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薔薇姫の学園  作者: 松野三鶴
序章
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ナオ雪事変


 話題に上がったのは通称・「ナオ雪事変」である。

 雪風は抄美女学園の入学式が終わってすぐに、中庭で眠っていた二人を見つけて走って行った。スウスウと寝息をたてるカオルと、カオルに肩を貸して読書するナオミという孤高の絵の前に立つと、雪風は叫んだ。「ナオミ先輩!」雪風の声を聞いてナオミは本から顔を上げ、雪風の顔をパチクリと数度瞬きして見つめた。それから困ったようにふっと笑って「しょうがない子ねえ」と言った。それ以降雪風は、カオルとナオミの可愛い後輩となったのだった。今までカオルとナオミがお互い以外の生徒たちを認知したことはなかったため、これは大きな事件として取り上げられた。特にカオルとナオミを一年間密かに推し続けていた二年生以上の生徒たちは、雪風というそのまま「新たな風」に熱狂し、ナオミをめぐる三角関係の創作小説を通して滾る想いを昇華させた。ちなみにこの小説は本人たちにも届いており、カオルとナオミから大爆笑を引き出し、雪風はプルプルと恥ずかしさに身を震わせることとなった。(実はこれ以外にもカオルとナオミへの想いが高じて作られた所謂ファンアートはいくつもあり、その全てがまずは彼女たちに献上されるため、全てを二人は把握している)


「『ナオミ先輩! 貴方を愛しているから、ここまで来たんです!』なんて。すごくロマンチックよね」

「脚色しないで! そんなこと言ってないよ!」

「生徒たちの心にはそう聞こえたのよ。もうそういうことで学園では通ってるわ。ナオ雪事変の名言としてね」

「最悪だ……」

「でも、ナオミ先輩を追いかけて入学してきたんでしょう」

「それは……そうなんだけど」


 雪風はもごもごと言い淀む。

 

「それに、ほら、やっぱり娯楽は必要じゃない?」

「人を娯楽扱いしないでー!」

「だって、しょうがないじゃない。私たちはあんまりいろんなものを知ることは望まれないんだし」



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