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第八話 秘められた愛情


「確かにこの蛙石の中には鶫家の不祥事や事案、そして、血縁関係がない証拠の書類などがありました」


これですと北斗が木箱を持ち出す。

……………いつの間に取り出したんだ?


「明衣さんと演技をしているときに親友にお願いしてました」


「……………元に戻すの大変だった」


「そ、それだけかよ」

猿彦が口を開く。


「まあ、これがあればあなた方には相続の権利がないことが判明しますし、最初から明衣さんが相続することが明白になるってことです」

一月の期限を決めたのもこれ自体が見つからなくても問題がないようにしたんでしょう。


「これはあくまでも明衣さん以外に向けた最後の復讐でもありますかね」


「…………………………私以外?」


「うん。明衣さん、何で円佳さんは人形を残したと思ってる?」


「え?」


「確かに。四人は鵺を表していて、遺したモノも嘘や偽りの意味があった」

しかし、人形はそれには当てはまらない。

砂守の言葉に南は頷く。


「人形はね。明衣さんの為に円佳さんが遺した」



贈り物だったんだよ。




北の間にて。



「この二人の人形には特殊な術がかけられているんです」


「……………オカルトかよ」


「まあ、そう言われても仕方がありません。これらは日常的な手入れをせずに綺麗で汚れやほこりなんてものはついてない。ましてや、このガラスケースが開けられないと言う話です」

壊すことも一般的には無理でしょうとも南が言うと私の方を見て、開けてみてくださいと言ってきた。


「ちょっと、なんでこの女に」


「これは所有者が設定されているからそれ以外だと開かない仕組みになっているんです」


「…………………………」


そっと人形の元に座り、ガラスケースに触った。

すると。

カチャンという音ともにガラスケースの扉が開いた。


「ひ、開いた」


「う、嘘。私が触っても動かなかったのに」


「明衣さん。この人形たちは貴方が鵺や悪意から守るために作られたモノなんです」


「……………守る?」


そう。まず、鎧を着た人形の帯刀しているのは嘗て、鵺退治で使用されたとしている獅子王という刀剣である。しかも、鋼から作られており、とある陰陽師の術式も組み込まれている。

そして、隣の人形が持っている弓は梓弓と呼ばれており、破邪退魔の効果がある。


「着物に刺繍されている花の花言葉は幸せ、愛情、母の愛といったものばかり」


そして、恐らくはとその少女人形を取り出して、隈なく見ていたら帯の中から小さく折りたたまれた紙を取り出す。


「うん、何処かの銀行名と暗証番号が書かれている。これは明衣さんが開けることが出来て初めて分かるモノだね」

そして、この銀行の中身は恐らくと言った時だ。




「姉が明衣の為に築いてきた宝物だろう」



「え……………?」




後ろを見るとそこには叔父である天井利壮馬(てんいりそうま)が立っていた。その横には辰見の姿もあった。

黒髪を後ろに流し、長身でがっしりとした体格。見るからにブランド物のスーツを纏っている。強面の顔をしているが優しい一面があることを私は知っている。


「お、叔父様。どうして、ここに?」

響子が媚びるように言うがそれを冷めた目で見る。

 

「お前たちに叔父と呼ばれる筋合いはないよ。あるのは明衣だけだ」


「黒翼に報告したときに連絡してもらうように頼んだんですよ」

南が何故、ここに壮馬がいるのかを説明してくれた。

確かに関係者であり、天井利家と鶫家の今回のことに関して知っておくべき相手だ。


「県外に出張していたものでね。遅くなった」


「お、叔父さん」


「……………明衣。姉さんは君のことをずっと守り続けていたんだ。傍にいられない分、君へ誕生日や記念日には欠かさずにプレゼントを贈ってきたり、学校行事の時はこっそり見にきていたりしたんだ」

だけど、病に侵されて余命が残り少ないことが分かった。


「このままでは明衣が危ないと思ったんだろう。天井利家が潰れようとも構わずに姉さんは遺言状を残し、準備をしていた」


「で、その中には黒翼への依頼も含んでいた」


「頭の切れて、護衛が出来るものを派遣してほしいと言ったんだが……………、まさか、君たちのような女子高生だとは思わなかったよ」


「まあ、そうですね」

壮馬の言葉に納得するように頷く北斗。


「まあ、こうなるのを見越したのかもしれない」



真実が明るみになることが狙いで黒翼にそのような条件を申し込んだ。


全ては自分の娘の為に。



「で、でも」


「それとお前たちの()()()()()()()()()()()


「…………………………は?」


「結婚時に姉さんが父と話をしていたようだ。お前たちの様子を見てから決めようと言うことにしたんだ。まあ、最初から悪意のある態度に呆れていたが」


「え?え?」


つまり、この二人には養子縁組をしていないただの他人と言うことだ。

絶望した顔をしながら崩れ落ちるのを冷めた目で見ながら壮馬はため息をつく。


「まあ、姉さんはお前たちを何とかしようとしたようだが元が歪んでいるから無駄だったようだな」


「人間ってそう簡単には変わらないってことですね」

南が納得したように頷く。


「これからのことに関しては私たちも混ぜてもらおう」


「で、でも!!」


「見苦しいぞ」


そう言うと後ろからやってきた屈強な黒服の男たちに拘束されて、二人は何処かへと連れていかれる。


「面倒だから、ホテルに閉じ込めることにする。まあ、その後は縁切りをするがな」

そうはっきり言って、私の頭を撫でてくれた。


「……………ねえ、親友」


「ん?」


それまでずっと黙っていた北斗が口を開く。


「もしかしてだけど、遺言状の意味って違っていたんじゃないかな」


「そうだね」


「どういうことだ?」

砂守が訊いてくる。

靖巌(きよが)が言った通りの意味ではないのか?

しかし、南は首を横に振った。



「ちょっと違和感は合ったんですよ。カエル物カエス者の意味とあの蛙石になんで隠したのか」




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