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「し、しかし、そうなると犯人は」
「この真実を知っている人物ってことになるでしょうね。明衣さんが直系であり、唯一の後継者と知っていて命を狙ってきた」
「……………………ねえ、親友。もしかして、あの兄妹が明衣さんを敵視していたのって初めから自分たちが天井利家とは全く血の繋がりがないことを知っていたから?」
「そうだろうね。だから、あんなにも相続放棄をさせようと必死だったって訳。明衣さんは何も知らないままで、自分たちは大金が手に入るって思っていたんだろうね」
「しかし、そうなると犯人は兄妹の中に?」
砂守がそう言うが南は否定する。
「それはどうでしょうか?だって、兄妹が亡くなれば、犯人は家族の誰かと真っ先に疑われる。そして、天井利家のことを調べるでしょ?そうなれば、如何に隠していたところで血縁関係が無いことがバレてしまう。それはあの兄妹たちにとって隠したいことなんですから」
「た、確かに。では一体、誰だ?」
「まあ、考えるに鶫家も疑わしくなってきますね。円佳さんとの結婚話で関わっているのが弁護士の鶫昭牙なんですから」
「な、なんだと!?」
「……………でも、何で犯人は見立て殺人なんかをしたんだろう?」
ふと北斗が呟く。
その言葉に全員が彼女へ視線を送る。
「だって、あんな殺し方をすれば誰だって何かのメッセージだって気づくでしょ?そうすると、天井利家に何かあるって思っちゃうけど」
「確かに。そうだな」
「……………恐らくだけど、死物が影響しているのだと思います」
「し、しぶつ??なんだ、それ」
「砂守さんが後で説明してくれますよ。死物はその元となった妖怪を連想する殺し方を使用者が無意識に行うことがあり、今回はこのケースであると考えます。恐らくですが、犯人は天井利家に恨みを持っている。…………いや、鶫家も入っているかもしれないな。そんな負の感情を増幅させているのが死物でしょう」
早めにケリをつけないと大変なことになると南はそう言った。
「…………ちなみに死物は分かったの?」
「それがどーにも分からないんですよ。困ったことに」
ホワイトボートにまた書き込んでいく。
狸、虎、猿、蛇、双子人形。カエル物、カエス者。
そして、兄妹たちの名前と鶫家の二人の名前。
「円佳さんはあの四人の名前を変えていて、これからも死物を示しているのではと思うんですよ」
「……………そもそも、なんでこれらが死物に繋がるんだ?」
「情報によると天井利家の祖先が収集家で奇妙なモノを手に入れた。その後から疫病やら不運なことが起こったようです。しかし、ある日を境にぱったりと止んだとあったので恐らくは死物を封印されていた。まあ、当主に代々引き継がれた曰くつきのモノだからそれを愛人の子どもたちの名前に入れたのではないかと」
家に災いを招くモノとして。円佳本人はどう思っていたか分からないが、愛人の子どもたちに対してかなり冷たかったのが伺える。
補足として、子どもたちの名前に関してだが、大貴は真ん中にぬが入ると狸になり、猿彦は猿が入っているし、響子はまあこれは推測だけど響尾蛇、ガラガラヘビの別名から来ているのではないか。義子に関しては一休さんの話の中に出てくる人物、足利義満から字を取ったと思う。
「現に響子さんの煙管を見たんですけどガラガラヘビの柄が入っていたし、屏風も虎と裏には足利義満の絵が描かれていたので間違いはないかと思いますよ?」
「成程」
……………いつの間に見たんだろうか?
ここに移動する前にトイレに行くと言って離れた時か?
「まあ、消去法で考えるとこの双子人形が鍵になるんですけどケースが開けられないからなー」
それに遺言書の意味も分からない。
結局カエル物、カエス者が不明なままだ。
「……………ん?なんで、鶫セキガだけ片仮名なんだ?」
坂又が訊いてくる。
「ああ、自己紹介されたんですけどキヨガってどういう字を書くか聞いてなかったんで」
「確かこういう字だ」
ペンを持って砂守が片仮名の下に漢字を書いていく。
「初対面で見ても読み方が分からない名前だな」
「あー、確かに」
「でも、なんでこの名前にしたんだろう?」
「…………………………」
その字を見て南は固まった。
「親友?」
「……………………そっか。だから、見立て殺人にしたのか」
私たちが来ることが想定外だったから。
「へ?」
「ん?南、スマホ鳴っているぞ」
カエルの合唱が鳴り響く。
南が電話に出る。恐らく、黒翼からだろう。
「あ。京華さん?あの岩のこと、どうだった?え?あの岩ってそんな名前あるの?」
なにやら情報が舞い込んできたようだ。
その後もうんうんと頷いていく。
「え?人形が持っていた刀とか弓も?」
そうして、長い通話の後に彼女は無言であった。
「……………ねえ、明衣さん」
「は、はい」
「一つ聞きたいんだけど、襲われたときに見たのって」
どんなのだった?




