18 親友 side凛
凛の周りに友人はいない。いるのは家族だけだった。初等部に入る前、「お友達を作ろうね。」と母に言われ家に集まったものと仲良くしようとしたのだが最初は仲良くしていてもだんだん皆、離れて行ってしまうのだ。皆が一様に凛の事を意地悪だと言いながら。最終的に凛のもとにいたのは凛をきちんと理解し、凛のもとにいる事を選んだ佐伯寧音という四宮家の分家の者だった。
そして、そのまま桜宮学院初等部の入学式の日になった。入学式は正直言ってつまらなかった。どうでも良い事を長々としゃべる人ばかりで周りを見ることすらも出来なかったのだから。凛は四宮家の令嬢としてきちんと教育されていた。
入学式が終わり、自身のクラスに戻る。同じクラスに寧音がいてひとまずは安心したが、新たに友人を得れるか凛は不安だった。仲良くなれてもすぐ、自分と離れて行ってしまうのではないのかとも思っていた。そして、クラスに行きに出会ったのはキラキラと輝いて見える愛結花であった。
凛は四宮家の令嬢としてパーティーに出たことがある。そして、この桜宮学院に通う児童のほとんどがそういったパーティーに出たことがある。重要な人物は覚えるように言われちゃんと覚えている凛は愛結花がそこまで重要な人物ではないのかと一瞬思ったがフラワーホールにあったピンクダイヤでできた桜のピンバッチを見て思い直した。そして、一切社交の場に出たことのない天宮家の令嬢が同級生にいると両親に教えられたことを思い出し、愛結花が天宮家の令嬢だと把握したのだった。
「寧音、天宮様に挨拶に行きたいのです。待ちきれませんの。」
「さすがに、それはいけないかと。彼女の方が凛様よりも下ですから。」
「そのくらいはわたくしでも知ってますの、寧音。」
「それは、すみません。」
全然、謝っているようには見えないが特に怒っていたわけでもないので放っておいた。周りは凛が寧音を怒鳴っているように見えていたのだが怒鳴られた張本人である寧音がまったく気にしていない事で少し怯えてしまった。そのやり取りを愛結花が気にしていないことから凛は愛結花のもとに行くことを決めた。この調子だったらずっと話すことができないのだから。
「初めまして、天宮様。四宮凛と申しますの。」
「初めまして、四宮様。天宮愛結花と申しますわ。本来は私からいかなければならない所、申し訳ございません。
私の事は是非、愛結花とお呼びください。」
四宮家は二候。そして、天宮家は三候。天宮家のほうが格下となる。だから本来ならば愛結花の方から挨拶をした方が良いのである。だからこそ、凛は待っていた。待っていたのだが、割と気が短い凛はしびれをきらして自分から行ってしまった。
「いいえ、お気になさらず。同じ桜会のメンバーなんですもの。仲良くなりたいと思いわたくしが勝手にやったことですの。
愛結花さん、わたくしの事も是非、凛と呼んで欲しいんですの。」
「分かりましたわ。凛さん、これから宜しくお願い致しますね。こちらこそ凛さんとは仲良くなりたいですわ。」
そして、凛と愛結花は仲良くなっていくのだった。凛が寧音以外の友人を得た瞬間であった。




