55.敵の魔族
またしばらく研究&稽古の繰り返しをしていた。最近、ジェーヴォやテンス以外の魔族ともよくしゃべるようになった。一方で人族とはアデルくらいしか話さなくなっていた。アデルは心配なのか僕に何度も話しかけてくる。善意で話しかけてくれてはいるが、「魔族に何かされていないかしら?」などとお門違いな心配をしている。最近は返事をするのが億劫になってきた。
ある日のこと、コルトスターから魔導について教えてもらっていたら、魔族のレヴェリーが飛んできた。
「お頭!例のボーンジェネラルが来ました!」
「わかった。すぐに出よう。」
何やら一大事らしく、魔力をかなり使うらしい次元魔導を使ってどこかに行ってしまった。レヴェリーは僕たちに、「城に入ってろ。出てくるんじゃないぞ!」と忠告してどこかに消えてしまった。
「何があったんだろうな。」
「お、アルも気になるか?儂も気になってしょうがなくてな!」
ジェーヴォ、それは知ってるよ!めちゃくちゃしっぽ振ってるから一目瞭然だよ!と言いたかったが心の中に留めておく。ジェーヴォは尻尾で考えていることがバレるのが恥ずかしいらしい。いちいち指摘してやるのはかわいそうだ。心の中でムフフと思っておけばよい。
「しかし、警備のレヴェリーが出てくるのだ。一大事であろう。私たちが見に行っては邪魔になってしまう。」
「ハハハ、儂もアルも相当な強さだ。なんとかなるだろう!」
そういって城の正門に向かって走り始めた。気になるにはなるので仕方なくついていくことにした。レヴェリーは正門の警備担当なので、お客様?は正門にいるはずだ。しかし、ボーンジェネラルってことはアンデットな魔族なのかな?ジェネラルだし、なんか偉そう。そんなことを考えながらジェーヴォの後を追った。
☆
城の正門が見える位置に待機する。庭の木に隠れながらボーンジェネラルとやらの様子を窺う。
「おい、あれじゃないか?鎧を着た骨だな。おいしそう・・・。」
こそこそとジェーヴォが僕に話しかけてくる。おいしそうって・・・もしかして犬みたいなもんなのだろうか?本能的に骨を齧りたいみたいな?まぁ、想像通りの骨騎士だった。ただ、想像以上に骨がたくさんいる。先頭で騎乗している偉そうなやつがボーンジェネラルだろう。さすが将軍、1000体はいるだろう軍団を引き連れているぞ・・・。
「私にはなんて言ってるかわからないから、ジェーヴォが教えてくれないか?」
「えぇっと、シロヲカイジョウセヨ?チヲナガスコトナクシロヲテニイレタイ?」
なんでか片言である。しかも内容が分からないのか疑問形である。とりあえず、敵襲ってことだよなぁ。これは参加しちゃいけないやつだ。
「よし、行くぞ!」
「えっ!?」
ジェーヴォが僕を引っ張ってコルトスターの元に駆けていく。僕は反応しきれず、引きずられてしまっている。皮が剝けて痛いよ・・・。
「何故、お主らがいる?」「ナゼニンゲンガイル?」
ジェネラルとコルトスターが同時に言った。コルトスターの反応は当然として、ジェネラルは本人が片言だったんだなぁ。ジェーヴォは忠実に真似していたのだなぁ。コルトスターの視線が痛いので別のことを考えておく。
「儂らも戦おうと思って!」
「ホウ、デハコウショウケツレツカ!」
「待て待て、儂はまだ戦うとは・・・ええい、ままよ!」
どうやらジェーヴォは余計なことをしてしまったらしい。死にたくないので僕も参戦だ。骨たちが一斉に武器を構えた。同時にコルトスターが遠吠えをする。後ろからウェアウルフたちが援軍に来た。とはいっても数の差は圧倒的だ。こちらは来た援軍含め20程度、向こうは1000はくだらない。
これ勝てるのかな・・・?
次元魔導はめったに使える人はいません。一回につき体力、魔力ともにたくさん量を使うからです。つまり、人族には使えないのです。もちろん、アルも。