46. 尻尾
しばらくは檻の中で暮らしていた。与えられる餌はパンくずのようなものでまったくお腹が満たされない。今まで幸せだったのだなぁ、と感じながら家族との思い出を思い出す。もう涙も流れなくなっていた。虚しさだけが心を巣食う。こんな時に考えることといったらそれぐらいだった。余裕なんてなくて研究のことはどっかに飛んでいた。前世では考えられないことだが。
ある日、奴隷商にまた呼び出された。
「お前に買い手がついてな。どちらも大金を積んでくれたものだから迷っているのだ。」
ニヤニヤしながらどうでもいいことを説明する。誰に売られてもドラ○エⅤみたいな人生が待っているのだ。この際、主人になるやつらのことなどどうでもいい。
「今日中にお前はどちらかに売られるから、買い取り手の様子を見ておけ。すでに二組がお前を巡って話し合っている。」
別の部屋に移動させられた。中にはローブを来た中年の男性と、尻尾をはやした細身の男性がいた。中年の方はゲス顔だが、尻尾の男性の方はなかなかの美形である。どちらの後ろにもボディーガードがいる。
「こちらにおられるのはミトロファン様の生まれ変わりの方です。我々がお救いするべきなのです。」
中年の方がわめく。どうやらミトロファン信者らしい。なんだ、薬漬けコースに行く可能性がまだあったんだなぁ。きついがもうどうでもいいか。
「そんなことは知らん。こやつは儂が買い取る。潤沢な魔力を持つ者が今は一人でも欲しい。」
こちらの美形は魔力目当てらしい。これは搾り取られて死ぬエンドだなぁ。どっちにせよろくでもない選択肢しかないなぁ。
「魔族にはミトロファン様の素晴らしさなぞ、わからぬでしょうな!」
「ふん、脆弱な人族が何を言うか。おい、奴隷商!儂はさらに金を積もう!」
「なんと!こちらもまだまだ出しますよ!」
すごい価格なようで奴隷商のニヤニヤが止まらない。
「どちら様もお金を釣り上げられては私には判断できませんよ。」
「ならば、本人に決めさせればいいだろう。儂らのところでは人並みの生活が送れることを約束しよう。衣食住は完備だ。さらに元貴族な人族の奴隷が他にもいる。どうだ?」
「なりません!私共のところへ来るのです。魔族の3倍は良い待遇をしましょう。私はあなたを神として崇め奉りますから!」
うーむ、まさかの選択肢だ。これは希望があると喜ぶべきなのか。どう考えても魔族に行くべきだろう。中年の方は嘘をついてはいないが、薬漬けにされること間違いなしだ。
「どちらにする?話せ。」
「私はこちらの方について行きたいです。」
「では、コルトスター様がお買い上げということで。」
僕の主人が決まった。
ドラ○エⅤの設定好きですね。一番やりこんだのはⅣですが。