37.5. いつもの風景
僕はケルヴィン。最近の悩みは学友の皆さんは身長がグングン伸びているけれど、僕はあまり伸びていないことだ。
今日はアル様のお誕生日パーティーをするとのことでセレス様のおうちに呼ばれている。平民だけれどアリストに通っているおかげでお貴族様とお友達になれているのだ。
セレス様の家はとても大きい。特に庭が素敵でたくさんのバラが咲いている。お庭の中の一角でパーティーをすることになった。
「みんなありがとう。サプライズではないんだね。」
「サプライズで相手に都合を押し付けるのは失礼だろう。だから何日か前に招待状を出したんだ。」
「僕にまで招待状をくださりありがとうございます~。」
「当たり前でしょ!ケルヴィンも仲間なんだから。」
ツンとしながらセレス様言った。その言葉に胸が熱くなる。セレス様はなかなか素直にものを言わない。しかし、使用人と変わらない僕に対してはストレートにものを言ってくれる。
「ありがとうございます~。うれしいですよ~。」
「わ、わ、わたしもケ、ケルヴィンは仲間だと思っていまふよ。」
大事なところで噛むあたりさすがフランシスカ様である。とてもうれしい。しかし、誕生日の主賓である方を差し置いてこう言われていいのだろうか?
「今日はアル様の誕生日ですからね~。僕のことはもういいですよ~。」
「そうだな。アル、おめでとう。」
オルフェ様はうまくとりなしてくれる。オルフェ様は僕の憧れである。初めて会ったときにほかのお貴族様にいびられているところお救いしていただいたことがある。
「お、おお、おおおおお・・・。」
「落ち着け、フランシスカ。」
「おめ、おめ、おめでとうござざ、ざいまぬ!」
笑いがドッと巻き起こる。僕の感だが、フランシスカ様はアル様のことが好きだ。いつもアル様と話す時には他の人の時の三倍以上つっかえて噛む。それぞれが口々に祝いの句を述べる。
「アル様、おめでとうございます~。これからもどうかお付き合いください~。」
「あぁ、ありがとう!ケルヴィンは研究所ができた暁には要職に就いてもらうからなぁ!」
とてもうれしそうだが、研究所がいかなるところか想像つかない。アル様のことだからまた突拍子もないことなのだろう。と、ラーム侯爵がやってきた。ラーム侯爵は現在のグラントロワだ。たくましい筋肉に鋭い目つき、なのにやわらかい表情のおじいさんだ。
「やぁ、アルチュール君。君にあってみたかったのだよ。」
「お会いできて光栄です。フュルスト・ラーム。私も会ってみたいと思っていました。」
アル様の誠実な双眸がラーム侯爵を見つめる。対してラーム侯爵も返すように見つめる。
「ガハハ、私と睨みあえる人間はそうそういない!気に入った!セレスを嫁にやろう!」
「「「えぇぇ!!」」」
至る所から声が聞こえた。僕としては見ていて楽しい。
「お祖父さま、私より弱い男の嫁は嫌です!それに勝手に決められては困ります!」
「私にはセレスの面倒を見れる自信がありません。」
「なんであんたに面倒みられなきゃならないのよ!」
ちなみに、横でフランシスカ様は放心状態である。いや、立ったまま気絶している?オルフェ様は一生懸命笑いを堪えていた。オルフェ様はアル様と女の子が絡む話でいつも笑いを堪えている。
「ガハハ、ならば勝負すればいい!」
「やってやるわ!」
「ええぇぇ・・・。」
アル様は完全にやる気がない。結局、アル様はよく分からない手段でセレス様に勝ってしまった。わざと負けることはしないようだ。
「きぃぃぃ!!なんであんたに負けるのよ!!いいわ、約束は約束。嫁にでもなんでもなってあげるわ!!!」
「ちょ・・・。」
「ガハハ、婿に来てもいいんだぞ。とりあえず、ユグドラルに伝えておこう。」
拒否権はないようである。フランシスカ様がとうとうお倒れになった。パーティーはお開きになった。
なんとなくケルヴィン視点を描きました。心の中でまで「~」をつけたりしません。