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 ノルドリード・フォン・シュテレイン、22才。


 ある日、私は宰相の執務室の椅子に背を預けると幼い日々から今までの事を振り返っていた。


 侯爵家の次男として生まれた私には家族が他者に自慢し過ぎるほどの才能がいくつかあった。

 まず1つ目、美貌。

 自分ではよくわからないし意識したこともないが、周りが言うには10才を迎える頃には中性的な性別を超える美しさが完成していたらしい。

 15才を越える頃には夜会で声をかけられることも多くなったが、着飾った御令嬢がたにイマイチ興味が持てず許嫁などは全て断ってもらっていた。

 2つ目、頭脳。

 一度見聞きしたことについては、大抵のことは理解できたし、とくに問題なく文も武も最低限の努力で人並み以上には習得することが出来た。

 とくに本や資料を読むことが好きで、未来の問題を予測し、無事に問題を回避できたときの快感は退屈な私の人生の中で大きな楽しみの1つだった。

 3つ目、これは運。

 とくに人との巡り合いの運には恵まれているほうだと思う。

 父は由緒ある侯爵家の立派な当主であるし、母も傍流の家の出での淑女であり、2人とも人格的にも尊敬できる人物で私を心から愛してくれているのがわかった。

 だが、さらに溺愛してくれる人物がいた。

 それが兄だ。

 これほど才能に愛された弟がいたなら、まったく望んですらいない家督争いの火種にされたりして兄弟間で骨肉の争いに発展してもおかしくはなかっただろう。

 だが、私の3つ上の兄は才能こそ私には及ばないまでも人並み以上に優秀で、私には備わっていない皆を取りまとめる人徳に溢れていた。

 兄は私の優秀さを両親以上に喜び、家督を継ぐかどうかすらもお前の好きに選んでいいと次期当主の相続権までも次男である私にくれたが私は長子である兄が継ぐべきだと思っていたし、その事を伝えると兄も快く私の選択を受け入れて次期侯爵には兄がなることに決まった。

 兄なら問題なく次期侯爵として家を盛り立てていってくれることだろう。


 18才を過ぎた頃、国のために文官となる道を選んだ私だったが、3年も経つころには持病の悪化で引退する宰相の代わりに次期宰相に大抜擢されることになった。

 それなり以上に仕事に励んできたつもりだが、こんな若輩が宰相になるとという事実に自分自身が1番驚いていた。

 それよりも不思議だったのが普通はもっと抵抗勢力などが出現したり、貴族にありがちな派閥から反対されるものだと思っていたが、私の宰相就任は意外なほどすんなりと承認されたことだ。

 少し肩透かしの印象だったが、皆に認められたからには国のために今まで以上に尽力するだけだと思っていた。

 意気揚々と宰相としての初勤務に出ようとする私に兄が申し訳なさそうに頭を下げてくる。



「私の力が足りないばかりに、すまない」とは侯爵位を継いだばかりの兄の言葉だ。


「兄上は私の宰相就任を喜んでくださらないのですか?」


「ノルドの宰相就任は大変栄誉あることだとは思うのだが、このタイミングでなければな」


「それはどういうことでしょうか?」


「…………引き継ぎが終われば、じきにわかる」



 苦虫を噛み潰したような顔をした兄を残して共とともに登城する。

 私の前任はオストマン卿。

 齢70を超えた高齢であるが温和で堅実な方だった。

 オストマン卿がどのような手腕を持っていたかは知らないが、宰相を引き受けたからには現在の国の状況を正しく把握しなければならない。

 執務室で前任の宰相からの引き継ぎ書類を確認していた時の出来事だ。



「これはどういうことだ!」



 バンと机を叩く音が部屋に響くとと、幼い頃から私の面倒をみてくれており、宰相となった今も側付きをしてくれているアルベルトが荷物の整理の手を止めて少し驚いた表情でこちらを見ていた。

