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転生令嬢冒険者は元・ニセモノ魔法少女!  作者: 軟膏
第四章『誇り高き剣!ミラージュティアウィング登場!』
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21話『侯爵令嬢、再び旅に出る』

「天翔ける、気高き翼! ミラージュティアウィング!!」


誇りと愛をその身に宿し、黄金の光と共に誕生した新たなる戦士。そのあまりにも神々しく、気高い姿に、阿鼻叫喚の巷と化していた大広間に、一瞬の静寂が訪れた。ダークイマージュの幹部たちすら、その輝きに目を細め、動きを止めている。そして、ブリジットの父であったアントゥルーが、その本能の奥底で、目の前に立つ黄金の戦士の姿に、かつての最愛の妻の面影を見たかのように、破壊の衝動を、一瞬だけ忘れていた。


「ブリジット…!」

「すごい…綺麗…!」

瓦礫の中から立ち上がったミラージュティアドリームとミラージュティアミラクルが、仲間の劇的な変身に歓喜の声を上げる。三人の心が、今、確かに一つになったのを感じた。絶望的な状況は、一人の少女の愛によって、希望の光へと反転したのだ。


「…面白い。実に面白いデータだ! まさか、あの玩具に、本当に魂が宿るとはね!」

最初に我に返ったのはヴェクサスだった。彼の瞳は、未知の研究対象を前にした興奮で爛々と輝いている。

「フン、見掛け倒しが! そんな付け焼き刃の力で、この俺様が止められると思うなよ!」

グリーヴァもまた、猛々しい咆哮と共に、再び闘志を燃え上がらせた。


「行くわよ、二人とも!」

ミラージュティアウィングの声が、戦場に響く。それは、もう迷いのない、確固たる意志を持った指揮官の声だった。

「うん!」「はい!」

ドリームとミラクルが力強く応え、三人は完璧な連携で散開した。もう、敵の思惑通りに分断されてなどやらない。


「私の相手は、あなたよ!」

ドリームは、鉱山での一件で修復され、格段にパワーアップしたパクトの力を解放し、弾丸のようにヴェクサスの前に躍り出た。

「おや、僕とやるのかい? 君の戦闘データは、もう完全に解析済みだと思っていたけれど」

ヴェクサスが、余裕の笑みで眼鏡の位置を直す。だが、ドリームは不敵に笑い返した。

「残念だけど、そのデータはもう古いよ! 私たちは、昨日よりも今日、今日よりも明日って、どんどん強くなってるんだから!」

その言葉通り、ドリームの動きは、ヴェクサスの予測を遥かに上回っていた。彼の放つダークミラーの弾幕を、紙一重どころか、まるで未来が見えているかのように余裕をもって回避し、懐へと潜り込む。

「なっ…!? この速度、この反応…データにないぞ!」

狼狽するヴェクサスに、ドリームのダークピンクのオーラをまとった拳が、寸分の狂いもなく叩き込まれた。

「これが、仲間を想う…私たちの今の力よ!」


一方、グリーヴァの前には、ミラージュティアミラクルが立ちはだかっていた。

「ガッハーッ! てめえのような、ひ弱な魔法使いが、この俺様の相手だとぉ? 笑わせるな!」

グリーヴァは、力こそが全てだと信じている。その巨大な腕を振りかぶり、力任せにミラクルへと殴りかかった。

「させません!」

ミラクルは冷静に、しかし迅速に防御魔法を展開する。だが、それはただ防ぐだけではない。

「リフレクト・ウォール!」

光の壁は、グリーヴァの拳の衝撃を吸収すると同時に、その威力をそのまま彼自身へと跳ね返した。

「ぐおっ!? なんだぁ、こりゃあ!」

自分の力でよろめくグリーヴァに、間髪入れずミラクルの追撃が襲う。

「バインド・ウィップ!」

杖から放たれた光の鞭が、グリーヴァの足に絡みつき、その動きを封じる。パワーに頼り切った大雑把な攻撃は、ミラクルの多彩な魔法と、冷静な戦術の前では、もはや脅威ではなかった。


そして、ミラージュティアウィングは、父の姿をしたアントゥルーと、その元凶であるラメントに、ただ一人で対峙していた。

「ククク…面白い。面白い余興だ。だが、お前のその輝きも、父親の絶望の前ではすぐに色褪せる」

ラメントが、ブリジットの心を折ろうと、冷たい言葉を投げかける。

だが、今のウィングに、その言葉は届かない。

「黙りなさい、下衆な道化師。わたくしの愛は、貴様の作り出す偽りの絶望などに、決して負けはしない!」

ウィングの体が、黄金の光と共に宙を舞う。背中の光の翼は、彼女に三次元的な機動力を与えていた。アントゥルーの剛腕を、まるで舞踏を踊るかのように優雅にかわし、その切っ先は、父であった者の体を傷つけることなく、その邪悪な力の源である胸のダークミラーだけを、的確に捉えていた。

