第四話 【エピローグ ユメハユメ】
ソードレクスを倒し、めでたしめでたし、と夢はハッピーエンドを迎えて終わった。
そのあとは暗い世界に太陽の光が差し込むように光輝き、気が付けば目が覚めていた。
目覚めて直ぐは混乱したが、“アレ”は夢だったと不思議な認識ができていた。
勿論、実際にあり得るはずはない。だから夢だと理解もして感覚としても分かっているのだが、違和感だけは拭えない。
翌日に当たる今日、教室で静かに夢のことを思い返す。
それにしても、
「ーーー控えめに言って最高だったな」
椅子に座りふんぞり返りながら思わず呟く。
夢の始めこそ幽霊なんて出て来て大変だったが、後半は最高だったのだ。
剣(木刀)をもって、自分より遥かに大きな怪獣と戦う。
しかも、最終的に倒したのだ。
夢とするならば最高のできだろう。
あの高揚感は久しく感じていなかった胸のトキメキがあった。
「何が最高であったのだ?」
目を瞑っていたため、その声がかかるまで自分の前に人が来ていることに気が付かなかった。
空が目を開ければそこには同級生男子の高山 挑がいた。
「おう、高山、おはようさん」
「うむ、おはよう。それで機嫌が良さそうだが、何かあったのか」
高山は空の前の席に着き、鞄を机の横に掛けながら聞いてくる。
「特別何がって訳じゃないよ。夢見が良かったって話」
「ふむ、そうか。・・・・それより有栖、今日がなんの日か、分かっているな?」
「・・・・ああ」
突然声のトーンが変わる。
それまで穏やかに話していた声色が真剣さを帯びる。
それに合わせ、空の空気もまた変わった。
「今日は月末の金曜日・・・・そして、今月は神作揃いと来た」
「・・・・わかっているさ。俺だってこの日をずっと楽しみにしてたんだ」
あえてここで何があるのかを口にすることはない。
本来学生には禁忌な存在の話だ。迂闊に“それ”を口にして教師に目をつけられる可能性は無くしたい。
高山は「ふっ」とニヒルに口を作り、「週始めに戦果を語り合おう」と言って1限目の授業の準備を始めた。
いまさら何も話すことはないと言わんがばかり。
それに対して空も「わかった」と空気を出しながら返した。
不可思議な世界観を醸し出したが、別段特別なことではない。
今日がゲームの発売日であり、土日にプレイして月曜日に感想を言い合おうというだけの話だ。
因みに、高山は自称◯◯ゲーマイスターと名乗っている。自分で言うあたり、中2病が抜けきっていない感がでかい。
空も高山と話し終わればあとは授業が始まるまで特にやることもなかった。
他のクラスメイトたちはそれぞれワイワイと話し合っているなかで。
高校2年生、有栖 空。
所謂ボッチではないが、友達は少なかった。