 宰相という役職に付いて落ち着きを持って職務に当たらないといけないというのに、自分でも驚くほどの声が出てしまっていたから窘められる視線を向けられても仕方がないだろう。



「坊ちゃま、どうされました?」


「アルベルト、この歳で坊ちゃま呼びはやめてくれ。とくに仕事中は」


「失礼しました。それで、どうされたのですか?」


「この引き継ぎ書類に書かれている内容だが、この国の状況は酷すぎるんじゃないか」



 その書類には数々の問題が記載されていた。


 王の妃候補の引きこもり問題。

 30歳を越える王の妃候補が11歳というのもどうかと思うが、引きこもらせてどうする。

 こんな事が公になれば、王家の威信が崩壊しかねないだろう。


 将軍の拾い子問題。

 山で保護したことはともかく、わざわざ自分の養子にする必要はないだろう。


 女系公爵家の跡継ぎ問題。

 その他にも数々の問題を抱えていることが記されていた。

 貴族階級以上の大きな問題だけでもこれだけあるというのに、国民からの苦情や陳情が数多の数寄せられていた。

 私は傍らに控える眼鏡をかけた30代の細身の文官に咎めるような視線を送る。



「どうして、これらが今の今まで放置されていたのだ」


「前任のオストマン卿は高齢でありましたし、膨大な書類に目を通すだけで精一杯であったと思われます。城内外の祭事や祝事の取り仕切りもありましたし、とても解決まで手が回らなかったのかと」


「それでも酷すぎるぞ。なかには国を揺るがしかねない陳情も含まれているではないか。とくに、この麦の高騰はなんだ! 今の時点で去年の倍の価格だぞ」


「それについては天候不順と他国との貿易の結果という報告でありましたね」


「すぐに大臣と話をしたい」


「畏まりました。早急に大臣に使いを出します」



 しばらくすると執務室にしぼみかけの風船のようにだらしない腹の50代半ばの男性がやってた。

 この男は農園大臣ノーリン卿。

 前宰相時代からの農園大臣で裏金を作っているなどの黒い噂の絶えない男だ。

 いつかそのことも追求したいと思っているが、なかなか尻尾も出さないし、今はそれどころじゃない。



「宰相殿、お呼びでしょうか?」


「突然の呼び出し申し訳ない。昨今の小麦価格の上昇について貴殿の意見を聞きたかったのだ」


「小麦価格の上昇について話を聞きたいということでしたな。宰相殿もすでにご存じかもしれないが、採れた小麦が例年より少なく他国でも需要が高まっているため、輸入量も減少していることが高値となっている原因でしょう」



