いざ、次の町へ 前編
()=想像を強調 or 意識している
〈〉=ガイドのアナウンス
【】=スキル
を表す()です
〈銀貨5枚で【ガイド】を取得しました〉
・・・え?
機内アナウンスのような声が聞こえる。
〈繰り返しますか?〉
いや・・・そうじゃなくってさ
〈では、銀貨についての詳細を説明しますか。〉
あの、まずはね、
〈ならば、スキルの習得経緯を「それだ!じゃない!いや、そうだけどね!」
(ああもうやだ・・・)
なにこれ、ガイドってなんだよって話だよ。
〈スキル【思考現実化】によって、銀貨五枚を消費して習得しました。〉
なるほど。理解した。つまりだ、俺が(誰か教えて)って思ったから【ガイド】を習得したんだな。
〈はい〉
なるほど。じゃあ、きっちり銀貨が五枚減ってるのもそのせいなんだな?
〈はい〉
なるほど・・・フフフ。
何やらいやらしい笑みを浮かべる尽。
金が想像一つで、減るんだな。
ガイドよ、金を無制限に増やすことは可能か?
〈制限はありますが、増加自体は可能です。〉
そうか。じゃあ・・・
尽が、頭で思い浮かべる。
(大金貨200枚が袋に入っている。そうに違いない。)
尽が袋に手を突っ込む。
何かを掴んで引き上げる。
その手には、大銀貨と同じサイズの硬貨。
だが、色は金色の物があった。
おっはぁふぅ!
成功だ!これで移動できる!
しかも、お財布事情を考えなくてもいい!
素晴らしいスキルだな、ほんとに。
舞い上がる尽。
前世ではありえない。夢のような光景に、笑わずにはいられない。
とてもいい顔をしている。
よし、明日から出発だ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌朝
「んじゃ、ありがとうな」
「うぅん。こっちこぉそ。楽しかったよ~。」
昨日はユーディの所に、お世話になった。
リリさんに弁当まで作ってもらったし。
ああ、あとおっさんにポーション用の水筒をもらったな。
ユーディからは、地図をもらった。
みんなやさしいな。やさしいけど・・・うん、いいや。
とにもかくにも、ありがとう。
ユーディ宅を後にした。
さて、せっかく色々貰ったわけだけど、ぶっちゃけていい?これ。
・・・いらないです。
ギルドでポーションを汲みながら、尽は思った。
それはなぜか。簡潔に説明しよう。
~昨晩~
尽→尽 【ガイド】→ガ
尽「あ~準備どうしようかな。」
ガ〈問題ありません。思考現実化があればありとあらゆる事態に対応できます。〉
尽「・・・そうだった。」
・・・ということがあったのだ。
つまり、このスキルのおかげで、もらったものは(弁当以外)完全にゴミなのだ。
捨てるのもなんかな・・・
倉庫の肥やしになる以外道はないのか?
便利すぎるスキルは困りものでもあるな。
まったく、面倒な。
ぜいたくな悩みを抱えてギルドカウンターへ尽は行きつく。
「おっす」
「やあ、今日も来たのかい。どうしたんだい?依頼なら、そっちの壁を見とくれ。」
「ああ、それなんだが・・・」
「ん?違うのかい。」
違うんだな、これが。
「今日でここを離れようと思う。」
場が一瞬静かになる。
「・・本気かい?」
「ああ。」
「やめときな、下手したら死ぬよ?」
「大丈夫だ。」
心配されてるって、なんかいいな。
ちょっとうれしい。
「自信満々に言うからには、大丈夫だっていう確証はあるんだろうねぇ?」
来ると思ったぜ。この質問。
尽は無言でステータスを開く。
「見てみろ」
「はぁ。無理だと思ったら、意地でも止めるからね。」
ステータスを見たアリスが凍り付く。
「ほお?なんだいこのステータスは?」
「どうだ。これなら文句ないだろ?」
この反応が見たかった。どうだ姉御ぉ。
これで文句ないだろ。
自信満々にステータスを見せた尽だったが返ってきた返事は・・
「話にならないね。」
「うぇ?!嘘だろ!?」
え、マジか。
ユーディに並ぶステータスだったし、いけると思ったんだけどな。
何が駄目だったんだ?
