不良くんは死んだみたい。
「よし、気合入れろオメーら!!」
一人の少年が声を張り上げ、士気が高まる。
声を張り上げた少年『ソウタ』は今日、他校の不良グループと喧嘩をする為に数人の仲間と河川敷の公園に集まっていた。
数分後、他校の不良グループが到着し睨み合いになった。こうなれば何時、喧嘩が始まってもおかしくない。
『ぶっ殺してやるゴラァ!!』『上等だ!!ボケェ!!』
誰が叫んだかそんな言葉を合図に喧嘩が始まる。
ソウタは相手の番長へ一直線に走り出し、一発顔面へ殴りつける。相手の番長も負けじとすぐ立ち上がり蹴りを入れ、そして男同士のタイマンが始まる。
数分して、仲間も敵も倒れソウタと番長の決着待ちになっていた。
両者、顔面が赤く腫れ服も血だらけのボロボロになっている。
そして今、ソウタが最後の一撃と言わんばかりの回し蹴りが正確に相手の顎にヒットした。
鈍い音が響き、相手の番長は倒れた。
「よっしゃぁぁぁぁ!!!」ソウタは勝利の雄叫びをあげ仲間たちが、歓喜する。
ソウタは、他校の不良グループに勝利した喜びを仲間達と分かち合っていると、『ドスッ』と、背中に衝撃と違和感を感じ確認する。
そこには、血のついたナイフを手にした他校の不良グループの一人が震えながら立っていた。
刺されたことに気づいた瞬間、今まで経験したことない痛みが襲いその場に倒れ、そして段々と意識が遠のきソウタは、死んだ。
「あれ?ここどこだ?は?」
気づくとソウタは、見知らぬ空間にいた。白いモヤがかかって昼間のような明るさがある知らない場所。
「公園で倒れて、それで...死んだ...のか?」腕を組みその場で悩んでいると背後から突然声が聞こえた。
「おい、少年よ」
声が聞こえビックリして振り返ると、変なおっさんがいた。
口元に、白い髭を生やし赤い帽子を被ったクリスマスによく見る姿の謎のおっさんがいたのだ。
「サ○タ...?」
「違うぞ。わしは神様だ。」
ソウタがそう言葉にした瞬間に被せるように否定の言葉をおっさんは発した。
「いや、どう見てもサ○タだろバカ」
「お前は、死んだのだ。」
「スルーするな!」
ソウタの言葉を無視して、死を告げるサ○タもとい神様。
「人の服装にいちゃもんつけるなクソガキ!ワシは神様だ!」
「えぇ...」
理不尽な強要の言葉に困惑するソウタだったが、めんどくさくなり神様の言葉を聞く事にする。
「ワシは神様だ。お前は死んだ。」
「もう聞いた」
「ワシは、お前をずっと見ていた。喧嘩が強いのぉ!どうだ違う世界で生きてみないか?」
「はぁ?違う世界?」
唐突に、おっさんに違う世界で生きてみないかと言われ困惑する。
「そうだ。お前が生きていた世界とは、違う世界。モンスターや魔法が存在している世界だ。」
「は?モンスター?魔法?」
「お前が、生きていた世界とは何もかもが違う世界だ。どうだ男なら一度は夢見る世界だろ?行きたいだろ?」
「遠慮しときます。」
「そうだろ?いきた...........は?行かないの?」
ソウタは、この怪しすぎる話をするおっさんを信用できず断った。だが...
「マジで行かないの?」
「行かねーよ。怪しすぎるだろ」
「いや行きたがれよ!行きたすぎて泣きながら頼むところだろう!?」
「慌てだして、口調変わるやつなんて信用できねーだろバカ」
ソウタは、おっさんと行け行かないの言い合いを数分もした。
「行けよ!あ!てかワシ神様だから、強制的に行かせることもできるわ!そうしよ」
「はっ!?いや待て!?おい!!!」
結果、おっさんの職権濫用によりソウタは元いた世界とは違う異世界に行くことになった。
突然の職権濫用によりソウタの身体は七色の光に輝きだす。そして、段々と意識がまた遠のき死ぬ瞬間の感覚に襲われる。
意識が遠のく中、おっさんは最後に
「世界を救えソウタよ。そして、また会うその時まで...あ!言い忘れたけど、その世界でお前は最強の勇者だから。頑張って世界を救ってくるのだ...くるのだ......のだ.......のだ........」
セルフエコーをつけた言葉に若干の怒りを感じながら、ソウタの意識は途切れた。
「...ん..ここは?」
ソウタは目覚めると、芝生の上に寝ていた。
若干の気怠さが残る中、身体を起こし状況を確認する。
「おい...マジかよ。」
見たことも無いデカイ敵意むき出しの生き物に囲まれていた。おっさんが言っていたモンスターと思われる生き物に既に囲まれていたのである。
「ヤバイ状況じゃねーか!!!せめてモンスターいない所で生き返らせろよ!!!」
おっさんをぶっ飛ばすと心に誓い、すぐに身構える。するとモンスターの一匹が襲いかかってきた。
「グガァァッ!!!」
「おわッ!?あぶね!!」
ギリギリでモンスターの攻撃をかわすことができ、体勢を整える。
「そういえば俺は最強の勇者だとか言ってたっけ?」
おっさんの言葉を思い出し、試しにこっちからモンスターを一匹殴る。するとモンスターは悲痛な叫び声をあげながら爆散した。
「嘘だろギャグかよ!!」
ソウタの力は、かなり強い事が判明した。その代わり反動も大きいためか殴りを放った右の拳と腕は既にボロボロの状態で力なく垂れ下がっていた。
「見た目のわりには、そんなに痛く無いけどこれが最強の力か?もう右腕動かないぞおい...ってうわぁッツ!?」
モンスター達は仲間が爆散して一瞬怯んだが、すぐに他のモンスターが襲い掛かってきた。
ソウタは咄嗟に、左足で蹴り飛ばして倒すが左足も使えなくなった。
「痛く無いけど、これじゃ不便じゃねーか!クソッ!!」
ソウタはその場に倒れ、残りのモンスターをどう倒すか思考するが...
「ダメだ。もう戦えない死ぬ」
自身の状況から死を予感した直後、何処からともなく一人の人間がソウタの近くに飛び込んできた。
「大丈夫!?今助けるからあと少し我慢して!!」
鈴の音色のような綺麗な女性の声に、剣を持ったその姿の主はモンスターに立ち向かう。
すると一瞬で、複数いたモンスターを見事な剣さばきで倒し、追い払ってしまった。
読んで頂きありがとうございます。
これから、少しずつ投稿していきますのでどうぞ宜しくお願いします。
神野弘