31.オルフェのフォロー
次の日、午前中が学術の日だったのでアリストへは行かずにディッテンを作り、余った時間で本を読んでいた。本のタイトルは『魔術具大全』である。魔術具の作り方からその出来るまでの歴史、作った人物などが載せられていた。最初の方のページは魔術の授業で習いそうなのでパラパラと呼んでいく。真ん中らへんからしっかり読み込んでいく。後半になるとミトロファンが作った魔術具が載せられていた。しかし、ミトロファンの魔術具がほとんど使い方と挿絵しかなく、使い方は載っていなかった。門外不出の魔術具だったのだろうか?
とりあえず、『魔術具大全』の中から身を守るのに使えそうなものをメモしておく。プラスでメタンに使えそうな魔術具もメモしておいた。お昼になり、午前中の授業を終えたファーレが迎えに来る。
「アルチュール様、お迎えに参りました。」
「すまんな。私も朝一緒にアリストに向かったほうがいいのだろうか?」
「そうしていただけると助かりますが、行く宛はあるのでしょうか?」
「あぁ、家の本をすべて読み終えてしまったから、図書室に行こうと思っている。」
「それならば大丈夫そうですね。」
そう言いながら身支度をし、一緒に屋敷を出る。アリストに着くとなぜかワルーイが腕を組んで待っていた。その周りには子分みたいな輩が3人いた。
「おい、お前はメタンを壊してなぜ罪に問われないのだ?ズルでもして隠匿したのか?」
にやにやしながら言葉を投げかけてくる。もちろん無視である。沈黙は金なり。
「お前は話す言葉もないのか?右手だけでなく脳にも障害があるのだな!」
子分らと笑いながらからかってくる。無視してファーレと共に横を通り過ぎる。子分らの一人が言葉を重ねる。
「従者も見てみろ!言葉がしゃべれないようだぜ!」
ちょっとイラッとした。横でファーレが何も感じないといった表情でなければ攻撃していたかもしれない。なんとかやり返してやりたいが、立場を悪くするわけにもいかない。
「今日の体術の時間は集団戦だ!あいつをぼこぼこにしてやろう!」
にやにやしながらワルーイが僕を指さす。すると、どこからともなくオルフェが現れた。
「私の友をぼこぼこにするのかい?彼と戦おうだなんて10年早い。代わりといっては何だが、私が相手をしよう。」
ニコニコしながらオルフェがワルーイに返答する。対してワルーイはなぜか青ざめている。正直、オルフェが引き受けてくれて助かった。
「お、おい、お前は関係ないだろう!中立派閥を崩すつもりか?」
「何のことかな?私は彼と個人的な仲だ。家は関係ない。それにアリストに政治を持ち込むのはご法度だろう?」
ワルーイが「ぐぬぬ。」と唸っている。やーい、いい気味だ!ファーレと顔を見合わせて笑いあう。ファーレが味方でよかったと思った。
次は集団戦です。ファーレは1組ではないので、オルフェとアルがワルーイと戦います。