44.8. 僕なりの友情
僕はケルヴィン。アリストに通う平民だ。最近、大きな政変があり、この国のマジェステが変わった。マジェステを暗殺したとされるアル様のお父様は処刑されたそうだ。一族もほぼ処刑か投獄されたそうだ。アル様とお兄様のユース様だけが行方不明らしい。とても心配だ。そういえば、セレス様も行方不明らしい。アリストには来ていない。今は魔術の授業なはずだが、3人しかいない。元々は5人なのに。
「アルとセレスはどこに行ってしまったのだろうな・・・。」
「二人ともお強い方ですからどこかで生きていますよ~。」
「・・・。」
沈黙が空気をさらに重くする。フランシスカ様は大きな隈ができていた。オルフェ様も僕も寝不足だが、あそこまでではない。今にも死んでしまいそうなお顔である。
「とりあえず、僕たちにできることはアル様とセレス様の帰りを待つことだけです~・・・。僕は研究を完成させて二人の帰りを待とうと思います。」
「そうだな・・・。それに加えて、私はもっと強くなっておくよ。次はアルを守れるように・・・。」
「わ、私も・・・。」
カラカラの声でフランシスカ様が言う。3人で2人の学友を待つことにした。僕は空いた席を見つめながらため息をついた。
☆
数日間は皆口が重く、暗い雰囲気だったが待つために明るくせねばと気持ちを切り替えていった。フランシスカ様もオルフェ様もとても強い瞳になっていた。隈は消えていた。僕は学術、魔術の本を読み漁った。アルさまが残した研究ノートも読みまくった。何回も読んだせいか1文字も漏らさず覚えてしまったほどである。
アル様が残してくれたノートを元にいろいろな魔術具を作る。アル様が帰ってきた時に喜ばせたい。その一心でひたすら研究した。オルフェ様は休日に必ずアル様の手がかりを探しているようだ。フランシスカ様はひたすら鍛錬を積んでいるらしい。皆がそれぞれ頑張っていた。
ある時、オルフェ様がこんな話をし出した。
「私はもし何年経ってもアルもセレスも帰ってこなかったら探しに行こうと思うのだ。どうにもただ待っているのが辛くてな。今は力が足りないからいづれではあるが・・・。」
「わ、私もい、行きます!」
「僕も~!」
「いや、その際に待っている人がいなければ困るだろう。それにフランシスカまで身分を落とすことはない。」
家出しなければ未成年が探しになど行けない。それはつまり身分を旅人に落とすことであり、貴族ですらなくなるのだ。
「か、覚悟は、あ、あります。」
「ケルヴィンを守る貴族がいなくなってしまうではないか。」
「僕は・・・それなら待ちます~。足手まといになりますし、研究していた方がアル様は喜びそうですから~・・・。」
「・・・研究を手伝います。」
フランシスカ様はなんとか引き下がってくれた。オルフェ様の覚悟はとてつもない。とても真似できないようなことをする。しかし、僕は僕なりに2人を待っていようと思う。それが僕なりの友情である。
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