 農園大臣の言う通りで最近の天候不順は大きな話題に上がっていたことは知っていたが、ここまでひどく影響が出るまで放置していたとはどういうことだろうか。



「今すぐ国の備蓄を放出して価格の高騰に対応する。民が飢えないように最大限の配慮をしてほしい」


「備蓄小麦の放出を許可していただけるのですね。宰相殿はどのくらいの量を放出しようとお考えで?」


「市場の価格の変化を見ながら流通させる量は大臣に一任する」


「承知しました」



 フッと薄く笑った大臣が恭しく一礼して部屋を出ていく。

 さっそく動いてくれるのだろう。

 いろいろと黒い噂もあるが、若輩で宰相に任命された私への不満も表に出さず好感の持てる対応だ。

 傍から見れば民からの人気取りにも思われるだろうが、そんな外聞を気にしている場合じゃない。

 とりあえず国民が飢えないようにしてやることが一番だろう。

 細かい調整はこれからしていけばいい。

 それから1週間後。



「一向に小麦の値が下がる気配がありませんな」



 農園大臣からの報告に頭を抱える。

 すでに国庫から2割の備蓄小麦の放出はしていたが、価格は高騰を続けていた。



「2割といえば、国の消費量の2か月分に相当する量だぞ。それなのに何故流通量が変わっていない。…………埒が明かん。街に出てみるぞ」


「準備いたします。供はどうされますか?」


「いらん。通りの店を見て回るだけだし、大人数で押しかけては警戒されるからな」



 なるべく簡素で地味な服に着替えると眼鏡をかける。



「眼鏡には軽く認識阻害の魔法も付与されているから、私だとは気付かれることもないだろう」


「はい、ただの美青年に見えます」



 認識阻害されて尚、美青年に見えると言われるのもどうかと思うが、これで自分が宰相だとは気付かれないならそれでいい。



「では、行ってくる」



 王城を出て、食品を取り扱う店の多い通りに行くと大きな店舗では小麦の入った袋が並べられていたが、どれも報告にあった通りの高値がつけられていた。



「いらっしゃい!」



 店の店員が愛想の良い笑顔と元気な声で出迎えてくれる。



「これは、どこの小麦だ?」


「おそらく、モルン地方のものと、輸入小麦を混ぜたものかと。詳しくは卸の方に問い合わせしないと不明ですが、この辺りの店で取り扱っているのは、だいたいその辺りの品のはずですよ」



 どこの店舗を覗いても価格は高騰したままで店員の証言も曖昧だった。

 大臣に指示した対応の効果をみるために、ある店員に声をかけてみた。



「備蓄小麦は仕入れていないのか?」


「備蓄小麦? そんなものがあるんですか?」



 とぼけている様子はなく本当に備蓄小麦の存在自体知らないらしい。

 どうにも店番程度では理解していないようだが、身分を隠している以上、上の者を出せというわけにもいかない。

 仕方がないので店を出る。

 考え事をしながら歩いているといつの間にか通りの端にある小さな商店の店舗まで行きついていた。



「ここは香油や化粧品を扱っている店か」



 店ではさまざまな香油や化粧水や化粧品の瓶が並んでいた。

「店の規模のわりにはそこそこの品が揃っているようだな」と品物を見聞しながら視線を奥にやると、そこには10代前半の黒髪で目が死んでいるように光を失っている少女がいた。



「どうしたのだ、その瞳は! 両親を無惨に目の前で殺されたあげく、奴隷商に鬼畜な貴族にでも売りつけられたのか? それとも何か他の世界を呪いたくなるような不幸でもその身に降りかかったというのか?」



 私の剣幕に少女の死んだような目が、さらに半眼になる。



「初対面なのに失礼な人ですね。一応心配してくれているようなので今回は許しますが、死んだ目と無表情が私の標準仕様なので気にしないでください」


「標準仕様か、その考えはなかったな」と自分の発言を反省しつつ、改めて少女を見る。

 小柄で瞳は死んでいるが、顔のほうは整っているし少しの笑顔でもあれば、10人中5人くらいは可愛いと言うくらいなのに勿体ない。



「お兄さん、ここは美容品の取扱が主ですが、何か買います?」



 少女は無愛想なことこの上ないが、そこはとくに気にするほどのことでもない。

 少女の言うように、いきなりあんな言葉をかけられて怪しむなという方が当然なのだ。

 むしろ、無愛想とは言え、とりあえずは接客しようとしてくれてるし商魂たくましく責任を持ってこの場にいて偉いと思えるほどだ。



「すまない、私は客ではないのだ。いろいろ考え事をしていたら、いつの間にかこの店の前まできてしまっていたんだ」


「お兄さんは、どこから来たんですか?」


「それは、城…………白い看板のある店の方からだ」


「白い看板って、ひょっとしてタキオン爺さんの本屋のことですか?」



 少女の言う、タキオン爺さんが誰かは知らないがここは話に乗って誤魔化しておこう。



「そ、そうだ。私はタキオンとやらの店からやってきた。いや、あの店はなかなか良いセンスの品を揃えていたな」


「お兄さんの目にかなう本もあったんですか?」


「ああ、残念ながら私の家の書庫にある本ばかりであったから、購入はしなかった。タキオンという者とは本の好みが似ているのかもしれないな」



 誤魔化しついでに、少し話を盛った私の言葉を咀嚼しながら少女は納得の表情を浮かべる。



「そうなんですね。たしか、タキオン爺さんの店って99%の商品がエロ本でしたよね。しかも結構激しいヤツ。お兄さんみたいな女の人に不自由してなさそうな人でもああいう本を読むんですね。しかも自宅の書庫にタキオン爺さんの店と同じくらいの種類を持っているって…………すごいですね」



