いざ、次の町で 後編
はあ、どこ行こっかなぁ。
瞬間移動できるようになったものの、なんか気分が乗らないな・・・
村を出てから尽は、森の中をさまよっていた。
無駄に照る陽の中で、当てもなくあるいている。
ブチッ
「これで、薬草121枚目・・・」
ふむ・・・。
だいぶ溜まったな。そろそろどっかの町にでも行くべきなのか?
でも、まだ昼過ぎくらいだし。
ぐぅぅ
静かな森に、腹の音が森に響き渡る。
(腹、減ったな。)
どうしようか。マジでどっか町に行こうか。
〈ここでお昼にしますか?〉
ぉおう。ここでか。
でも、何食うんだよ。
〈リリ様の弁当を頂きましょう〉
そういえばそんなものがあったな。
すっかり忘れてたぜ。
袋の中をごそごそとさがして、弁当を取り出す。
あった!んじゃ、早速食べるとしますか。
ササッ
その時、草の不自然な音が尽の耳に届いた。
一体何なんだ。せっかくのランチタイムなのに。邪魔すんなよ。
えっと?
千里眼でそこを確認する。
・・・なんだ、またゴブリンか。
そう呟くと尽は、刀を構えた。
(せいやっ)
尽が刀を振り空を斬ると、真空波が発生し、ゴブリンを真っ二つに切り裂いた。
(すっかり慣れちまったな。)
えっと・・・あれ、ゴブリンどこだ?
倒したはずなんだけど・・・今回もはずr、ああ、あった。
尽は、茂った草に隠れた物を見つけた。
「弓・・・か?」
なんだこれ、弦が引けない?
なんか、鋭いし剣みたいだ。ガイド、頼む。
〈・・・ランク:6、ユニークウェポンです〉
お?やっと、運が、回ってきた?
ずっと3:ウィークウェポンという雑魚武器が、ついにいい武器に!!
「おっしぁ、【鑑定】!」
────────────────────
弓:ソードボウ
6:ユニークウェポン
特性:弦の部分が刃となっている。
力を流せば、対応した力を矢として発射できる
MP回復 ATK物理攻撃力 MAG魔力攻撃力 AGI矢の速さ
────────────────────
おお?
すごいな、遠近両用の武器か。
これで毎回周りの木を切らないで済む!
早速試したいな・・・だがまずは飯だ!
尽は近くの出来立てほやほやの切り株に腰を掛けた。
ふうと、一息つき弁当を斬り離された丸太の上に置いた。
ふたを開ける。
そこには温かい家庭の幸があった。
半分には、ご飯の代わりにそぼろを使った焼き飯ならぬ、焼きそぼろが。
もう半分には、キャベツの様な、みずみずしい野菜。そしてなんと、スープも入っているではないか。
尽からすれば一風変わった弁当だが、十二分にうまそうである。
「いただきます。」
さて、まずはそぼろ焼き。
ん~まい!なんだこれ、甘いぞ。
次は、スープ。
これは、コンソメだ・・・!
野菜も美味い。キャベツだ。が、生でこんなにうまいもんなのか?
どんどん食べていき、気づけば弁当はなくなっていた
「ごちそうさま。」
美味いうまいと、「あっ」という間に平らげてしまった。
いやぁリリさんマジ天使。あれ、これなんかデジャヴ。
さて・・・一服して元気になったし、そろそろ真面目に移動しますか。
尽はコントローラーを手に持って、目を閉じた。
指を動かし、辺りを見渡せる位置をイメージした。
なんかでかそうなところは、2か所だな。
まあ、こっちかな。
尽はそこまで動かして、目を開いた。
その間わずか30秒。瞬間移動のおかげである。
さあ、着いたな。闘技場。
〈アアサグです〉
アアザクか、・・・多分忘れるな。
尽は闘技場らしきものを見上げる。
思ったよりでかい。そして怖い。
ごついおっさんは知ってたけど、人かどうかもわからん奴。それに、
「魔族か?」
「魔族ではない。エルフだ。」
「ふーんエルフか。で、あんた誰だ。」
「お、俺は冒険者のハルトだ。武器は大剣を主としている。」
急に会話に入ってきた戦士らしき男だったが、尽が動じるどころかエルフが驚いてしまっていた。
「ふーんそうか。」
「お前は誰なんだ?見たところ、人族ではないようだが?」
「へぇ、そうなのか。」
「へぇって、お前な・・・」
「まあいいや。俺は冒険者の尽。武器は片手剣とかを使ってる。」
