66.ファラムンド
「私、お勉強向いてないんで狩りに参加したいです。」
そういって来たのはあのオレンジの髪の子だった。名前はファラムンドというらしい。みんなにはふぁらと呼ばれている。勉強の後に直接言いに来た。その目は燃えている。
「でも、狩りに参加できるほど力があるようには見えないよ?」
「では、学術ではなく体術の勉強を教えてください!」
困ったぞ・・・。これ以上人に教えることに時間を割いていたら研究ができなくなってしまう。ただですら墓穴を掘って学術を教える羽目になり、研究時間が減っているのだ。
「時間が・・・。」
「では、あの魔族の方を先生に紹介してください!でないと私はご褒美にありつけません!」
食い気味に言われた。どうやらこの子は『ゼリー』目当てらしい。こっちが無言で見ているっていうのに勝手に『ゼリー』の魅力について語り出しているのだ。
「わかった!わかったからちょっとストップ!魔族に対する忌避感はないの?」
「ありますがご褒美には代えられません!」
すごいな・・・食い気が魔族への忌避感をどこかに追いやってしまったらしい。笑える話だ。しかし、今までのここでの人族の対応を考えるとこう変わってくれるのはいいことかもしれない。ん?変わってくれたのか?まぁいいや。
「それと、狩りをしたからと言ってもご褒美をあげるとは限らないよ?」
「ガーン・・・。」
口でガーンっていう人初めて見たわ。なんだかこの子は嫌いになれそうにない。とりあえず、ジェーヴォに紹介してみるか。
☆
「というわけでジェーヴォ、先生をやってくれないか?」
「か、構わないが、儂には人間の女子をうまく育てられる自信がないぞ!」
「大丈夫です!気合で頑張ります!必ずや自分で食材を取れるようになりますから!」
ちょっと趣旨が違うような・・・。ジェーヴォが引き気味である。気の毒だがここはジェーヴォに頼む他ない。
「何とか頼むよ。」
「ぐぬぬ、何か稽古になることを考えておくから、アルはか弱い人族でも使える武器を作ってくれ。」
「ぜひぜひ!!!」
ファラのオレンジ頭がグイッと近づいてくる。この子は距離が近い。しかし、うーん、突然の難題!武器の研究はできるが、当初の研究は遠のいて行くばかりである。困った。自分二人いないかなぁ。もしくはそういう魔術具作れないかなぁ・・・。まぁ、それを作ったらさらにさらに当初の研究はできなくなるのだがね。
「とりあえず、ジェーヴォは彼女のことをよろしく!」
そう言い捨ててとっとと逃げた。これ以上ここにいると研究ができなくなる。ジェーヴォとファラはうまくいくのだろうか・・・。そもそもファラは運動ができるのだろうか。それぐらいの前情報は聞いておくべきだった。もしかすると戦闘の才能がないかもしれない。いや、ここは希望を持っておこう。彼女が狩りに出かければ僕の狩りの時間が減り研究時間が増える。彼女はきっとできるあろう。そうだそうだ。そう思い込みそのことについて考えるのをやめた。自室に戻って本を読むことにした。
ファラムンドはポニーテールです。アルより年上ですが背が小さいです。