表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

天才vtuberの苦悩は元カノしか知らない。

作者: 永進
掲載日:2025/12/17

天才って言われて苦しくない?

『いつ配信を再開しますか?』

入ってくるメッセージ。

『大丈夫ですか? 全く反応がありませんが生きてますよね?』

返事をしない。


「はあ」

ため息を吐く。

そして、少年はスマホをいじる。


SNS。


『天才vtuberいつ復活するん?』『また天才ぷりを見せて』『襲われてない? 天才vtuberだから』


「アカウント消したい。この世界からいなくなりたい。vtuberになるんじゃなかった。

もう、配信したくない」


どうしてこうなったのか、16歳の彼は思い返す。

天才vtuber。


平凡なのに、なぜ天才vtuberになってしまったのか。




「僕たち、別れよう」


あれは、中学校の卒業式前日だった。


図書室で、別れないかと彼は言う。

長い黒髪、眼鏡、地味な雰囲気。そんな少女に。


「別れる?」

少女は、そう返す。

悲しみはなく、怒りもない。なぜ別れるのか、見当はついている。けど一応聞く、そんは感じの。

「うん。僕、考えたんだ。

vtuberになるからさ、僕。君は高校生になるだろう? 離れるし、君には、高校生活を楽しんでほしい。

勝手だけど」

微笑んで、少年は言う。

「受験はしてないし、vtuberの企業とは、明後日、東京でする予定だから。前にも言ったけどね。ドッキリではないらしい」


vtuberの大企業、そこと彼は契約をする。


少年は、少女、彼女をじっと見る。

許してくれるだろうか? 恋人なのに、勝手にvtuberになったりして。自分は、この子が作家になるという夢を叶えるまで応援したかったけど。たまたま送ったら、vtuberになることが決まって。何がよかったのか、自分にもわからないけど。平凡すぎることが逆によかったのか。vtuberは個性のある人がなろうとするものだから。


などと思っていると、

「私のことは気にしないで。あなたはあなたの夢を追って。私は私の夢を追うから。平凡すぎるのは個性だよ」

「…やっぱり」

何でも悟られるなあ、と彼氏。


そして、

「うん。僕、頑張るよ」

「頑張ってね」

「別れよう」

「別れよう」


そうして、2人は別れた。

だが、そこで、彼は思った、思ってしまった。


『別れたし、どうせ努力をしても平凡だ。なら、全力で頑張ろう。

天才と言われないかなと思うまで、いや、それ以上の努力を』


そして、『平凡』は『天才』と言われ、それが『当たり前』と思われるようになってしまった。


天才の苦悩は誰も知らない。

その天才は、努力をして成り立っていることを、誰も知らず。




「vtuberやめたい。

僕は、そもそも平凡なんだ。

勉強だって、運動だって、平凡だった。学校では、平凡だった」

学校では。

だが、vtuber界では?


「天才、とか」


『天才と思っていたのに』『見損なった』『ただの平凡じゃん、つまんね』『キャラ崩壊』


毛布の中で、ガクガク震える。

自分の部屋で引きこもっている。鍵は閉め、毛布の中に。

『天才vtuber』として活動していたのに『ただの平凡』とばれ、批判される自分を想像し、恐怖で震える。


「うう。せめて、せめてあの子と別れていなければ。けど、メッセージはもう入らない。別れたんだから」


スマホが、震える。

彼も、震える。

びくびくしながら、手を伸ばす。




『天才って言われて苦しくない?』


彼女、元カノからの、メッセージ。

絵文字も、顔文字もない。

だが、そのメッセージは、直接、あの子から聞いてるようで。


涙が、流れる。

溜まっていたものが、全て出るように。

滝のような。


「ひっく。

やっぱ、何でも悟られてるなあ、あの子には」


『天才』のまま進むか?

『凡人の自分』をさらけ出すか?

それは、まだ考えていない。


だけど、溜まっていたものを全て出そうと、涙を流すのであった。


『天才vtuberの苦悩は元カノしか知らない』

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