第一話 不思議なJK二人組
「それに触らない方がいいですよ?だってそれ、呪いですから」
これはただの序章に過ぎない出来事である。
私はいつもと変わらない日々を過ごしていたはずだった。
平凡に一人暮らし。それが私の幸せな生活だ。
なのに、ここ最近変なことが起きる。
「……………」
郵便ポストに長く黒い髪の毛の束が詰め込まれている。
そう、嫌がらせのようなことが起こっているのだ。
昨日は目の前にどこからともなく植木鉢が落ちてきり、一昨日なんて虫の死骸が玄関前に落ちていたり等々。
私は人よりも感情表現というのが乏しいようだ。……まあ、自覚はある。
友人の一人にはマイペース過ぎない?とか他にはのんびり屋か?とか言われることもしばしばある。
こういう時はきゃあと悲鳴を上げるとか誰がこんなことをっと怒鳴りそうになるとかになるはずなのに普通に片づけ大変だなとしか思えないのだ。
とはいえ、郵便ポストの中身を確認しないといけないわけであるが髪の束が邪魔過ぎて取れない。これを取り除かないといけないのだが触りたくない。
生理的にも手袋を用意すべきかとそれを放置して部屋から取って来ようとする私に声が掛けられる。
「そこのお姉さんっ!何かお困りのようですねぇ」
そこに立っていたのは女子高生二人組。
一人は茶髪でいかにも現代でいるようなオシャレな子。ぱっちりとした目にメイクがされグレーのニットとブラウス、紺色のスカートをはいている。
もう一人の子は黒髪のロングヘア、茶髪の子よりも地味な印象だ。
こちらの子はメイクをしてないようだが、色白で真っ黒のセーラ服を着ている。
手には何か長い棒であろうか紫の布袋に入っているのを持っている。
どう見ても普通の女の子には見えるが、ここのアパートにこんな子たち住んでいただろうか?
「…………………………どうしよう、親友。お姉さんの反応が予想外過ぎるんだけど」
ぼーと二人を観察していた私をよそに二人は顔を見合わせて話し始めた。
「のんびり屋かマイペースなのかもよ?親友」
「えぇ?普通ポストの中に髪の毛が沢山詰まっていたら悲鳴の一つ上げるモノでしょ?」
「そう?私はああ、片づけるの面倒くさいなと思うけど」
「ええー」
胡乱げな声を上げる茶髪の子、もう一人の黒髪の子が私に近付いてきたかと思ったらポストの中に詰まっている髪の毛の束を触った。
すると、束がまるで生きているかのように蠢き始めたと思ったらシュウシュウと音を立てて消えていってしまった。
「……………消えた」
「初歩的な呪いの一種です。こういうのを何回も繰り返して相手を精神的に追い詰めるんですよ」
茶髪の子が説明をしてくれる。
呪い。よくホラー小説とか映画とかゲームとかで出てくる単語だ。
まさか、本当にあるとは知らなかった。
「お姉さん、ここ最近で変なことありませんでしたか?例えば、物が落ちてきたり生き物の死骸があったり」
「……………ああ、あったわ」
もしかして、あれらも呪いの一種というのか。変に現実的な呪いだな。
「お姉さんは何者かに呪われているようですね」
そうはっきりと言う彼女を見て、ふと思ったことを口に出す。
「……………ところで貴方たちは誰ですか?」
「…………………………その台詞をついさっきに欲しいと思ったんだよ?お姉さん」
飽きられた表情をされた。
とりあえず、ポストの中に入っていた物を取り出して二人を部屋の中に招き入れた。
あまりに普通に通すものだから不用心すぎると年下の子たちに説教された。遺憾である。
「はい、ブラックコーヒーとカフェオレ」
「わー、ありがとう。お姉さん」
「ありがとうございます」
テーブルにカップを置いた。
二人の前に座り、改めて自己紹介をされた。
「初めまして、私は南と言います!この子は北斗と言います!」
茶髪の子がそう名乗ってくれる。
名乗ってくれた子が南で、黒髪の子が北斗か。
そんな私の様子を見ていた北斗がペコと頭を下げる。
「初めまして」
「ああ、ご丁寧にどうも。私は天井利 明衣と言います」
私もぺこと頭を下げる。そして、家の中にあったお菓子をテーブルに置いた。
「え、変に思わないの?それ、名前とか苗字とか?」
「別に思わないわ」
そうはっきりと言うと南の方ががくっと肩を下げる。
もしかして、ツッコミ待ちだったのかな?ごめんね、空気が読めなくて……………。
と内心で謝っていると北斗の方が口を開く。