そう言って尽は、ロングソードと刀をハルトに見せた。
「なんだこれは、刃が片方にしかないな。攻撃しにくくないのか?」
「別に不満はない。それより、ギルドってどこにあるか教えてくれないか。」
〈ここから南西に進むと見えます〉
「それなら、この道をまっすぐ行ったら見える。」
ほぼ同時に、ガイドとハルトが道を教えてくれた。
「そうか、ありがとう。」
「べつにいい。」
そう言うと、尽はそそくさとその場を去った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ここか。」
思いっきり「アアサグギルド」と書かれた看板を掲げた建物があった。
尽が中に入ると、大勢の猛者で賑わっていた。
えっと、カウンターはそこか。
「すいません。これの報告に来ました。」
尽は依頼の紙を受け付けに渡す。
「・・・はい。では、納品する物資を提示してください。」
えっと、「これで全部です。」
「はい。少々お待ちください。」
・・・待ってる時間暇だな。
受付の子の手際が悪い。新人さんだろうか。
ああ、そうだ。
「あのー、魔物の素材とかって、どこかで換金できますか。」
「・・・」
「あのー!」
「・・!、はい!何でしゃひ・・・」
かんだな、この子。めっちゃ恥ずかしそう。
あ、やばい。泣きそうになってる。
「魔物の素材って、どこで換金できますか?」
尽が少し優しい口調で尋ねた。
すると受付の子は、泣き出してしまった。
「えと、うぅ。ぁ、あっちで、ヒグ、でぎばず。ぅぅ」
「ああ、ありがとう。」
なんかやっちまったのかな、ごめん。少女よ。お兄さん、そんなつもりなかったんだ。
その申し訳なさをよそに、すぐに態勢を立て直した薬草の数を数える受付の少女。
尽は、なんとなく安心した。
「はい・・・。確かに110枚を確認しました。こちらが報酬の大銀貨5枚と銀貨5枚になります。」
「ああ、ありがとう。」
数が間違っているし減ってるけどもうどうでもいい。これ以上何かしたら、いけない気がする。
尽は、出来るだけの笑みで返事をして、買取カウンターへ足を運んだ。
どうしてか、その後に少女の泣き声が尽に聞こえた。
足を運んだまでは良かったが、尽は目にする。行列を。
ざっと15人と少なめだが、尽は予感した。買取は、長いと。
金に困ってないし。とにかく時間の方が大切だし。
うん、あとでまた来よう。
で、闘技場に来たわけだが。
「その双剣は、牙の如く獲物を狩り、
その足は何物にも止められないほど速い!!
この闘技場で数々の成績を収めたSSランクの冒険者ァァ!!」
ライ!!!
オォォォォォォォォォォ!!!
「 そしてそして、その相手は!その大物の目に留まったラッキーボーイは!
自らを知られず他人を制す!地に留まらず空までも駆ける、ハンター!」
尽!!!
オォォォォォォォォォォ!!!
「両者とも準備はいいですか?
安心してください。死ぬ前に助けますので、思う存分にやっちゃってください!」
それでは、始めます!!レディーファイッッ!!!
・・・どうしてこうなった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
時をさかのぼって夕方。ちょうど暗くなってきて、少ししたら明かりがつくだろう。
そんな時間にもかかわらず、尽のいる場所はうるさい程にぎやかである。
そんなわけで、尽は闘技場にいる。と言っても「観客席に」だが。
「おお、スゲー気迫だな。なんか疲れちまうよ。」
尽が席に着いたときには人は少なく、どの席もスカスカであった。
しかし、試合開始前になると、大勢の人がやってきた。
瞬く間に席が埋まっていき今に至る。
試合は、対魔物だが、戦いは想像以上にギリギリの駆け引きとなってきていた。
闘技場のシステムとしては2つ。セコイマネは禁止。命の保証はされない。いたってシンプル。
思ってたよりもやばい所だった。
違うんだ。俺はもっと安全に楽しく戦いたいんだ。自分の力量も知りたいし。
お、ようやく挑戦者が魔物を倒したみたいだ。
次は一体誰が出てくるんだ?
