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ホモ牛乳 (家庭科)

 むかしむかし、森永乳業が白い箱バン車に赤字で『森永ホモ牛乳』と堂々と描き、街中を走らせていたのは古き良き思い出。

 本日の授業では、この「ホモ牛乳」について学ぶとしよう。


 かつては一世を風靡した『ホモ牛乳』だが、現在はその名を見かけることはほとんどない。

 それには深い理由があるのだ。


 実はホモ牛乳の『ホモ』とは、我ら至高の存在を示す『ホモセクシャル』ではなく『ホモゲナイズド』の略である。

『ホモゲナイズド HOMOGENIZED』とは『均質化する』という意味である。


 実は牛乳というのは非常に扱いが難しく、放っておくとすぐに脂肪分が分離しまう。

 なので、この脂肪分を細かく砕いてしまうことにより、牛乳の成分を安定させる技術を確立させた。

 この技術を、牛乳におけるホモゲナイズドという。


 ホモゲナイズドされた牛乳は脂肪分が細かく砕かれているので風味が一定に保たれ、さらに副次効果としてタンパク質の消化吸収が良いという利点も生まれた。

 もっとも、消化吸収が良くなりすぎて、特に中年男性などがお腹を壊してしまう原因にもなっているのであるが。

 一方で脂肪分が細かく砕かれたことにより雑菌に触れる面積が増えてしまったので、保存には向かなくなってしまった。


 さて、話を元に戻そう。

 なぜ森永が『ホモ牛乳』という表示をやめたのか。

 これは森永が『多様性ダイバーシティ』を重要視するようになったからなのである。


 ホモゲナイズドされた牛乳は前述のとおり非常に安定している。

 ところが、この安定さが『牛乳の多様性』に対する足枷あしかせとなってしまった。


 牛乳は品質が安定しないということ。

 それは牛乳が様々なものに変化し、新たな姿に生まれ変わるいうことでもある。

 生乳はバター、生クリーム、チーズ、ホエーなど、様々なかたちに進化する。

 しかしホモ牛乳はその安定性と引き換えに、これらへの進化の道を閉ざされてしまっていた。


 この事実に気付いた森永は「ホモ牛乳」を前面に押し出すことをやめ、あくまでも牛乳の一つの姿としたのである。

 ちなみにホモ牛乳に対して、ホモゲナイズドを施していない牛乳を「ノンホモ牛乳」と呼称するが、これは決してホモとノンホモの対立を煽るものではない。 

 毎日飲むなら品質も価格も安定しているホモ牛乳、乳本来の風味や自家製バターなどを楽しむならばノンホモ牛乳がよかろう。

 牛乳に貴賤はないのだ。


 ちなみにホモ牛乳という呼称は現在使われることはなくなったが、森永牛乳プリンに描かれた太陽を模したキャラクターに堂々と引き継がれている。

 このキャラクターの名前は「ホモちゃん」(公式)である。

 うむ、威風堂々である。

 

 今日はここまで。

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