〈おそらくスキルを見せていないためだと思われます。〉
急に来たな、、【ガイド】。
「じゃあ、スキルを見せるよ。」
「【不可視】は使えるスキルだけどね。強さには直結しがたいよ?まあ、言うからにはさぞ素晴らしいスキルに恵まれてるんだろうねぇ?」
そりゃ、一瞬で大富豪になれる素晴らしいスキルが・・・なんて言えないよなあ。
変に怪しまれたくないし。
どこまで見せていいんだ?
〈この問題を解決するためには【空歩き】【偽装】のみの表示で十分かと。〉
そうか、じゃあ・・・
って、どうやって許可するんだ?
〈画面に触れながら、念じるだけで可能です〉
「ちょっとステータスいじるからまってくれ」
「ああ、いいよ」
アリスに一言断って、ステータスを設定する。
こうか?
ガイドの通りに操作する。
〈完了しました〉
ん。何も変化ないけど。
〈ステータスが相手にどう見えるかは、念じれば確認できます。〉
念じるって便利だなぁおい。
・・・
──────────────────────
感凪 尽 Lev214
ハララギルド G-2級
MP 20023
ATK 16021 +3204
DEF 15200
MAG 17000
INT 17701
AGI 23011
LIFE 10002
【スキル】
空歩き
【バシップスキル】
偽装
──────────────────────
うん、ちゃんとできてるな。
「もう一度ご覧いただきたい」
「どれどれ・・・!」
アリスは目を大きく見開いた。
「あんた、一体何もんだい?」
「え、べつに普通の尽ですけど。」
やべ、変な回答しちまった!
なんだよ、普通の尽って。
「ま、まあいいさ。ギルドで個人情報の聞き取りはご法度だからね。」
「ほっ」
「気が向いたらまた聞かせておくれよ?偽装に空歩き。レアスキル2つ持ちは珍しいからね」
「考えておくよ。たぶん。」
少し怪しかったものの、問題なく出発できそうだな。
それにしても驚いた、レアスキルだったのか。それ。
「おっと、待ちな。」
尽がギルドを去ろうとすると、アリスが呼び止めた。
「いったいなんだ?」
「あんた、どこに行く予定なんだい?」
どこに・・・そういえばそうだな。
「んー、闘技場のある国かな。」
「そうかい、ならこの依頼を頼まれてくれないかい?」
アリスは壁にある依頼を一枚とって、尽に見せた。
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調達物資 薬草×50枚
契約金 なし
報酬金 一枚につき大銅貨5枚
期限 できるだけ早く頼む
考察 最低50枚だが500枚までなら
納品を受け付けるぜ
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「いいけど、達成するにはどうすればいいんだ?」
「この大陸のギルドに、この紙を見せれば受け付けてくれるよ。」
「わかった。」
でも、金に困ってないしな。やる意味ないな。
「なんだい?何か不満があるのかい?」
「んー今は、金に困ってないんだよなぁ」
「ああ、そういうことだったんだね。そりゃ、そんな顔になるわけだ。」
尽の顔は、明らかに不満を感じる顔だった。
ぐぐぐ、なんか悔しいな。
「まあまあ、依頼を達成し続ければ、ランクアップできるからさ。頑張りなって。」
「あ、そうか。そうだったな。」
「おいおい・・」
いつまでたっても覚えられないんだよな。
どうにかならんかね。
〈どうにかなります。〉
びっくりしたぁぁ。
ガイド君、急に来るのやめてくんないか。
〈善処します〉
あ、そこは了解しましたじゃないのね。
〈私が尽様の知りえたことを記憶し、必要だと判断した場合に尽様にお知らせします〉
うーん、なんかタイミングが曖昧なんだよな、、それ。
〈適応しますか?〉
とりあえずハイで。
減るもんじゃないしな。
脳内で会話?をし終えた尽はギルドを後にした
「それじゃあな」
「ええ、またのご利用、待ってるわよ。」
「さて、どうやって行こうか。」
テンプレ道理に、馬車借りて行くか?
