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Seven:アダムとイブではない

「自由...そうねえ」


出雲さんは腕を組んで悩む。僕は思考の邪魔をしないように声もかけずただ黙る。やがて数分後、出雲さんは結論から切り出してきた。


「自由は神が与えてくれたものだね。それと同時に無限に追い続けるものだよ」


「なぜです、出雲さん」


「質問で返すわ。旧約聖書の書き出しって知ってる?」


まさか問い返されるとは思っていなかった。僕は云々と考えて自信なさげに答える。


「イエス・キリストは聖母マリアから生まれた、とかですか?」


僕は答えてすぐ出雲さんに嘲笑された。


「違うわ、イエスが登場するのは新約聖書。『初めに、神は天と地を創造した』よ」


旧約聖書と新約聖書はそういう違いだったのかなど無駄に感心している僕を気にもかけず出雲さんは話し続ける。


「神は書き出しに書いてあるようにいろいろ創造したのよ。例えば一日目には光を、二日目には大空や水、それからどんどん続いて最後の六日目。ここが大事よ。神は陸上生物、そして人間を創造したの。しかも人間に対して全ての動植物を託したのよ!これってまさに自由を与えてくれたことだと思わない?本来なら神だけでいくらでもできたのに、人間に託したわけ。それなら人間は与えられた自由を最大限満喫して、無限に自由を追い求めるべきだと思うわ」


僕は大いに唸った。蝉川博士は追い求めすぎてはいけないと言っていた。一方で目の前にいる出雲さんは無限に追い求め続けるものだと語る。二人の話があまりにも相違していて僕は返答に困った。僕は答えを確定させるために質問をぶつける。


「それなら、今の世界はどうですか?まさに自由とでも言えそうですが」


「今の世界?自由と言えば自由かもしれないけど、私にはそう思えないな。そもそも外にあるあらゆる人工物はボロボロだし、どちらかというと動植物というより人工知能と調和しているように感じるわ。だから今の世界は完全に自由とは言えないかもね。まあ、アダムとイブはいるけどね」


いきなりアダムと例えられたことで僕の心臓が大きく跳ねる。実際にこの世界には僕と出雲さんの二人しかいないのだから、そう例えることもできてしまう。それでも僕は恥ずかしかったので言い返した。


「僕たちがアダムとイブなら、もう禁断の果実を食べちゃってますよ。善悪も恥ずかしさも知ってますし。なのでアダムとイブではありません」


出雲さんはどうやら正論を言われたことに少し苛立ったらしく、それが表情に出ているまま言った。


「なら神の気まぐれよ。神が気分でこの世界を創造して私たちを生み出したのよ」


僕は呆れたので、冗談を返した。


「神なら核で死にましたよ」


すると出雲さんの血の気がさーっと引いた。僕はそれに驚いて声が出なかった。いくら冗談だとしても流石に不謹慎すぎたか。お互いそのまま動けずに見つめ合っていると、出雲さんはやっと声を絞り出した。


「それなら神を創造すれば良いじゃない」


僕は更に驚いた。驚愕の気持ちで押し潰されるかと錯覚したほどだった。出雲さんはもちろん研究者なのだから、禁忌の三大研究を知らないはずがない。そして、神の創造はまさにそのうちの一つである。出雲さんは禁忌を破ろうとしているのか、と訝しげに思っていたところで僕は思い出した。


なぜ、出雲さんは生き残っているのか?


今の世界は人類がいなくなっただけであって世界自体は直線上に存在している。神は存在しない。僕は100年カプセルで眠っていた。その100年カプセル自体は世界に一つしかない。それなら出雲さんは一体どうやって生き残った?

僕は「神の創造」と「生き残っている謎」を解決するため、僕は出雲さんに尋ねた。


「出雲さん。ここは政府指定研究施設なんですよね?図書館までの道のりを教えてください」


出雲さんは突然のことで僕を怪しむ目で見てきたが、「図書館ならこの道を真っ直ぐ行って二番目の角を左に曲がれば着くわ」と答えてくれた。僕は席を立とうとしたところでチャーハンがまだ少し余っていることに気づく。最後の一口で食べたチャーハンは既に冷め切っていた。

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