第四話 違和感のある屋敷
「にしては、随分と優男のようだね。情報とはえらい違いだなー」
「情報と?」
どういう意味だろうか。
南の言葉に引っ掛かったが、彼女はパタンとアルバムを閉じて、立ち上がる。
「さてと、色々とおかしなことが分かったので屋敷の中とか見て回りましょうか」
「え、なんで?」
「だって、ここのことを知っておいた方がいいかなと思って。ほら、親友も万が一迷ったら大変でしょ?」
「いや、そこまで方向音痴じゃないんだけど?」
まあまあと私と北斗の腕を引っ張って立つのを促す。
そのまま、屋敷の中を一周して、外も見ることとなった。
そんな外は外で花々や植木が鮮やかに咲いている。手入れとか定期的に入っているんだなぁ。
私はそんなことをぼんやりと考えつつも、南がなぜ急に見ようと言ってきたのか聞いてみた。
「……………もしかして、遺言状のこと?」
「おっ、明衣さん。鋭いね」
「カエル物ってやつを見つけるつもり?」
いや、それはおまけだと彼女は言う。
「ここに死物があると思うんだよ」
何処かに隠しているのではと考えて、見て回りたいと言ったのか。
「まあ、恐らくそうだね。全然、気配は感じられないけど」
北斗がキョロキョロと周囲を見回す。そんな彼女に同意するように頷く。
「まだ使ってないからだね。で、死者が出ている以上、遺言状のをちゃちゃと見つけ出した方がいいんじゃないかと思ってね」
まあ、どうなるかはあっちの人たち次第かなと言う。
そんな話をしつつ、歩いていたら。
「おー、おっきな岩」
「………………やけに殺風景だねー」
外を歩いて回っていると砂利が散りばめられて、その中心には北斗が言ったように大きな岩があった。
職人のデザインした庭であろうか?
「ほうほう。これはただの岩じゃないねー」
「分かるの?」
「まあまあ、こういうのは詳しい人に聞いてみてですね」
カシャと写真を撮り、メールを送っている南の姿を見ていると声をかけられた。
「明衣?」
「?」
後ろを振り返るとそこには一人の男性が立っていた。
長身で茶髪は襟足よりも短く、すらっとした体格。端正な顔をして、こちらを見ている。
……………誰だっけ?
覚えのない人物に首を傾げると相手の方も苦笑したように口を開く。
「あれ?覚えていないかな?僕だよ、鶫キヨガだよ」
「……………鶫?」
そっと北斗が前に出た。
「えっと、君たちが『黒翼』の?」
「あ、そうでーす」
「ボディーガードです」
そうかと改めて自己紹介をしてきた。
「僕は鶫キヨガ。明衣とは幼馴染だよ」
「……………にしては、ねちっこい」
ぼそっと北斗がそう呟くが、その言葉を拾う者は誰もいなかった。
気づかないままキヨガは続けて話しかけてくる。
「君がここに来るなんて大貴さんの件でかな?」
「まあ、それもありますが」
「ちょっと、キヨガ!?」
すると、もう一人が現れた。三女の義子だ。
ずかずかと歩いてくるとキヨガに抱き着いて、こちらをきっと睨みつけてくる。
「人の婚約者となに話してたのよ!」
「あ、婚約者なんですか?」
「そうよ!」
ふんっと胸を張ってこちらを見下してくる。
「あんた達みたいなブスじゃあ、婚約者なんて夢のまた夢の話ね!可哀そうにっ」
「こら、そんな言い方はよくないよ」
キヨガが窘めるように言うが義子はふんとその言葉を無視する。
「それよりも早く出かけましょう!こんな古臭いとこに居られないわ!!」
そう言って話を切り、ぐいぐいと引っ張って去っていった。
「……………………どう?親友?」
「んー、なんとも。明衣さんは彼を見て何か感じましたか?」
なんでこちらにも聞いてくるんだい?南ちゃんや。
先程まで全然思い出せないでいたが、数回だけ確か会ったことがあるぐらいだった幼馴染だ。
好きだったとかそういう甘酸っぱい青春ストーリーはない。
特にないかなと答えると南は腕組みをして、首を傾げる。




