50.拗れた関係
「まず聞きたいのが先ほどのリーダー格の子についてです。なぜ彼はあんなにも魔族を敵対するのでしょうか?」
「あぁ、フリストフォルね。あの子がというよりここにいるみんなが魔族を怖がっていたり、恨んでいるわ。むしろ、あなたは怖くないのかしら?」
むむむ、常識の違いってやつか?それともよっぽど魔力供給がきついのか?どちらにせよ、めんどくさそうだ。
「怖くないかと言ったらうそになりますが、ここにいる魔族の方々は見聞きしていた魔族のイメージとだいぶ違うものでしたから。」
「あぁ、あなたはまだ魔力供給をしていないのね。あれをしたらここでの暮らしを対価に強制労働を強いられてると感じるはずだわ。私なんて魔力量が少ないから毎回死にかけるもの。」
うぇ、それはまずいなぁ・・・。そりゃあ恨むかもなぁ。魔力量の差はあるから僕は余裕かもしれない。あれ、魔力供給以外の時間は何しているんだろう。
「なるほど。これからわかるのですね。そういえば、魔力供給の時間はいつですか?」
「鐘がなったらよ。基本的には1日2回で、魔力が回復しきってない人は休めるわ。」
「どこで行われるかはあとでわかるとして、魔力供給の時間以外はみなさん何をしているのですか?」
「本当に自由ね。城の内部であれば基本自由に使って良いようだし。そうねぇ、私はお庭の手入れをしているのが常かしら。フリストは男の子たちと剣術の稽古をしているわね。ほかには図書室で勉強したりとかかしら。すべては把握できていないけれどそんな感じね。」
ふむふむ、研究したりできそうだ。何より魔族の本を読んでみたいものだ。これはなかなか良い生活だぞ!興奮してきた。何作ろうかなぁ!あれ作ろうかなぁ!・・・おっとっと、考えすぎてはアデルを置いて行ってしまう。他の質問をせねば。
「ご飯はどのように?」
「基本的に食堂があって、そこに魔族の一人がいるから頼めば作ってくれるわ。」
専属料理人がいるのか。魔族なのにそこはいいのだなぁ。なんだかこいつら結構都合の良い奴らじゃないか?
「そこの魔族は怖くないのですか?」
「怖いわ。でも、私たちを養うのですから当然の行いでしょう?」
そういえば、会った子たちは貴族ばかりだったなぁ。温室育ちの子たちにはそんなに簡単に生き方は曲げらられないのだろう。でも、なんだか煮え切らなくてイライラする。魔族に対して作ってくれる感謝もないのかなぁ、とか養ってもらうのは当然なのかなぁ、とか。
「わかりました。親身になって聞いてくださりありがとうございます。」
「いえいえ、気にしないで。あぁ、魔族が住んでいるのは基本東館だから近づいてはダメよ。西館か中央館しか行かない方が身のためよ。」
「ご忠告ありがとうございます。」
なんとなく、なんとなくだけれどここの魔族と人族が拗れているのが分かった。それに原因だと思うこともなんとなく思いついた。これはこの拗れを直したらいいのだろうか。僕は確実にジェーヴォの方が仲良くなれそうだから魔族と仲良くなるだろう。その時に人族からヘイトを貯めるのはいただけない。これはめんどくさそうだなぁ。
自分の部屋に戻っていくアデルを見ながらそんなことを考えていた。
リーダー格の青髪の少年はフリストフォルというそうです。