彼女の聖剣『ミラージュウィングレイピア』が、閃光を放つ。

「シルフの舞・天翔!」

無数の黄金の斬撃が、アントゥルーを包み込む。それは、肉体を切り裂くためのものではなく、その身にまとった邪悪なオーラだけを削ぎ落としていく、浄化の剣技だった。

「アントゥルゥゥ…!?」

アントゥルーが苦悶の声を上げる。ラメントの影による妨害も、ウィングの絶対的な速度と、天翔ける翼の前では、ことごとく空を切るばかりだった。


「ちぃっ! あの女、厄介すぎるぜ!」

「このままでは、こちらが消耗するだけだ。…仕方ない、ここは一旦引くのが得策だろう」

グリーヴァとヴェクサスは、それぞれの相手の予想以上の成長に舌を巻くと、互いに目配せをして撤退を決めた。彼らは不本意そうに舌打ちをすると、闇の中にその姿を溶かして消えていった。


「なっ…! 貴様ら、見捨てる気か!」

仲間が消え、狼狽するのはラメントだった。形勢は完全に逆転した。

「このまま、終わらせるものか…!」

追い詰められたラメントは、最後の悪あがきとばかりに、アントゥルーに突き刺さっていたダークミラーへと手を伸ばす。

「お前に、最高の絶望をくれてやる! その父親の魂ごと、この世界から消し去ってくれるわ!」

ラメントは、侯爵の魂を無理やりダークミラーから引き抜くと、それを自らの影の中に吸収した。そして、魂を抜かれ、ただの邪悪なエネルギーの塊となった抜け殻のアントゥルーに、自らの魔力を注ぎ込み、強制的に暴走させる。

「アアアアアアアアアッ!!」

アントゥルーの巨体がさらに膨れ上がり、もはや知性の欠片もない、純粋な破壊の塊へと変貌した。

「さらばだ、光の戦士ごっこ! 愛する父を、その手で葬るがいい!」

高笑いを残し、ラメントもまた、影の中へと姿を消した。


後に残されたのは、暴走する巨大な悪意の塊だけ。しかし、三人の戦士の心に、もはや迷いや恐怖はなかった。

「ブリジット!」「ウィング!」

ドリームとミラクルが、ウィングの元へと駆け寄り、三人は再び並び立つ。

「私たちの絆の力、見せてあげるわ!」

ウィングが、高らかに宣言する。

「これ以上、父様を、悪の力に利用させはしない!」

ウィングはレイピアを天に掲げ、必殺の技を解き放つ。

「天よ、光よ、わが剣に集え! ミラージュ・グロリアス・フェザー!」

彼女の背中の翼から、無数の光り輝く羽が放たれ、暴走するアントゥルーの巨体をがんじがらめに縛り上げた。動きを封じられたアントゥルーに、ミラクルの追撃が加わる。

「すべての命に、祝福の光を! アモーレ! ミラクル・ブレッシング!」

杖から放たれた温かい浄化の光が、アントゥルーの邪悪な力を内側から弱めていく。

そして、トドメを刺すのは、この物語の始まりの戦士。

「受けなさい! これが、私たちの…みんなの夢の力よ!」

ドリームは、パクトから溢れ出す全ての力を右の拳に集中させる。

「ミラージュ・アモーレ・コメットォォッ!!」

三人の心が一つになった、愛と、奇跡と、夢の連携攻撃。それは、いかなる絶望の闇をも打ち破る、希望の光そのものだった。

光の奔流に飲み込まれたアントゥルーは、断末魔の叫びを上げる間もなく、その巨体を維持できなくなり、まばゆい光の粒子となって、静かに消滅していった。


戦いが終わり、静寂が戻った大広間。変身を解いた三人の少女は、互いに支え合いながら、そこに立っていた。

逃げ惑っていた貴族たちが、恐る恐る物陰から顔を出す。そして、目の前の光景を理解すると、誰からともなく、拍手が巻き起こった。それは、やがて万雷の喝采となり、三人の若き英雄を、温かく包み込んだのだった。


後日。城の一室で、ブリジットは意識を取り戻した父と、静かに向き合っていた。

「…すまなかった、ブリジット」

侯爵は、やつれた顔で、しかし真っ直ぐに娘を見つめ、深く頭を下げた。

「わしは、お前を愛するあまり、お前の誇りを、その輝きを見ようとしていなかった。お前を信じきれなかった、この愚かな父を、許してくれ」

「…父様」

「もう、止めはしない。お前の選んだ道を、誇りに思う。仲間と共に、お前の信じる正義を貫きなさい。スヴァンフルート家の娘として、いや、一人の父親として、お前の旅立ちを、心から応援している」

父の、心からの言葉だった。その瞳には、もう昔のような過保護な心配の色はなく、娘の成長を認める、温かい信頼の光が宿っていた。

ブリジットの瞳から、一筋の涙がこぼれる。彼女は、父の手を、そっと握りしめた。

「…はい。行ってまいります、父様」

長年のわだかまりが解けた父と娘の間に、ようやく、穏やかな時間が流れた。


王都へと向かう馬車の中。窓の外の景色を眺めながら、ブリジットは晴れやかな表情で呟いた。

「わたくしたちも、ようやくスタートラインに立てたようですわね」

「うん! これで三人揃って、正真正銘の『ミラージュアモーレ』だね!」

アンナが、満面の笑みで応える。

「はい! これから、どんなお菓子…いえ、どんな冒険が待っているのか、楽しみです!」

カナリアもまた、期待に胸を膨らませていた。

令嬢戦士と、そのメイド、そして高慢だった先輩剣士。三者三様の少女たちが、それぞれの過去を乗り越え、本当の意味で一つのチームになった。

彼女たちの奇跡と愛の物語は、まだ始まったばかりだ。

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