金貨10+20枚の出費は全然痛くないんだが、いかんせん遅いからな。
一番いいやつでも、2週間ちょいかかる。
・・・これって贅沢な悩みなのかなぁ。
尽は感覚が狂った考えをしているが、ふつうなら3か月分の働きだけでは金貨100枚。一番いいやつを借りるとなると、餌代込みでざっと大金貨30枚は優に超える。それさえも、いまいちだと思う尽は、当然贅沢である。
こういう時は、【ガイド】が役に立つんだよな。
〈一番速い方法は瞬間移動です〉
ふーん。そうかそうか。瞬間移動か。で?どうするの。
尽もさすがに慣れたのか、全く驚かない。
〈まず思考現実化で、スキル【千里眼】を習得してください〉
千里眼・・・だと?
慣れたわけがなかった。やっぱり驚いてしまう
それってどこでも見ることができるっていう、あの・・千里眼か!
尽は唾をゴクリと呑み込んだ。
尽にとって、千里眼とは特別な存在となっていたからだ。
よっしゃ習得するぞ。
いつにもまして、真剣な表情を見せる
「・ ・ ・」
尽が目を閉じて心を静める。
んんんんんん
〈スキル【千里眼】を習得しました。〉
よっしゃぁ!
やべえ、テンション上がってきたw
どうやって発動するんだ?
〈目を閉じて(千里眼起動)と念じてみてください〉
さっそく目を閉じた。
(千里眼起動!)
そう言うと、目をつぶっているはずの尽の脳には、確かに目の前の景色が見えた。
まるで、本当に目で見ているかのような感覚だ。
あれ、目閉じてるよな?
本人もこのありさまである。
目に手でふれてみるも、眼球にはとどかない。
〈あとは、進みたい方向に進むだけです。〉
どうすんだこれ。
イメージしずらいな。
尽が、頑張って想像しようとするが、足が動いてしまい全く景色は変わらない。
ガイド君。どうすればいいんだ。
〈テレビゲームの感覚でやってみてはどうでしょうか。〉
テレビゲーム・・・それだあ!
となると、コントローラー欲しいな。
コントローラー、コントローラー、コントr・・・
千里眼そっちのけで、コントローラーを手に入れたいとコントローラーを想像してしまった。
ただ、それが吉と出たのか、尽の手にはコントローラーが出現した。
おお!この形は、PS4のコントローラーじゃァないか!
そうとなれば、左スティックを前に・・・
尽が、操作すると頭の情景が前へと動いた。
どうやら、成功したようだ。
キタァァァァァァ
夢の、誰にも見つからずに店に行く計画、が実行できるぜぇぇぇぇ
〈しょうもないです〉
るっせぇ!夢くらいどんなの見たっていいだろ。
〈次の工程へと進みます〉
無視ですか、そうですか。
〈メインは、隠密行動ではありませんよ〉
わかったよ・・・
はあとため息をつく。余程無視されたのがショックだったのだろう。
千里眼を解いて、コントローラーを地面に投げつけた。
まるで、PVPで無慈悲に殺され続けたプレイヤーの様だ。
ドン・・・・
コントローラーには傷一つつかずに地面にひびが入っていた。
尽にとっては、驚くべきことだ。
もっとも、そんなのどうでもいいと言わんばかりであるが。
〈瞬間移動です。千里眼を起動してください〉
ふてくされながらも、尽は千里眼を起動し、コントローラーを拾った。
〈好きな場所へと移動して、そこへ今いるものだと強く思ってください〉
こうか・・
やる時にはやる男。
小さな岩の上に焦点を合わせ、多少元気は少ないかもしれないが、とても強くイメージした。
〈スキル【瞬間移動】を習得しました。目を開いてください〉
尽はおもむろに目を開いた。
少し目線が高い。どうやらさっきの岩の上にいるようだ。
うん。やったー
完全に元気を失ってしまったようだ。
喜ぶ声色は全く持って明るくない。イメージカラーが紫の沈んだ声だ。
最速の移動手段を手にした尽だったが、初めから、精神がやられてしまうのであった。