Four:政府指定研究施設
「冒険って、どこに行くんですか!というかパーティじゃないですか!?」
「どっちだっていいよ!今はうちの研究施設に向かってるの!」
実のところ、研究施設は僕のところだけではない。政府は戦争に備えて、全国各地に研究施設を構えていた。特に東京は日本の中心であるため、そこかしこに研究施設が建設されていた(多くの場合は住民の邪魔にならないよう地下であったが...)。
出雲さんの研究施設にはすぐ着いた。僕の研究施設から、走って4分ほどだった。ずっと走り続けていたので、僕はぜえぜえと両手を膝に当てて下を向きながら深呼吸する。それに比べて、出雲さんはあまり疲れていなさそうだった。それから、出雲さんの研究施設が意外にも近くにあったことに少し驚く。
「さあ、入りましょ。私がいるから、顔認証システムは問題ないわ。そのまま着いてきて」
僕は言われた通りに出雲さんの後を着いていく。階段を降りながら戦争が勃発してもなお顔認証システムが機能していることに感心していると、研究施設内が僕のところと打って変わって異様なほどに片付いていて清潔であることに驚く。今日になってもう何度驚いたかわからない。
「うちは政府指定研究施設の一つでさ、他の場所に比べてかなり頑丈な造りになっているの。だから敵軍も入れなかったっぽいね。人だけじゃなくてAIも24時間体制で稼働しているから、常に清潔なのよ。今もAIは稼働してるわ」
政府指定研究施設。数ある研究施設の中で、日本に多大なる貢献をした場所のみが認定される。認定されれば出雲さんの言うように研究施設自体の大幅強化や24時間常に稼働するAIの無償導入、巨大な図書館の建設、何より莫大な研究資金を確保できるので、どの研究施設も成果を上げるのに必死だった。僕のところももちろん例外ではない。
「まあ、こんな堅苦しい話はつまんないよね。そんなことよりパーティよパーティ!」
僕は現実に戻される。そういえば冒険でありパーティでもあることを思い出した。そして僕はふと疑問が頭に浮かび、想歌にぶつけてみる。
「ところでパーティするのは嬉しいんですけど、食材はどうするんですか?まさか自給自足の生活をするわけではないですよね」
出雲さんは「よくぞ聞いた」という自信に満ち溢れた顔でこっちを向き、答えた。
「うちは主に農業の研究を扱う施設だったの。そしてその結果、半永久的にありとあらゆる食材を完全AI管理で育てることに成功したわけ!食材の価格がいきなり下がり始めたのも、私たちのおかげよ!」
聞いて、僕は政府指定研究施設に認定されたことに納得がいった。確かに食材の価格が下がり、蝉川博士も「どこかの研究施設のおかげでお金が浮き始めたから助かるなあ」と言っていた。食材の価格が下落し始めたことはニュースでも報道されていたが、なぜ下がり始めたのかは触れていなかった。他国に知られてはまずいと政府が直々に報道規制を促したのかもしれない。
「とりあえず鴨志田くん、あなたは今日の主役なんだから休んでなさい。そこのソファで寝てな、もう誰もいないから自由なのよ」
誰もいない。
そうだ。もう誰もいないのか。言葉が頭で何回も繰り返される。誰もいない。僕は出雲さんと出会ったことで、人類が滅亡したことを忘れていた。同時に蝉川博士がいない事実も突きつけられる。流石にもう泣かなかった。僕はソファの柔らかさに感動し、そのまま目を瞑る。誰もいないから自由。僕は自由の象徴とも言える蝉川博士を思い浮かべ、まさに「自由」について語り合っていたときのことを思い出し始めていた。




