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魔道体系学の祖  作者: 五反田鐡ノ進
第2章 奴隷時代の憂鬱
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48.他の子

 

 話し合いの後、適当に歩いていればだれかに会うだろうとのことで城を散策していた。魔族というからもっと荒々しい住居を想像していたが、美しい建築様式だし、高いツボとかまで置いてある。さらには、城の隅々まで手入れされており、人間の城となんら変わりないことがわかった。とは言っても、人間の城に生まれ変わってから行ったことがないが。


 広大な敷地だが、ちらほらと人の姿が見えた。ただ、話しかけようとしてもいそいそと離れてどこかに行ってしまう。なんだか嫌な雰囲気だなぁ、と思っていたら壁に飾ってある絵画が目に留まった。美しい女性が描かれており、魅入ってしまうほどであった。絵画とかあまり興味はなかったはずなんだけど、なんだか心奪われる。


「その絵画はデルフィナ様のもんだ。お前がこれに魅入ってもだめだかんな。」


 後ろから声をかけられたので振り向いてみると、僕と同じくらいの少年がいた。ただし、尻尾があるからウェアウルフなのだろう。ここは下手に出ておこう。


「すみません、美しすぎてつい魅入ってしまいました。私はアルチュールといいます。本日ここに来ました。差支えなければ貴方様のお名前をお教えいただいてもよろしいでしょうか?」


 気を付けながら丁寧に言葉を発した。すると、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。


「お前、俺が魔族だってわかっててその言葉遣いなのか?」

「はい。失礼だったでしょうか?」

「いや、うーん・・・儂はお前のこと気に入ったぞ!儂はジェヴォーダンだ!もっと言葉を砕いてよいから普通に話してくれ!」


 なんとなーくだけれど、この子は素直そうで仲良くなれそうだ。何より尻尾がフリフリしている。犬が喜ぶ時のそれと似ている。しかし、ウェアウルフの主語は「儂」を使うのだろうか?


「では、砕けて話すね。ひとつ質問なんだけど、もしかしてコルトスター様を真似して儂と言っているかな?」

「な、なぜわかったのだぁぁぁ!!」


 すごくオーバーリアクション!なんだかかわいらしい。ウェアウルフの、ではなくてコルトスターとジェヴォーダンが特殊なようだ。


「あぁ、そうだ!親しい者たちはジェーヴォと呼んでくれる。アルチュールもそう呼んでくれ!」

「私もアルチュールではなく親しいものにはアルと呼んでほしい。どうだろうか、ジェーヴォ。」

「あっ!・・・もちろんそう呼ぶぞ!!」


 うれしくて悶絶している。この世界に来てからこんなに純粋に笑うやつを初めて見たかもしれない。あ、でも僕を初めて見たユースの顔にも似ているか。ユースは元気だろうか・・・。


「ところで、私たち人族が住む居住区はどこなんだ?初めてだからまったくわからなくて。」

「あぁ、それならこの先を右に曲がってまっすぐ歩き続けると着くぞ・・・。」


 少し顔色が暗くなった。何か後ろめたいことでもあるんだろうか?・・・もしかすると、さっきの質問や今の表情からして人族と仲が悪いのだろうか?


「私は用事を終えていなかったから戻る!また会おう!」


 それだけ言って走り去っていってしまった。走る速度がすごく早い。僕並みに早い。あれ、僕がおかしいのか。まぁ、とりあえず、魔族と人族の間に何かありそうだ。


鬱展開続きだったんでこういう話を書いていると少し和みますね。

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