餌食
紫色のリボンでポニーテールを作った二人の少女がカオルに飛びついてくる。その顔は瓜二つである。「パープル・ドッグス」と呼ばれる双子、紫月わかなと紫月かのん。わかなはカオルの首に、かのんは腰に巻きついてきゃあきゃあと騒いでいる。
「お前らなぁ。あたしを誰だと思ってんだ!」
「僕たちと〜」
「遊んでくれるおねーさん!」
「お前らがひっついてきてるだけだろ!」
雪風はそーっと踵を返して一人で第二寮に向かおうとする。
「あ、ユッキー!」
「ユッキーじゃーん!」
ぎくり、と肩を震わせた時には遅く、元気な二人の「犬」に襲いかかられた後だった。
「お、お久しぶり……」
「さっきも会ったじゃーん!」
「同じクラスのクラスメートじゃーん!」
なんで敬語ー? 声を合わせる双子が雪風を前と後ろから抱きしめる。
「うっ、そうだね……じゃあ私はそろそろ第二寮へ帰るんで……」
「あっ、ユッキーも刻限過ぎてんじゃんー!」
「ダメだよー!」
「あっ……はい……気をつけます……」
「もうーたっぷりお仕置きされたいのかな?」
「身体の隅々まで検査されちゃいたいのかな?」
そういうことならいくらでも? と微笑んだ双子に雪風がひっ、と声を上げる。
「僕たちそういうのはとっても得意」
「だよ? 試してく?」
「け、結構です……身体は清いままでいたいので……それから他の寮へは入れないので……」
「うふふふふ……でも、次また刻限を破ったら……」
「ご招待しちゃうからねー」
ぎゅっと強く抱きしめられて雪風の身体が軋む。普段は玄関でずっと立っていることもないので油断していた……もう二度と第一寮には近づくまい、と雪風は強く誓った。