 少女が感心したようにウンウンと頷いている。



「なっ!!!!」


「あそこなら、いろんなジャンルを取りそろえられてたはずだけど、タキオン爺さんの店でも用事が足りないとしたら、あとはどこがあるかな?」



 そんな事を言いながら、少女は私の心配をしてくれているようだ。

 えっ、この私がエロ本を求めていると思われた?

 20代男性の私が、10代半ばの少女に(エロ本の)質が良いとか語ってしまっていた?

 というか、そのタキオン爺さんとやらは、爺さんのくせにそんな店をやってるなど余程の好きものか!

 しかも、その本の内容を何故この少女は知っているんだ?

 疑問と葛藤が後から後から湧いてくる。



「まあ、好みは人それぞれですし、私は追求なんて野暮なことはしませんから安心してください」



 少女は無表情ながらも、若干のドヤ顔で私にそんな事を宣言してくる。

 いや、そこは是が非でも追求してもらい事実を訂正させてほしいところだ。



「いや、違っ」


「まあ、そんなことはどうでもいいんですけどね」



 ここまで私を追い込んでおいて、少女にとってはどうでもいいことだったらしい。

 結局、このまま有耶無耶にされ弁明の機会は与えられそうもない。



「タキオン爺さんの店は、ここからだとかなり遠いですよ。そんな遠くから考え事をしていたって、いったい何を考えていたんですか?」


「小麦の価格だ。なんで小麦がこんなに高いんだ?」


「物が少なく、流通量が少ないからじゃないですか?」


「……どこかで聞いた噂では国は備蓄小麦を放出してくれているらしいが、値段は下がっていないようだったぞ」


「なるほど」



 私の行った対応と現状を遠回しに教えると、少女が少し納得したように相槌を打ってきた。



「国が備蓄を放出したからこんなに高値が続いてたんですね」と何でもないことのように少女は言ってきた。

 意味がわからない。

 備蓄を放出すれば流通量が増えて価格は下がるのじゃないだろうか?



「流通量が増えれば価格は下がるはずだが?」


「確かに流通量が増えれば、需要と供給のバランスで多少価格は下がる可能性がありますね」


「では、何で価格は下がらなかったのだ?」


「簡単なことですよ。備蓄の放出をしても流通量が増えなかったんです」


「!?」



 驚きの事実だった。



「見たところ、お兄さんはいいとこの息子さんか何かでしょうからわからないかもですが、あくまで庶民の商人の考えを説明しますね」


「頼む」


「今、小麦がせっかく高く売れているなら、高く売りたいと思うのが商人です。そこへ国の備蓄小麦を渡されたら、はい分かりました!と売るわけはないじゃないですか」


「だが、多くを流通量させるために安く放出したと聞いたぞ」


「そんなもの商人側の儲けを大きくするだけですよ。安く購入した備蓄小麦を倉庫に入れて保管するだけしていって、価格高騰を維持できるように小出しにしていくに決まってるじゃないですか」



