第七話 幕引きと正体
『え?遺言書の意味が分かった?』
『うん。カエル物のことだけど』
部屋の中から南と明衣の声が聞こえる。もう一人の北斗は先程、お腹がすいたとかで部屋から出ていった。
南曰く、カエルは生き物の蛙って意味だと思う。そして、この屋敷の中に蛙を謎ったものはたった一つある。
『あの大きい石。調べてもらったけど、あれって蛙石って言うんだって』
『蛙石?』
『蛙の形をした巨石のことだよ。縁起物で円佳さんが取り寄せたみたい』
『じゃ、じゃあ、その中に?』
『うん。遺言状の意味するものが入っていると思う』
明日にでも親友に掘り起こしてもらおうと言って、二人は寝る準備をし始めた。
深夜3時。昔で言うのであれば丑三つ時。
人間が眠っている中、庭にはとある人影が見える。
どんどん進んでいき、目的の場所に辿り着いた。
蛙石と言われる巨石。
手に持っていたツルハシを振り上げたその時だ。
「はーい。ストップ」
「!?」
突然、眩い光が広がる。
あまりの光に腕を前に出して影をつくる。
「いやー、まさかこうも上手く引っ掛かるとはね」
「!!?」
逆光の中で人間が立っている。
「明衣さんの演技、上手かったですね!親友は下手だからどうしようかと思ったけど」
「……………ひどくない?」
声が次々と聞こえてくる。それとともに足音も。
「あ、逃げようとしても無駄ですよ?砂守さんに言って包囲してもらっていますし。親友から逃げれると思わないでくださいね」
「しかし、こうも引っ掛かるとはな……………。にしては、よく分かったな」
部屋の中に盗聴器が仕掛けられているなんて。
砂守の言葉に犯人はビクッと肩を震わせる。
「まあ、そうですね。まさか、明衣さんのアパートにも仕掛けられているとは思いませんでしたよ。……………ただ、それのおかげで墓穴を掘ってくれましたけど」
「ど、どういうことだ?犯人はあいつなんだろ?」
猿彦が動揺を隠せずにいると隣にいた響子も犯人を見て、青褪めている。
「そ、それに何なの?あの狸のお面を被っているのは」
「は?はあ?何言ってんだよ。どう見ても蛇じゃねーか」
二人揃ってお互いが意味不明なことを言っている。
「…………………………どういうことだ?虎の面をしているだろ」
坂又がそう呟く。
そんな彼もおかしいことを言っている。
だって、私からは以前見た時とは違う般若の面をつけていた。
「まあ、違うのが見えるのもしょうがないですよ。あれが死物なんですから」
「!!」
「とりあえず、危ないの持っているし。親友、頼んだぜー」
「うん。私の出番だね」
北斗が前に出た。
いつも持っている長い棒であろうか紫の布袋を解いていく。
犯人は何やら嫌な予感がして、くるりと回れ右をして逃げようとするもバチッと静電気が走って、何かに阻まれているようで外には出れないようだ。
「念には念を入れて、結界を張っているから無駄。ああ、私の後ろにいる人たちを人質にしようとしてもそっちにも結界を張っているからできないよ」
「!」
はらりと布が落ち、出てきたのは薙刀であった。
朱色に染まった柄に研ぎ澄まされた刃が光る。
「あ、当たり引いたわ」
こうなったら強行突破しかない。最悪、少女を人質にとればここから脱出できるかもしれない。
犯人が腕を振り上げて、ツルハシを北斗へ振り落とそうと走り出す。
勢いよく振り落とされたのを軽々と避けて、隙が出来た脇腹に痛烈な一撃を喰らわす。
ぐっと息が詰まるがそのまま振り回す。
ガキンと金属がぶつかる音が響く。
いとも簡単に攻撃を躱す北斗は涼しい顔をしながら、溜息をつく。
「遅い」
そのまま、柄を遠心力で犯人の膝に強く叩きつける。
余りの痛みに声が出ない悲鳴を上げた犯人は自身の体重が支えきれずに横転する。
その隙を見て、ツルハシを持っていた手を蹴り上げて、武器を離させた。また、横転した犯人に飛び乗って拘束する。
「ほい、確保」
「さっすが、親友」
じたばたと拘束を解こうとしても全く動くことなく、薙刀の柄を首元に押し付けられて、息がしづらくなっていく。
「しかし、なんでこんなお面なんかを」
坂又がツルハシを回収し、部下に手渡す。
「それは死物の特性ですね。見る角度によってそれぞれ別なものに見える」
猿であったり、蛇であったり、虎であったり、狸であったり、能面であったりと人によって様々に見えるモノ。
「皆さんの言葉、そして、この天井利家でようやく分かりました」
【死物名:鵺の毛皮】




