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「……………にしてはかなり執着しているようだったな。なんでだ?」
ぶつぶつと何か呟きだす。
「親友。とりあえず、見てないところを見て戻ろう」
北斗がそう言って促してくる。
そうして、ぐるりと一周してから部屋に戻った。
「死物は見つからないままかぁ」
「まあ、そう簡単には見つからないか」
屋敷の中に戻ると響子の声が響き渡る。
「ちょっと!!蔵の鍵は何処にあるのよ!!」
「それはお答えできません」
「はあ?使用人が生意気にっ!!」
「お答えできません」
どうやら、使用人の一人と何やら口論しているようだ。
変に介入して話をややこしくするわけにはいかないので物陰に隠れて様子を伺う。
答えられないの一点張りの使用人に痺れを切らしたのか響子が叫ぶ。
「あんたなんかクビにしてもらうから!!覚悟しときな!!!」
「どうぞ。執事長にでもおっしゃてください」
慌てることなくぴしゃりと言い返すのを見て、口ごもってしまった響子がお、覚えておきなさいとまるで三流の悪者が言うような捨て台詞を吐いて去っていく。
「……………ここに来て、そんなに時間がたってないですけど、ここの使用人たちってなんだか態度が違いますよね」
「え?」
「ほら、明衣さんが帰ってきたときは笑顔で迎えてくれたし。アルバムを見るときもお茶とか持ってきてくれたじゃないですか」
それにあまり気にしなかったけど屋敷を歩く時だって皆して明衣さんに一礼してましたよと南がそう言ってくる。
……………言われてみれば、確かにそうだ。
ましてや、響子が去った先にも使用人がいたが一礼せずに冷たい目で見ていた。
「さっき、蔵の鍵の在り処を聞いていたけど?」
「まあ、遺言状を探したいんじゃないかな。他にも何か金になるのを見つける為とか?」
響子さんも借金返済に苦しんでいるって話だしと南が話す。
……………あまり聞かなかったが、天井利家の情報をどの位知っているのだろうか?この二人は。
「というか、執事長って?」
「そういえば、姿を見てないな。確か名前は……………」
すると、後ろから声がする。
「辰見でございます」
「うあっ、びっくりした」
ビクンと三人揃って肩を震わす。振り返るとそこには燕尾服を着た男性が立っていた。
黒髪は短く、後ろに流しており眼鏡をかけている。
体格はすらりとしており、年齢よりも若く感じてしまう。
感情が読み取れない真顔のままで立っていた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。挨拶が遅れてしまい申し訳ございません」
「う、ううん。辰見さんも色々と忙しいでしょ?」
ぺこと頭を下げられるが慌てて頭を上げてもらうように促す。
頭を上げた彼が南と北斗を見やる。
「このお二人が護衛の方でしょうか?」
「はい、そうです」
にこと南が笑って答えるとすうと目を細める。
「……………随分とお若いですね」
「これでも腕は立つのでご安心ください」
何か含みのある言い方だ。
私にはよく分からないが南は何かを察してそう返答したのだろう。
そんな相方の北斗はじっと辰見を見ているだけで会話には入ってこなかった。
「……………そうですか。では、よろしくお願いします」
「はい。任せてください」
そう話を終わるとではとまた一礼して何処かへと歩いて行った。
「……………うーん。やっぱり、違和感があるな」
「え、どこが?」
先程の会話で何かおかしい部分があったのか?
南に問いてみるのだが、腕組みをして考え出してしまった。
「そういえば、明衣さんの部屋って他よりも綺麗だったな」
「え?綺麗?」
急に北斗がそう言ってくる。
「この屋敷全体を見て回ったんですけど、悪意とか悪い気が漂っているんですよね。でも、北の間はそういうのがないんですよ。なんでかなと思って」
一室だけが清らかなのが不思議なんですよねと話してくれた。
「…………えっと、お祓いをしていたり?」
「そういう痕跡は無かったので違うと思います。まあ、悪いモノではないので気にしなくてもいいですよ?」
…………………………そう言われると逆に気になるんだけど。もしかして、この子。天然か??
そんな話をしていると使用人の女性が、お茶菓子を用意したので一休みしてはいかがですがと声をかけてくれた。
それからはお茶菓子を頂きながら、明日はどうするかを話し合った。
まずは、兄妹が母が遺したモノを見てみたいと南が言ってきたのでそれも含めて明日も屋敷内の探索。他にも辰見や使用人たちに訊きたいことがあるようだ。
今日はひとまず、ここまでにしてゆっくり休もうと言うことになった。
その夜。
「親友」
「んー、手応え無し」
寝ている明衣の横に南が守るように座って、北斗は外に出て警戒していた。
どうやら、またナニカが襲ってきたようだ。昨夜みたいに生霊ではないのが少し気がかりではあるが、黒い澱みのように這い出てくるのを足で潰している。
「結界は張ってあるから中には入れないけど……………、なんで明衣さんばかりを狙ってくるんだろう?他にもいるのに」
北斗は不思議でならなかった。
ここに来た時もそうであるが、彼女に集中的に敵意をむき出しにするのが多い。しかし、逆に使用人たちは好意的である。正反対すぎて何が何やら全く分からない。
こういうのは南の得意分野だ。
「あー、多分。知っているからじゃないかな」
そう呟く南に首を傾げる。
「?どういう意味?」
「どうにもきな臭いんだよね。この家自体」
まあ、金が関わると人って豹変するし。人って怖いよねとも話す彼女の言葉が全く理解が出来ない。
「??」
「親友ってさ。親からの遺伝率って知ってる?」
遺伝ってあくまで設計図なんだけど、その中で自分のベースにはどのぐらい遺伝的な要因の影響があるかを示すのが遺伝率っていうんだって。性格や知能が約50パーセント、身長が約80パーセントなんだ。まあ、育った環境とかで変わってくるんだけど‥‥、え?何でそんな話になるのかって?まあまあ、もうちょっと話をさせてくれよ。ここには身体的な特徴も遺伝してくるわけなんだが、骨格や体、顔つきとかも遺伝が大きいんだって。そして、その中には髪質や髪色もあるんだよ。
さてさて、親友よ。この意味わかるかな?