 ショックを受ける私に暗い瞳の少女は追撃をかける。



「備蓄小麦ってわかったら、私たちが古い小麦と感じて売れないんじゃないかとかなんとか言って、備蓄小麦って表記しないって決められたのも最悪ですよね」


「最悪とは?」


「だって、もし誰かが溜め込んでいた備蓄小麦を流通させた場合、気づかれることも罰せられることもないじゃないですか」



 それは盲点だった。

 こんな少女に教えられるなんて、私はまだまだ未熟だ。



「これは、さまざまな問題が絡んでいそうだな。何かすぐに解決する方法はないだろうか?」



 悩む私を不思議そうな顔で少女が覗き込んでくる。



「そんなの簡単ですよ。流通させるはずだった備蓄小麦を溜め込んでいる倉庫にお偉いさんが直接見に行けばいいんです」


「倉庫? どこの倉庫に行けばいいというのだ」


「国庫の倉庫です」


「!」


「備蓄小麦は国庫の倉庫に入れられていたのですよね。それを一部とはいえ流通量に影響を与えるくらい大量に放出しようとして、蓄えておける程の倉庫や施設を持っている店なんてほとんどありませんよ。もし、大店たちが結託して倉庫に蓄えたりしても農村からの仕入れが止まり、農民たちからの不興を買うだけで得はありません。それなら、本来備蓄小麦を放出して空くはずだった国庫の倉庫に放出したはずの備蓄小麦を置いておくほうがコストも安く、そういった書類を作成するだけで手間もほとんどかからないはずです。今回の小麦価格の高騰を操っているのが私ならそうします」



「もちろん、犯人は私ではないですし、黒幕は国の倉庫をある程度自由に使える人物なわけで、その人を越える権力を持ったお偉いさんに倉庫を見に行ってもらうのが1番難しいんですけどね」と少女は補足する。

 そこまで聞いて答えが出ない私ではない。

 犯人はあの人。

 そして、それを越える権力を持った私という者がいる。

 解決するだけのピースをここまで揃えられてまで動かないのは、余程の愚か者だけだろう。



「すまない、君の名前を聞いてもいいだろうか?」


「私の名前ですか? ただの実家の店番なんですが、まあ名前を教えるくらいは全然構わないですよ」



 少女の感情を覗かせない黒い瞳が、私を真っ直ぐ見つめてくる。



「私は、リリアーナ・レイシーと言います」


「リリアーナか。助かった、ありがとう」


「感謝してくれるのは有り難いんですが、言葉より品物を買っていただけると私の駄賃が増えるので嬉しいです」


「わかった。相談料として使いの者を出すので、ぜひ品物を購入させて貰おうじゃないか」


「おー、ほんとですか!」



 余程駄賃が増えるのが嬉しかったのか、少女は初めて花の咲くような笑顔を浮かべてくれた。



「…………」



 不覚にも見惚れてしまって言葉を失っている私に、標準装備だと言っていた無表情に戻った少女が声をかけてくる。



「お待ちしておりますね」


「あ、ああ」



 私は急いで城に戻ると倉庫の視察を抜き打ちで行う準備を整え、その結果をもとに大臣を呼び協議を開始することにした。

 さあ、これから楽しい楽しい心躍るような審問を始めようじゃないか。

 私の心は久々に晴れ渡り、やる気が漲っていた。

 こんな気分をもたらしてくれた少女には感謝しかないし、あんな考えを出来る者をただの店番にさせておくのは勿体ない。

 それに、…………出来るならあの笑顔をもう一度見たいと思ってしまった。

 あんな年の離れた少女に何を考えているんだかと思わなくもないが、そう思ってしまったんだからしょうがないだろう。



 ◆   ◆   ◆   ◆   ◆



「あのお客さん、結局何者だったんだろう?」



 世の中には男性なのにあんなに綺麗な人も存在するんだ。

 私なんかとはえらい違いだよなと思うが、別に他人を羨んでもしょうがないので気にしない。

 ただあんまり人の美醜に興味のない私が綺麗と思ったってのはなかなかだと思う。



「また、会えるのかな?」



 それは本当に使いの者を寄越してくれるのかの心配しただけだった発言のはずだったけど、本当にそれだけだったのかは、今はまだわからない。

 そんな心配する私のもとに大量の発注書と王城への定期的な卸の話が舞い込み、家族総出で慌てふためき準備に奔走し、少女の目がさらに死んだようなことになるのはまた別な話。




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