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そして、ついに遠足の日。楽しみで愛結花はいつもより早く目が覚めた。
身支度を整えてダイニングに行くといたのは兄のみで姉はまだのようだった。
「おはようございます、お兄様。お姉様はまだですの?」
「おはよう、愛結花。愛依菜はまだ準備中じゃないかな。愛結花はいつもよりも早起きだね。」
「えぇ。だって、今日がとっても楽しみですもの。初めての遠足ですわよ!」
「去年までは学校でお茶会だったしね。とても楽しみにする気持ちも分かるけど、今からはしゃぎすぎてると、体力が持たないよ?」
「分かってますわよ。でも、楽しみなんですもの。」
兄と話しているうちに姉も身支度を整えてダイニングにやってきた。
「おはよぅ。お兄様、愛結花。愛結花は今日、早いわね。」
「おはよう、愛依菜。」
「おはようございます、お姉様。ふふ、私、今日がすっごく楽しみでしかたありませんのよ。」
「そう。でも、たしかに去年の私もそうだったかも。」
話しているうちに全員の朝ごはんがテーブルに並んだことで会話は一回やめになった。
「それじゃあ、愛結花。山ではしゃぎすぎて怪我とかしないようにね。なにかあっても僕は助けに行けないし、本当に気をつけるんだよ。」
「もう、分かってますわよ。お兄様、何度も言われなくとも私だって気を付けますもの。」
「お兄様。そろそろ降りないと遅刻になっちゃいますよ。そろそろ行かれては?」
「……そうだね、愛依菜。それじゃあね、ふたりとも。行ってきます。」
行きの車では兄と姉に遠足の思い出と沢山の注意事項を話された。
心配されて嫌な訳では無いが少し心配し過ぎではと思った。愛結花だって前のときの経験からだが、色々と気をつけねばならないことは分かっているのだ。
「愛結花さん、お兄様も愛結花さんを心配しておっしゃっています。ですが、あれは言い過ぎですわね。ですから、少しくらいは聞き流しても良いのでは?」
「そうですわね。次があったら嫌ですが同じようなことがあれば聞き流すようにしますわ。ありがとうございます、お姉様。」
どういたしまして。と言う姉が女神のように見えた。
だが、愛依菜がこんな事を言うのは去年、愛依菜も愛結花と同じ思いをしたからである。
同じ車内にいて愛結花は凄く気が重たかったのを覚えている。心配そうに愛依菜に色々注意事項を言ってくる智也にそれを聞き流す愛依菜。珍しく愛結花が早く2人から離れたいと思った時でもあった。




