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ホモネアデスのふんどし (法学)

 本日は、古代ギリシャの哲学者であるホモネアデスが唱えた緊急避難の寓話について学ぶとしよう。


 それは漢祭り直前に起きた。

 本来漢祭りは全裸で参加するのが伝統であったが、ある戦争の結果、戦勝国の価値観によって漢祭りにはふんどし着用が必須となってしまっている。

 なので漢祭りに参加する漢どもは、参加人数分のふんどしをふんどし業者に発注するのが新たな伝統となっていたのである。


 ところがその年の漢祭りでは、あろうことかふんどしの数が漢どもの人数よりも一本足りなかったのである。

 これでは漢どもの誰か一人が漢祭りに参加できないということになってしまう。


 するとある漢が立ちあがった。


「我はふんどしを着用せぬとしよう」


 それは他の漢どもにとっては予期せぬ主張であった。

 ふんどしを着用せねば漢祭りに参加できぬ。

 漢祭りに参加できずに、何が漢よ。


 しかし立ちあがった漢は言葉を続けた。

「さあ、救いを求める人々が至高である我らを待っている。 漢どもよ、祭りを始めるのだ!」


 こうして漢祭りは無事開催された。


 という訳にはいかなかった。

 なんと立ちあがった漢は、ふんどしを着用せずに、つまり産まれたままの姿で漢祭りに参加してしまったのである。


 全裸の漢を迎えた祭りは大いに盛り上がった。

 そして一夜の熱狂が過ぎ去った。


 その後、漢は「公然わいせつ罪」の疑いで逮捕されてしまったのである。

 

 しかし、彼の起訴を受けた裁判官達もまた「漢」であったのだ。

 彼らは全裸で参加したのはやむを得ない事情によりふんどしがなかったからだという漢たちの主張を全面的に受け入れ、「緊急避難」として漢に「無罪」の判決を下したのである。


 この寓話を「ホモネアデスのふんどし」という。


 なお、類似の緊急避難として次の寓話も用意したので、暇なときに学ぶとよかろう。


 あるとき、一隻の船が難破してしまい、船員たちは全員海に投げ出されてしまった。

 多くの船員が波に飲まれていく中、船員の一人は命からがらに船の残骸である一枚の船板にしがみつくことができた。

 すると一人の船員がその船板にしがみつこうとした。

 しかし、先にしがみついた船員は、後から来た船員が板にしがみついてしまうと、二人とも溺れてしまうと考えた。

 なので先に板にしがみついた船員は、後から板にしがみつこうとした船員を突き飛ばし、水死させてしまったのである。

 

 その後救助された船員は自らの行いを懺悔し、彼は殺人の罪で裁判にかけられることになった。

 が、彼は罪に問われなかったのである。


 古代ギリシャの哲学者カルネアデスによって例示されたこの寓話は「カルネアデスの船板」の名で「緊急避難」の例としてしばしば引用される。


 今日はここまで。

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