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6.計画

 ユタカはシェイフス父子に頼んだ。

「おそらく、そなたらは昨日から私がいつもとどこか違うと気づいておろう。

 正直に申せば、奴らに操られていた間の出来事はよく覚えておらぬ。人々に関しても同じで、数名を除けば、誰が誰なのかすらわからない。ゆえに、そのあたりを2人が教えてくれると助かる」


 父子は恭しく頭を垂れ、命に従った。

 カティルが答える。


「以前の陛下は気分の変化が激しゅうございましたので、言動が多少変わられても、さほど怪しまれることはございません。また人々についても、顔や名を覚えてくださることがほとんどございませんでしたから、問題はないかと存じます」


(要するに、気まぐれに好き放題やってたってことか……)

 ユタカは心中で吐き捨てた。まさにゲームの設定どおりである。むしろ都合がよいと思えた。


 カティルがさらに口を開いた。

「ただ一つ気がかりなのは、タランダルでございます。あまりにも長く陛下の(かたわ)らにおりましたゆえ、下手をすれば、陛下の変化に気づくやもしれません。

 しかもあやつは、あらゆる悪事へと陛下を引きずり込む張本人。放置したままでは、事を進めるのが難しくなりましょう」


 ユタカも同じ思いを抱いていた。

「では、どうするのがよいと思うか?」


 シェイフスが進言する。

「すぐに追放するのは、危険にございます。しばらくは様子を見て、しかるべき罪を押さえてから除かれるのが賢明かと。

 あやつは常日頃より、陛下の威を笠に着て横暴を尽くしておりますゆえ、罪状を挙げるのは難しくございますまい。

 ただし、密かに追い払うのではなく、大勢の前で大罪を問うてその場で処断なされば、後日の禍根を残さぬでしょう」


 ユタカは黙って頷いた。

 タランダルが魔族なのか、ただの手先なのか、それとも単なる悪人なのかは分からない。だがあいつを傍に置いては、何一つ動かせぬのは明らかだ。


 皇宮から追放するだけでは足りない。奴は皇帝についてあまりにも多くを知っている。可能であれば確実に――つまり殺すしかない。


 シェイフスはさらに続けた。

「もう一つ。先ほど陛下も仰せでしたが、今の皇宮には敵の目がそこかしこに潜んでおります。陛下が比較的自由にお振る舞いになれる場所は、妃方々のいる離宮だけにございます。

 そこは限られた者しか出入りできぬゆえ、奴らの目も届きませぬ。

 しかも放蕩(ほうとう)を装うにも格好の場にございます」


 ユタカの脳裏にゲームの設定がよぎった。クズ皇帝が各地の美女を(さら)って閉じ込めていた場所――別名「花の宮」あるいは「黄金の牢獄」。昨日の朝、ユタカが目を覚ましたのも、まさにそこだった。


「まさか、その離宮の女の中にも奴らの間者が紛れている、などということはないだろうな?」


 シェイフスが苦い笑みを浮かべて答える。

「ご安心くださいませ。そこは一応、私の手が届く範囲でもございますし……何よりそこにいる方々の境遇を考えれば……」


 その言葉に、ユタカは昨日の朝目覚めた時の状況と、昨夜皇后の部屋で見聞きしたことを思い出した。

(ああ〜っ、この変態クソ皇帝め!)


 ゲームの設定では、そこに集められた美女の数は200人に達するとされていた。ただし実際にゲーム内で描写されていたのは、皇后以外では通りすがりの数人程度にすぎない。


「む……その、そこには女が一体何人おるのだ?」

 まさか本当に200人いるわけがない、と内心思いつつおそるおそる尋ねたのだが、


「現在、離宮にいるのは、197名にございます」

「そ、そんなに!? い、いや、どうやって相手をするつもりで……」


 思わず本音が口をついて出てしまった。シェイフス父子が、吹き出しそうになるのを必死でこらえているのがわかる。


 ともあれ、進むべき方向は定まった。離宮で暮らしつつ敵の目を逃れること。そしてできるだけ早く、タランダルを始末すること。

 少なくとも、この2人を味方につけられたのは、悪くない第一歩だった。


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