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マーガレットが咲かない場所  作者: 小林 るこん
1/1

欲望と、自由と、忠実さ

ーひろたかー

 今、僕の上に乗っている君から溢れている液体は何種類なのだろうか。それは綺麗な君から出ているから、きっと綺麗なものなのだろう。君は完璧に仕上げてきた顔面がぐちゃぐちゃになるのを気にせずにすべての穴という穴から液をまき散らす。吐瀉物と一緒に君が吐いているその言葉を僕が理解するのは不可能な気がしてた。

「ねえ、ひろたか。」その続きはなんだったんだろう。


 今朝のニュースでこの1週間は、危険な暑さに見舞われると伝えていた。外仕事が中心の僕にとって刑罰としか思えないが、ここ最近のストレスを自然にぶつけることができるため、あまり苦でもない。それにしても、飲み会が続こうが、二日酔いがひどかろうが、仕事に遅刻しないのが社会人にとって当たり前なのだろうけど、毎日女を介抱して後始末している点に関しては評価してほしいと思ってしまう。まだ後片付けをして帰らないのは許せるのだが、朝には女はいなくなっていて、求めていないころにひょっこり乗り込んでくることが気に食わないのだ。こんな話、誰にこぼしたところで意味はないのだが。昨日抱いた女も例外ではなく散々僕を連れまわした挙句、抱いてる途中で撃沈し、不発で終わってしまった。その時ばかりはもう誰かと飲みに行くのをやめようかと考えたものだ。だが、僕も彼女らと同じで誰でも良いから一時的に傍にいてくれる人を求めてしまうし、本当に傍にいてほしい人に対してはただ待つことしかできないのだ。僕の場合、気まぐれな彼女のことだから、1か月放置されることもあれば、毎日ラブコールしてくることもある。それに合わせて僕はすべての欲望をコントロールすることができるようになってしまった。完全なるマリオネットである。そんなかんじで、僕は彼女に構ってもらえないときは、その辺に転がっている遊び道具で自我を保つよう努力している。女々しいといわれてもしょうがない。

平日は彼女が夜までアルバイトが入っているから、急いで仕事を終わらせる必要はない。彼女と会えるのは月に数回。日曜日だけになるか、彼女の気まぐれで平日の夜にほんの数時間会えるか。彼女の生活スタイルに時間を合わせていたら、友達も減ったし、趣味は消えた。それを後悔しないくらい彼女には価値がある。今までの友達よりも、趣味よりも僕の内面を育ててくれるし、人生を豊かに、そして香ばしいものにしてくれる。こんなことを本人にいうと鼻で笑われて終わるのだが、僕は一向に気にしない。まあ、僕がどれだけ彼女を思っているかの弁解はこれぐらいにして。

 「もうバイトしたくないよぉ~」

最近の彼女からの電話はこのセリフから始まる。多分、客か仕事の人との人間関係がうまくいっていないんだろう。もう半年は聞いてるが、彼女が辞めることはないのだろう。もしも、辞めてもらえれば会う頻度も増えて、とか考えても意味がないのだが。

「やめちゃおうかな~ばっくれたい~ねえどう思う?」

「そういうけど、もう駅ついてるんでしょ?」

「あーやだやだ!帰りたい!」

「今日頑張れば、明日僕と会えるよ」

「だって、室内なのに外と同じぐらい暑いし、客層悪いし、店長暴力ふるし」

「それは問題があるね、僕のまりえなのに」

「あーでも行くしかないよねー頑張ってくるー」

「うん、いってらっしゃい、終わったら電話ちょうだい」

ツーツーツー。

よくわかったと思うが、大体の電話の会話は成立することがない。

きっと聞いてくれてはいるのだが、今は聞いてほしいことがありすぎて無視されているだけと信じたい。無視されるだけならまだいいのだが、これに罵倒が加わっているときは、相当機嫌が悪い時で、この時うけたダメージは一か月僕の心臓と脳味噌をいじめてくる。


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