挑戦者の名前は魔術の掲示板の様な所に記されている。
それを見て尽はあることに気づく。
あれ、挑戦者って確か8人だよなぁ。
さっきのが6人目。今7人目だが、名前が7人しか載っていない。
まあ、大丈夫だろう。きっと棄権したんだ。危ないもんね。うん。
トントン
尽の方を誰かが叩いた。
尽が後ろを振り返る。
「また会ったな。尽。」
「お前は、確かハルトだったか。」
先ほどあったエルフか。
恐ろしさを感じさせる男だが、なんだ?さっきよりも威圧を感じる。
「ああ。いきなりで悪いが、一緒に来てくれないか。」
「なんで俺なんだ?もしかしてボッチ?」
「ボッチじゃない。時間がない。悪いが早く決断をしろ。」
じりじりとハルトが尽に近づいている。
尽は構える。
ステータスを見てる暇もなさそうだな。
「・・・わかった。」
「いい判断だ。来い。」
そのあとは、準備室に呼び出された。
「武器を選べ。私用の物でも構わない。」
「なんなんだ、この部屋は!」
「さっきも言った通り、この部屋は準備室だ。お前は今からゲストとして出場してもらう。」
はい・・・ゲスト?やだよ面倒くさい。
まあ、内容にも寄るけどさぁ。
「これから何をするんだ?」
「何をするかは、直前に伝える。それまでは、ここで待機していろ。」
「いや、それくらい教えてくれたって良くないか?」
「では、また後で会おう。」
「ちょ、おい!!!」
数分後、
警備の人に誘導されて、会場に出た。
「今晩もやってまいりました!本日3回目の闘技大会です!!」
「実況は、ギルドのNo1受付娘のフィルルと、」
「エルフの冒険者。ハルトだ。よろしく頼む。」
ワァァァァァァァ!!!!!
「今回の大会では、皆さんも知っているかもしれませんがゲストが来ております!」
「一体どういった輩なんだ?」
「それでは、ご登場していただきましょう!本日のゲスト、尽さんでーす!!」
ワァァァァァァァ!!
もう一度言おう。どうしてこうなった。
なんでだ。さっきまで楽に、楽しく観戦してたのに。
少しの間に色々ありすぎて既に疲れたよ。
「そして今回の挑戦者は~、なな、なんと!!!あのSSランク冒険者!」
サワ・・・ザワ・・ザワザワ・・・
「アアサグの闘技場を制した男!!ミスタァァァァァ ライ!!!」
ワァァァァァァァァァァァァァァァ
キャァァァァァァァァ
フォォォォォォォォォォォ
う、うわぁ。やべえの来たよ。
左腕傷だらけだよ。右手に至っては義手だよ。めっちゃ堅そうだよ。
自信満々な顔で、笑ってるよ。
特に鎧を着こんでいるわけでもなく、筋肉を見せつけているわけではない。
Tシャツに長ズボン+マントという服装に、なぜか裸足。
露出している、顔、腕、足には無数の傷がついている。
「では、挑戦者のライさん!本日の意気込みをどうぞ!!」
「今回は、面白そうな子がいたからこの大会に参加してみた。今日の挑戦者は俺だが、彼にもよく注目してほしい。きっと面白い試合になるだろう。まあ、やるからには全力でやらせてもらうけどね。」
「ありがとうございます!!では、尽さんも意気込みをどうぞ!!」
いや、考えてないけど?!
会場が尽の言葉を待っている。
長いようで短い間の沈黙の後、尽が口を開いた。
「なんか、よくわかんないけど、これだけは言わせてもらう。」
尽が、マジの声のトーンで言葉を放つ。
会場が、より静かになり、ライも、興味深々である。
すぅ・・・
「めんどくさいことは断固お断りだ。過度な期待は絶対にするなよ!」
「・・・ッハァ!! あー、尽さん、ありがとうございました!!」
どう受け取ったかは分からないが、尽の言葉に多くの人が頭に?マークを浮かべている。
「では、うおっほん!!」
「その双剣は、牙の如く獲物を狩り、
その足は何物にも止められないほど速い!!
この闘技場で数々の成績を収めたSSランクの冒険者ァァ!!」
ライ!!!
オォォォォォォォォォォ!!!
「 そしてそして、その相手は!その大物の目に留まったラッキーボーイは!
自らを知られず他人を制す!地に留まらず空までも駆ける、ハンター!」
尽!!!
オォォォォォォォォォォ!!!
「両者とも準備はいいですか?
安心してください。死ぬ前に助けますので、思う存分にやっちゃってください!」
それでは、始めます!!レディーファイッッ!!!
では、行きましょう!!
レディー・・ファイッッ!!!
掛け声とともに、ライが消えた。
(どこだ!?)
どうやら、一瞬で尽の死角に入ったようだ。
尽が慌てて千里眼で探す。・・が、見つからない。
〈上です〉
ガイドの声でとっさに前に飛ぶ。
ふりかえった瞬間、爆発音とともに、地面には大きなクレーターができていた
強すぎだろ・・・相手にもう少し不足があっても良くないか?
波乱の闘技が幕を開けた。
武器のレア度は4が普通です。1が最低、7が最高。
鑑定は、森さ迷ってたら、覚えました。