。


 ふと、視界の端で何かが揺れ動いた。


 ゆらゆらと、隅で揺れる何か。それを認識した途端、確信めいた感覚が沸き上がる。

 一歩、一歩と私はそれに近づいた。支配されたみたいに、でもゆったりと、体が自然に動く。


 すぐにそれの目の前まで近づけた。


 そして、私は、その影に噛みついた。


 ブチッと、ラジオの途切れるみたいな音がする。赤黒い液体が、裂け目からブシャッと飛び散る。


 なにをしてる――?


 そんな違和感は、口の中に含んだ感覚で押し流された。

 濃厚な、酸味を感じる味わい。


 おいしい。


 単純に、シンプルに。ただ、そう感じた。

 かじる、かじる。それの皮膚が裂けて、骨が見えても、私は食べるのを止めない。


 馬乗りになって、さらに首元に、がぶり。


 それは抵抗するかのように両手を前に出してきた。うっとおしく感じて、右手で片方の腕を押さえつける。

 もう一方も、と思ったら私には左腕がないみたいだった。


 まあいいかと、少し邪魔に感じながらもまだまだ喰らいつく。やがて痙攣みたいにそれはピクピクと震えるだけになった。


 なにをしてる――?


 渇きはもう感じない。明瞭になった頭で、もう一度私は自身に問う。


 なにって、食べている。何を――?


 下敷きになったそれ。肉がちぎれて、黄色い真皮層までくっきり見える。赤黒く飛び散った血が床に溜まっていた。


 それは、人の形をしていた。


 「うっぷ……」


 すべてを認識して、脳が一気に冷え切って、青ざめた。体が拒否するかのように、さっき飲み込んだものをすべて吐き出そうとする。

 到底抑えきれない。びちゃびちゃと、赤い塊が流れ落ちていく。下のそれがもっと醜悪な見た目になった。


 多分五秒くらい、がっつりと吐き出して。


 「はあ……はあ……」


 馬乗りの姿勢から離れつつ、激しく胸を上下させる。


 さきほどみたいな渇きも、支配されるような感覚もない。今残るのは、氷を落としたみたいな脳の感覚と、口に残る不快感。


 「なんで、私、ひと、食ってるわけ……?」


 混乱と、疑問と、嫌悪感と。いろいろない交ぜになった感情でキレ気味に呟く。


 視界の端に、また揺れる何かが映った。姿見だった。姿見に、自分の姿が映っている。


 白髪の髪に、白濁した瞳。無い左腕に、削げた右頬。


 「はあ……?」


 もう一度、キレ気味に発する。真っ赤に汚れた口周りが、同じ動きをした。

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