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「……………明衣さん、単刀直入に言います。私たちはとある方の依頼で貴方のボディーガードできました」
本当にドストレートに言ってきたな。
「私達、『黒翼』っていう組織に入ってましてその中でも『死物回収』を担当しているんです」
「……………しぶつ?」
私物か?いや、多分違うだろうな。どういう漢字を書くのだろう?
すると、どこから取り出したのかメモ帳に漢字が書かれる。
「『死物』とは所謂曰くつきの物、まあ呪物の一種だと考えてください。有名なのだと日本だとコトリバコや海外だとバズビーズチェアと言ったものですかね。ですが、呪物と死物の違いはあります。死物とは妖が材料になって作られた物の事を言い、多くの命を殺すと言った特徴があります。呪殺とはまた違った殺し方をするモノもありますが、そういったモノは現代にも存在しています。それらを回収し封印、破壊、保管をするのが我々『黒翼』という組織です。今回に関しては依頼があって、回収兼ボディーガードとなっています」
ここまでいいですかと南が訊いてくるが、情報量が多くないかと思ってしまう。
だって、そんな組織の者たちが何で私のボディーガードを?というか、依頼者って誰だ?
「混乱するのも無理はありません。けど、話は続けますね。明衣さん、先月に貴方のお母様、天井利 円佳様がお亡くなりになりましたね?」
そんな私の様子を見ながら、話を続ける。
「その際に貴方を含むご兄弟に遺産相続の話がされたかと思います。その後からですご兄妹は悪夢を見るようになったと」
「……………もしかして、死物が関係していると?」
でも説明の通りだと多くの死者が出ててもおかしくは無いか?
その考えていることが分かってか南も私達も最初は呪物によって呪われていると考えましたと言われた。
「けど先程の髪の毛からは妖気が感じられました。またご兄妹の悪夢の内容を聞くに変な面をつけたナニカに襲われたとのことです。呪物と言うより死物の方がそのような特徴を持つモノの案件がありましたので恐らくは死物なのだと上の方で判断がありました」
また死物の中でもじわじわと恐怖を与えて命を喰らうモノもいますのでそういった特性を持つモノもあって厄介ではあるとも話してくれた。
「ただし、今回に関しては上司の方からはボディーガードを重視するようにと命じられています」
「……………ちなみに君たち、いくつ?」
「今年で16歳です!」
年下にボディーガードされるのか、私は。ちょっと複雑な気分になってしまう。
そんな私の様子を見て、フォローを入れてくる。
「勿論、明衣さんのご迷惑を掛けないようにしますよ。お仕事やプライベートに関してもお守りを持ってもらってになりますし、ストレスや不快にならないようにしますので」
「……………君たち、学校は?」
「こういうのに理解のある学校だから大丈夫ですよ」
そう言われると余計に申し訳なくなるわ。
でも、自分ではどうにもならないのでお願いするしかない。
「……………よろしくお願いします」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。では、早速ですみませんが祓いますね」
へ?と間抜けな声を出した途端にぞわりと背後から寒気がした。
北斗がするりと私の横をすり抜けて、ガシッと何かを掴んだ。
見れば黒いナニカがジタバタと逃げようと蠢いている。
「悪霊か。ちょっと段階早くない?」
「うん。これは不味いかも」
そのままギュッと握りしめてるとそのまま砂のように消えていった。
え、悪霊とか言った?しかも、段階とか言ったよね?
「ん?そういえば、明衣さん。この手紙って」
郵便ポストに入っていた中から一つを取り出す。
達筆な字で私の名前と共に差出名が「鶫 昭牙」と書いてあった。
「ああ、お世話になっている弁護士の名前ね」
「今回の件ですか?」
ええと私が頷いて、天井利家に関して説明をした。
天井利家は古くから続く名家で不動産の数々を所有している。
その当主であった天井利円佳が亡くなった。当然のように財産に関しての遺書があった。
「遺書には当主と値する者にカエル物を持ってくれば、財産を相続するって書いてあったわね」
「どういうことです?普通、当主と値する者がカエル物を持ってくればって書くと思いますけど?」
「そうなの。それにカエル物の意味が分からない」
「……………ちなみに明衣さん。天井利家の情報は私達も少し持っているのですがご兄妹はまだ本家のお屋敷の方にいますか?」
「ええ。私は仕事があったし、それに財産なんて興味ないの」
「変わっていますね。誰でも大金が目の前にあれば釣られそうなのに」
北斗にそう言われたが、私は興味が引かれなかった。
だって、今が一番幸せなんだもの。
自分の好きなことも時間もある。お金は確かに生きていく中では必要なことだけど、自分で稼いで生きていくことも私にはできる。
「まあまあ、親友。貴方だってお金にはそんなに惹かれないでしょ?」
「まあ、稼いでいるし。大金で狂っちゃうのが怖いじゃん」
そういうところは小心者だよねと話す二人を見ながら、ふっとあることを思い出した。
「そういえば、今週の休日に本家に来いって言われているんだっけ」
「財産放棄の件でですか?」
「いや、違うみたいなの」
電話越しでもとにかく来るようにって念を押されてしまった。
そんな私の様子を見て、二人は顔を見合わせた後こう言ってきた。
「とりあえず、その時は私達も同行します」
もしかしたら、その本家に死物があるかもしれないし、それを使っている者もいるかもと言われた。