62.ガムキコト
「では、私があの魔術具を改良するってことでいいですか?」
「本当にできるのであれば任せよう。」
研究許可が下りたので研究生活の始まりだ!その前に対象物の氷が何なのか聞かねば。
「ところで、あの氷って何でできているのですか?」
「・・・アディシェスの神、ガムキコトの氷だ。魔力を帯びた火でしか溶かすことはできない。」
また神か・・・。魔族の神はろくな奴がいないな。でも、なんでそんなやつがわざわざデルフィナを凍らせたのだろうか。
「どんな事件があったのですか?」
「この城がリザードマンたちに攻められている時であった。リッチーの戦いでも見ただろうが、追い詰められたキングリザードがその身を犠牲に神を召喚したのだ。その神がガムキコトだ。」
うん?リッチーの時にはリッチーはその身を犠牲にしてはいなかったぞ?そんな疑問を持っていることに気付いたのかコルトスターが補足してくれた。
「リッチーの時はリッチー以外の仲間が大量にやられていただろう?あれを供物としてみなしたのだろう。」
そんなこともできるのか。つまり、リッチーは最悪もう一回自分の身を犠牲にしてリリスを召喚できるのか。そうわかったらなんだか背筋が凍りついた。
「ガムキコトは戦いに興味がなく、召喚しても暴れることはなく消えようとしていた。しかし、元はエルフの神であったガムキコトはエルフに棄てられたらしい。それが原因でガムキコトはエルフが嫌いでな。エルフであるデルフィナだけはその暴威にさらされたのだ。」
それだからリリスが召喚されたときにコルトスターはあんなにも青ざめていたのか。神を召喚するのは最後の一手として良く使われるのかな?とりあえず事情はわかったが、まずは神の氷を溶かすにはどうしたらいいか調べなければならないなぁ。
「城の本には氷を溶かすヒントがなかったのですか?」
「儂は人語が読めぬ。あれはすべてデルフィナの持ち物なのだ。」
魔語と人語、それから古代語がこの世界にはある。エルフは普段人語で読み書きをするらしく、図書室にある本は確かに人語であった。ちなみに古代語は魔法に使われ、ラテン語に似ている。どうでもいいか。読めないから知らなかったのであろうが、あそこにある本は宝と形容していいほど貴重な本たちである。読めば読むほど新しい知識が増える。あそこに良い研究資料がありそうだ。
「あ、デルフィナ様はあとどのくらいは大丈夫そうですか?」
「あと5年は大丈夫であろう。」
あれ?案外あるじゃん。これは余裕を持って研究できそうだなぁ。
「案外時間があるのですね。」
「何を言っておる。5年など少しの間に過ぎてしまうぞ。」
「あれ?ご主人様は今いくつですか?」
「千を越えてから数えておらん。」
あー、そうか魔族は寿命が長いのだった。あれ、ジェーヴォも僕より相当年上なのかな?それはきっついわ・・・。魔族とエルフは寿命が長い。平均して魔族は長いってだけで短命な魔族種もいる。ただ基本的には人族よりも長い。エルフは百歳、魔族は千歳という諺があるくらいだ。
「では、これからデルフィナ様を助けるために日夜研究させていただきますね。」
「あぁ、よろしく頼んだ・・・。」
よーし、5年もあるんだ!早めに研究を終わらせてエルフを助けだし、デルフィナにエルフの魔法を教えてもらおう!!・・・っとその前に。
「あ、ご主人様、他の人族の奴隷や魔族を勝手にこき使ってもいいですか?手伝わせたいのです。」
「よかろう。好きにせよ。」
許可をもらって思わず悪い笑みがこぼれてしまった。
魔族の神にもいろいろいます。そのうち全部出せたら出します。