73.蒸留酒
買ってきてもらった葡萄酒を蒸留することにした。アルコールの沸点と水の沸点の差を使い、先に気化してしまうアルコールを集めて冷却すると出来上がるはずだ。記憶が正しければね・・・。さっそく蒸留装置を作り上げていく。簡易的なものだが、案外集めようと思えばできるもので、1日で装置はできた。葡萄酒3本分を蒸留できる装置だ。もっと一気にできたら楽なのだが。火は90℃くらいの火を使いたかったので、温度計もないこの世界ではイメージでどうにかなる魔法を使うにした。装置を使い蒸留しているとテンスがやってきて興味深そうにこちらを見ていた。
「手伝ってくれますか?」
「喜んで!」
テンスはとてもうれしそうである。酒造りを今後はテンスに任せれば、コルトスターの機嫌を取れるかもしれない。気化したものを魔法の氷で冷却し、蒸留酒ができた。さっくり説明しているようだが、なかなかに時間がかかっている。できた蒸留酒を少し舐めて見たら、濃すぎて飲める濃度ではなかった。そうだった・・・この後熟成という行程があるんだった。葡萄酒でできた蒸留酒なので『ブランデー』かな。あ、そうだ、熟成を早めることはできないだろうか?出来立ての無色透明な『ブランデー』に熟成しろと念じながら魔力を送る。すると、色が銀色に変わっていった。さっきの熟成させていない『ブランデー』の濃度にやられてもう味見をしたくないので、テンスにしてもらうことにした。
「あぁ、これはおいしいですね!!!」
テンス大興奮である。熟成前と比べてどうか味わってもらった。
「色味のない方はアルコールの暴力って感じですが、銀色の方は何とも言えない爽やかな風味と甘みのようなものが下に駆け巡っていきます。しかも、この青い方を飲むと何だか元気が出ますね!」
元気が出るのは酔っぱらっているだけではなかろうか?おいしいものができたならよかった。おもしろいので、その後は実験としていろいろな魔力のイメージで熟成させたらどうなるか試してみた。属性ごとにイメージしてみたら次のような結果になった。味に関してはコルトスターにも飲ませて意見を聞いた。
〈属性→色:味、その他備考〉
空→白:爽やか
時→灰:形容しがたい、時間を忘れる?
闇→黒:形容しがたい深み
水→青:軟らかい、味がない
命→赤:形容しがたいうまさ、怪我が治る?
火→黄:とても辛い、のどが渇く
地→緑:渋い、硬い
風→橙:爽やか、軟らかい
雷→紫:やや辛い、下が痺れる
光→金:とても甘い、幸せな気持ちになる?
無→銀:爽やか、甘い
属性は人族の神様が持つ属性をそれぞれイメージしてみた。すると、神様の司る色通りに『ブランデー』が変化していった。金色になった時には少し驚いた。闇属性の黒色のはコルトスターでもさすがに飲むのを嫌がっていた。まぁ、飲ませたら案外おいしかったらしいが。味に関してはコルトスターもテンスも同じ事を言うもんだからそういうものなのだろう。怪我が治るというのは、テンスが料理中にやってしまった火傷が治ったらしい。ポーション的な何かになってしまったのだろうか?とりあえず、12種類の蒸留酒ができたのでオルランドに持っていくことにした。ちなみに、コルトスターは雷の属性のが一番好きらしい。
氷の属性は魔族の神、ガムキコトが司っています。人族の神は色を司ると考えられていますが、魔族の神は司らないそうです。