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魔道体系学の祖  作者: 五反田鐡ノ進
第2章 奴隷時代の憂鬱
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65.やり返さない強さ

 

 次の日から図書室で先生をすることになった。図書室には長いテーブルと筆記用具があるためだ。なんで筆記用具があるかは知らない。学年別にテーブルを分けて算数を教える。何となくできる子とできない子がいることが分かった。これは不公平になってしまいそうだ。自分で言っておいてなんだが、これご褒美を出すための基準を考えるのめんどくさそうだなぁ。


 午前中はそんなこんなでお勉強していた。お昼すぎには狩りに行く。ジェーヴォに着いて来てもらい、女の子の分としてちょっと多めに収穫する。荷台を用意して狩るので手間がかかる。そんな感じで一日が過ぎていく生活をしていたら、ある日人族の男の子たちとばったり出会った。狩りの帰りにばったり出会ってしまった。


「おい、お前!不公平だからその肉よこせ!」

「「「そーだそーだ!!」」」

「はぁ!?不公平の意味知ってるのか?」


 ついため口になるくらい意味わからなかった。よくみて見ると男の子たちの顔は隈がある。もしかして、お腹がすきすぎて眠れてないんじゃなかろうか。それで余裕がなくて見境なく肉をよこせとか言っているのかな?あほかな?元凶は僕だけど。


「もとはと言えばお前が余計なことを言わなきゃよかったんだ!」

「はーい、そうですねー。さよならー。」


 いやーなんだかそうなんだけど、めんどくさいので軽く流して帰ろうとする。すると、荷台に積んでおいた食材を取られそうになった。とっさにジェーヴォが間に入って止める。


「何をするんだ!」

「魔族に用はねぇ!」


 男の子の一人がジェーヴォに殴り掛かった。人族より強いジェーヴォに向かって何をやってるんだろうと不思議でたまらなかった。しかし、ジェーヴォは避けもせず殴られた。衝撃的だった。割かし血気盛んなジェーヴォであるが怒りもせず、殴られたままである。


「おい、何をやっているんだ!!」

「アル、大丈夫だ。儂は頑丈にできている。」


 ジェーヴォが手を出さないことに困惑しつつ代わりに怒ったら止められた。止められた意味もわからなくてさらに混乱した。男の子の方もカッとなってやっちまったという顔をしながらも、何もやり返されないのが不思議でたまらないといった顔であった。


「本当に大丈夫か?」

「アルがそれを一番よく分かっているだろう。さぁ、行こう。」


 ジェーヴォに言われて荷台を引き始めた。男の子たちは最初呆然としていたが、すぐさま追いかけてきた。腰抜け魔族とジェーヴォを罵っている声が聞こえた。だいぶイラつくが当の本人が涼しい顔なので荷台を引くことに専念した。人が追い付けないスピードで荷台を引き、城につくとジェーヴォにさっきのことを聞いてみたくなった。


「なんでやり返さなかったんだ?」

「デルフィナ様に言われたんだ。『人族は魔族よりも数倍か弱い。だから彼らには優しくしなければなりません。』ってさ。」


 はぁ、なるほど。確かにあそこでジェーヴォがやり返していたらどんな怪我になっていたかわからない。ついカッとなって反撃してしまえと考える自分とは大違いだ。それを言えるデルフィナ様も言いつけを守れるジェーヴォもすごいなぁ。ちょっと反省しよう。そう思って前からあまり変わっていないが。食材を食堂に運びながらそんなことを考えていた。やり返すだけが強さじゃないんだなぁ。そう感じさせられる出来事だった。


アルはけっこう短気なのですが、それを良く反省します。改善されているかは本人の言う通り何とも言えませんが・・・。

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