11 お気に入り
CSFがあった次の月曜日、愛結花はサロンで羅奈に話しかけれた。
「天宮さん、少々よろしいですか?」
「え、えぇ。勿論ですわ。」
急な事に内心首をかしげたが、羅奈が颯の婚約者であったことを思い出した。公表はされていないが父から聞いていたのだ。愛結花に釘を刺しておきたいのだろうが、その心配は杞憂なものである。愛結花は颯とはこの前が初対面であるし、愛結花と颯が話すことは兄の事しかないのだから。
桜会のサロンにいた所だったから、端の方の席に二人して移動した。目立ちにくい場所はやっぱり覚えておいて正解だと愛結花は内心うなずく。
席を移動した途端、羅奈は両頬に手を添えてデレっとした表情をした。
「あぁ、やっぱりです。天宮さんとっても可愛いですね。」
羅奈の変わりように愛結花は少しどころではなくとても引いた。そして驚きで固まった。
「颯の言う通りですね。あの天宮先輩の妹だとは思えません。
ですが、先輩が大事に囲っているみたいですし、いえ先輩だけでなく天宮家全体が天宮さんを大事に大切に囲っているのだからまさに秘宝ね!」
確かに愛結花はまだ、パーティーに出たことはないが、それは愛結花が宮族にしては力不足だからだと本人は思っている。
そもそも、愛結花が秘宝なわけがないのだ。両親には宝のように思われているのかもしれないが、それは兄や姉もおなじであり、愛結花のみを特別可愛がっているわけではないはずである。それに、愛結花からした可愛いは小夜子なのだ。小柄で少し引っ込み思案で大人しいが、言うときは言うし言動がいちいち可愛らしいのだ。
まぁ、実際のところは大体が羅奈の言う通りではあるのだが。
颯との仲を変に勘違いされなくて良かったと思いながらももう、関わりたくないと愛結花は強く思った。羅奈は真宮の姉である。積極的に関わりたくない存在だ。それに愛結花が意図せずとも何らかの陰謀に巻き込まれる可能性はある。そんな事は絶対にごめんだと思う愛結花であった。




