64.ご褒美
お腹ペコペコの女の子たちにまずは料理を出すことにする。そんなに量があるわけではないので、備蓄していた分をすべて使って全員に振る舞う。流石に一人で料理しきれないので、テンスに協力してもらった。テンスは新たなレシピをくれる僕を師匠と呼んでおり、良く僕の料理を手伝ってくれる心優しい魔族である。
オーク肉があるからそれを使って簡単に料理をする。生姜焼きが食べたいのだが、醤油も生姜もないので塩焼きにするしかない。それでも腹ペコの彼女たちにはおいしいだろう。それから今後のための秘策を用意しておく。
女の子たちは席に座り食事を今か今かと待っている。数えていないがだいたい10人程度いる。料理を忌み嫌う魔族に作ってもらってるのに、もはやそんなことはどうでもいいらしい。本能には勝てないのだろう。オーク肉をそれぞれの前に給仕していく。おいしそうなにおいにみんなが唾を飲む。給仕が終わり、食べていいと言うと一斉に食べ始めた。あくまで元貴族なのでがっついたりはしないが、優雅に食べながらもパクパクと素早く食べている。よほどお腹がすいていたのだろう。ちょっと申し訳なくなる。みんなが食べ終わったころに僕は秘策の話をすることにした。
「今回はみなさんに食事を分けましたが、次回は研究を手伝うという対価をいただきます。ただ、ヤル気が出ぬまま手伝っていただいても効率が悪いので、成績優秀者や貢献者にはご褒美を差し上げたいと思います。」
そういってテンスに例のブツを持ってきてもらった。それをテーブルに置くがみんなあまりそれがなんなのかわかっていない。あまり大量に作れるものでもないので3つしか用意できなかった。
「これはなんですか?食べ物ですか?」
女の子の一人が質問をしてきた。オレンジの髪で元気いっぱいって感じの子である。質問しておきながらその目には例のブツしか映っていない。
「これは『ゼリー』だ。甘くておいしい甘味です。今回大量に用意はできなかったので一口づつスプーンですくって食べていただきます。」
「なんておっしゃったのですか?」
「『ゼリー』です。」
ゼラチンなどないのだが、それらしき魔物がいたのでゼリーにしてみたらうまかったのだ。害もないし、甘いものなら女の子たちはやる気を出してくれるだろう。発音の仕方は元の世界の言い方なのでわかりにくいようだが、食べたらすぐにはまって呼べるようになるんじゃなかろうか。
「では、回して食べてください。」
一人目の子たちは食べるか迷っている。プルプルとしたあの魔物を連想させるのだろう。確かに忌避感はあるかもしれない。確かに材料それだしね。
「あの、食べにくいなら私が先に食べてもいいですか?」
例のオレンジ髪の子がそういうと最初に食べるはずだった子の1人がおずおずとその器を渡した。渡された途端、オレンジ髪の子はスッとすくって一口食べて見せた。
「~~~~~!!」
相当おいしかったようで悶絶している。それにつられて私も私もと皆が一口づつ食べていく。どうやら気に入ってくれたようだ。みんなにまにましている。
「これのためにみなさん頑張ってくださいね。」
にこっとして言うと女の子たちの目に決意がみなぎっていた。ご褒美作戦はうまくいきそうだ。
そうです。スライムゼリーです。