41.死神の足音・前編
目覚めたのは次の日だった。その日はアリストを欠席することにした。従者のファーレも一緒に欠席である。気絶した後の話をいろいろ聞かせてもらった。みんなクタクタで気絶している人を運べなかったので騎士団に救援信号を出したそうだ。お父様の部隊が来たらしく大事にはならなかったらしい。
そういえば、ムガル以外の素材はそろったなぁ。次の魔術の時間には組み立て始めよう。そんなことを考えながらその日は本を読みながらごろごろしていた。
次の日、ラーム侯爵が死んでしまったと連絡を受けた。持病の悪化が原因らしいが、オルフェによるとそれも怪しいらしい。セレスはその日、当然アリストを欠席していた。故人を悼む時間が必要だろう。さすがに真相がどうだったか聞くわけにもいかない。そういえば、この世界の葬式は親族のみで行うらしい。葬式の日には黒の服を、次の日には故人を送り出したことを証明する白の服を着て普段の生活を行うとのことである。明日には会えるだろう。
不謹慎な考え方かもしれないが、ラーム侯爵が暗殺されたのだとすると次はお父様や自分が危ないような気がしてきた。その日のうちに決まった次期グランクロワはコルルベイン公爵だそうだ。暗殺の線が濃厚だろう。その話をするためにお父様が僕とユースを呼んだ。
「二人ともよく来てくれた。今日は家族で話し合わねばならぬことがある。」
部屋に入ってみるとお母様もいた。お父様の横で険しい顔をしてる。お父様は疲れた様子だが、それを画そうとやわらかい表情をしている。ユースと共にお父様の向かいに座ると話し始めた。
「おそらく知っているだろうが、ラーム侯爵が暗殺された。実行犯は捕まったが、表向き持病の悪化になっている。実行犯はメリル子爵だ。毒を使ったらしい。」
「え?ラーム侯爵がどこの馬の骨かもわからぬ者に殺されたのですか?あのお強いラーム侯爵が・・・?」
僕もユースと同じことを考えていた。あのパワフルおじいさんが毒で死ぬとは思えないし、それを察知できないはずがない。
「メリル子爵は第二王子派、つまり味方だったものなのだ。話している最中に毒針を飛ばしたそうだ。ラーム公爵もただではやられず、メリル子爵を捻り潰したそうだ。持病持ちだったのは本当で、それを悪化させる毒針だったのだ。数時間後、息を引き取ったそうだ。」
なんとも言えない気持ちになる。一度しかお会いしたことはないが、セレスの祖父であるし、何よりいい人だと感じていた。ここでの政治とはそういうものなのかもしれないが、理不尽な死に少し怒りを感じる。加えて、突然の死に呆然としてしまう。死がすぐ近くに忍び寄っているのだ。
「つまり、次は我々ということですか?次のグランクロワはコルルベイン公爵ですよね?」
「そうだ。敵方が完全に動き出した。間違いなく私たちが次は狙われる。」
「どのように対処いたしましょう?」
「そうだな・・・。」
お父様が苦しそうな顔をして言い淀んだ。
突然のシリアス展開です。家族会議はまだ続きます。2話連続投稿です。