プロローグ
――もう、何も期待しない。何も信じない。もういっそ、死んでしまいたい。
森元昭彦は、かつて不条理な世界に絶望し全てを諦めた。
そして、自ら命を絶った。
アキヒコの魂は昇天し、あの世で裁判にかけられた。判決は“不可”。アキヒコは死んでなお、絶望することになった。
それを見かねた神は、温情をかけることにした。それは、神界において前例の少ない特異処置。
「君の魂を同僚に委任しよう。本来であれば、もう一度私の世界に転生させ魂の修行に従事させるところだが、君程に魂に傷を負ってしまってはまた同じ過ちを繰り返すだろう。別の世界であれば、君は今度こそ希望を見いだせるかもしれない」
神は神術を詠唱し、アキヒコの魂を別の神の世界に飛ばした。
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――もう、何も期待しない。何も信じない。もういっそ、死んでしまいたい。でも、“今は”死ねない。
森元昭彦、もといレイ・フォレストは生まれ変わっても不条理な世界に絶望し全てを諦めてしまった。
しかし、レイは命を絶つことを躊躇った。本能的に彼は、それをやってはいけないと知っていた。
――俺は、死んだら天国に行きたい。今死んでも天国には行けない。だから今は死ねない。
レイは俗世から離れて過ごすことに決めた。あらゆるもの裏切られ、もはや現実と向き合うことができなくなったからだ。
生きるために、彼は人が寄りつくことはないであろう「魔の森」に一人で身を投じた。
そして数年、彼は死にもの狂いで「魔の森」に生きることになる。
人知れず喘ぎ、藻掻き、足掻き、ただ死を望みながらも生に執着する。
この物語は、希望のない世界で死ぬために生きる男の異世界史話である。