6.母の話
自分の話が分かってるかもしれないと思ったらうれしかったのか、次の日から母が毎日来てお話をするようになった。
母が話す内容は主に社交界の話で、あの人の香水がステキだとか、あそこの家が政変で無くなったとかいう噂話だとか多かった。おとぎ話みたいなものをたまにしてくれるのだが、その話がとても役に立ち、いろいろな情報が分かってきた。
一つ目に、この国はイェソドというらしい。父はこの国の騎士の中でも偉いらしい。グラントフィシエという役職だそうだ。この国には3人しかいない騎士の要職らしい。
そして、我が家名はゴアティエというらしい。ということは、僕の名前は、アルチュール・ゴアティエということになるらしい。フュルストという階級らしい。要は侯爵位だそうだ。貴族の中でも上級貴族らしい。生まれ変わったところが金持ちでよかった。
二つ目に、この世界には魔術、魔法、魔導の3種類があるということだ。エルフが魔法、魔族が魔導を使い、エルフの魔法を真似した人間が魔術を使うのだという。違いについては今の段階ではよく分からなかった。
三つ目に、この国は多神教らしい。正確に言うと、10の国が集まって1つの国を為している。連邦国家と考えればわかりやすいのだろうか。その一つ一つの国に神様が祭られているらしい。
なお、魔族には魔族の神がいるらしい。それぞれの神が魔族と人族を作ったらしい。エルフはよく分かっていないそうだ。ちなみに、この国の神はシャダイエルカイというらしい。長い名前なので覚えにくい。
四つ目に、大賢者ミトロファンのことが分かった。ミトロファンの話が僕にとっては一番興味深かった。ミトロファンは僕と同じく右手がないと言われている。この人がエルフの魔法を真似て魔術という仕組みを作ったそうだ。
五つ目に、父と母の馴れ初めである。
「あなたのお父様とはアリストで出会ったの。アリストは勉強をするところよ。私はグラーフの娘でユグドラル様はフュルストの息子だったの。あぁ、グラーフは伯爵位のことよ。それでね、身分差がある恋をしたの。私たちは深く愛し合っていたわ。でも、ユグドラル様のお父様はそれを許さなかった。」
どうやら長い話になりそうである。そうは言っても話を聞くぐらいしかやることがないので、仕方なく耳を傾ける。
「私と結婚するならアリストの学術試験で1位をとれと言われたの。剣術は1位のユグドラル様は、学術は30位ぐらいでとても厳しいものだったの。でも、毎日勉強して2位にまでなったのよ。素晴らしかったわ。あの時は常にフラフラだったわ。」
ほう、父は文武両道らしい。現在の地位から考えてもとても有能なのだろう。
「でも、1位にはなれなかったからユゼニゼフ様、あなたのお祖父様には認めてもらえなかったの。さすがに私は諦めたわ。ユグドラル様は卒業してしまい、私も1年後卒業して実家の領邦に帰ったの。そろそろ行き遅れてしまうからと17の年に次の縁談を探していたの。そうしたら、ユグドラル様が迎えに来てくれたの。ユゼニゼフ様が亡くなられたらしく、家督を継いだから妨げるものはないと迎えに来てくれたのよ。第二婦人の座も覚悟したけれど、私を迎えに来るために結婚しなかったのですって。」
あらあら、あまーい話ですね。何だか胸がこそばゆくなる話である。恋をしたことのない自分からしたらあまり分からないが、家族仲が良いのはこの二人のおかげなのだろう。そう思うと、なんだかほほえましいエピソードに思えてきた。
情報過多になりそうですね。いろいろ詰め込みすぎました。貴族身分の名前だけ書いておきます。
上級貴族→デューク(公爵)、フュルスト(侯爵)
中級貴族→マルクグラーフ(辺境伯)、グラーフ(伯爵)
下級貴族→ヴィコント(子爵)、バロン(男爵)、シュヴァリエ(士爵)
右に行けば行くほど身分が落ちます。細かいことはまた別の機会に。