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教室に着くと、いつもよりも皆早く来ているみたいだった。愛結花が兄によって少し遅くなったというのを考えてもいつもよりも早く来ている者が多い。やはり、皆も遠足が楽しみなのだろう。
「ごきげんよう、愛結花様。」
クラス替えがあって、菫と香澄とはクラスが離れてしまった。とはいっても隣の教室なので、休み時間の時は愛結花のクラスまで来てくれる。そして、クラス替えがあったことで新たに仲良くなった子もいるのだが、その子達は学校から家が遠いからか、いつも時間ギリギリに来ている。今日もそうなのかもしれない。
「ごきげんよう、葵さん。菫さんと香澄さんはどうしたのでしょうか。」
「それがまだ登校していないみたいなんです。教室に来ていないだけかとも思って、隣のクラスまで言ったのですが、鞄もまだありませんでした。」
「もしかしたら、楽しみで寝付けなくて寝坊したのかも知れませんわね。」
「あぁ。私は早く起きたという方が多いですが、寝付けないという事もありますもんね。」
もしくは、愛結花みたいに、家のものに色々と心配で注意されて遅れているのかも知れない。まあ、兄ほど注意はされていないかも知れないが。なんせ兄は道から外れて崖から落ちるだの、毒を持った虫が現れてしまうだのと起こり得なさそうなことまで注意してきたのだ。そもそも、今年は学校の山を登るのだから整備はされているし、そのような危険もないと両親から話されているのになんとも心配性な兄である。
愛結花の少し後に小夜子も登校してきた。いつもならもう少し早いはずだから、珍しいことである。自分のおともだちと少し話しをしたら、愛結花と話すことにしたようだ。
「ごきげんよう、愛結花さん。」
「ごきげんよう、小夜子さん。今日は少し遅かったですわね。」
「それが、兄さま達に山登りは危険だから気を付けるようにと色々注意されて、いつもより早く起きたのに、出発が遅れてしまったんです。」
どうやら、小夜子も愛結花と同じ目にあってしまったようだ。同じく過保護な兄妹を持つ身として同情してしまう。
「まぁ、小夜子さんもですの?私もですのよ。お兄様が色々と口うるさくって。」
「心配してくれるのはありがたいのですが、ちょっと心配しすぎですよね。」
「本当ですわね。」
二人して苦笑気味に話してしまった。過保護な兄妹を持つのは本当に大変である。




