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短編集 冬花火

私たちの溜め息

作者: 春風 月葉

 溜め息を吐くと幸せが逃げると誰かが言っていた。

 でも、私にはいまさら逃げられて困るほどの量の幸せなんてないから、もう少し溜め息を吐かせて欲しかった。

 目に見えない幸せが消えてしまうよりも、今ここでこうして座り込んで俯いている私が消える方がよっぽど怖かったのだ。

 はぁ…と重く深い息を吐くと、少しだけ肩の力が抜けていく気がした。

 いつだって周りの言うようにしてきた。

 自分でも滑稽に思えるよ。

 私は私を演じ続けてきた。

 私も私に演じられてきたよ。

 が、もうそれにもそろそろ疲れてしまった。

 今でも私が生まれてしまったあの日のことを公開しているさ。

 ああ、そうだ溜め息を吐こう。

 溜め息で逃げていく幸せなんて、いくら手元からなくなったところで私の目には見えないものだから。

 しかし、私の演じる私は今ここでこうして座り込んで俯いている。

 そう、だからせめて肩の力を抜かれておくれ、そうでないと私を演じる私が消えてしまうよ。

 私たちに幸せなんて有りはしない。

 仮にあったとしてもそれは小さじのスプーンでも大きすぎるくらいの小さな小さな幸せだろう。

 そんな幸せの為に私を消せないだろう。

 いつだって私は溜め息を吐く。

 そうやって私は私を感じて安堵する。

 なぁ私、もう私は疲れたよ。

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