25.心強い味方
家について応接間へと案内する。ケルヴィンとフランシスカはキョドっている。フランシスカはいつも通りであるのだろうが、ケルヴィンは貴族の館で落ち着かないのであろう。
「ケルヴィン、緊張せずに我が家だと思ってくれていいぞ。」
「あ~、それは助かります~。無作法がありましたらご指摘ください。」
「私がバシバシ指摘してあげるわ!」
「そ、それはどうも~・・・。」
ちょっとケルヴィンが引き気味である。さっそくセレスはお茶を飲むケルヴィンの作法を注意していた。僕は気にしないけどなぁ。
「これから彼は貴族の中で生きていかなきゃならない。だからセレスぐらいはっきり言ってくれる人の方が彼のためになるかもしれないよ。」
考えを読んだかのようにオルフェが話しかけてきた。なるほど、そういう考えもあるのか。
「では、みんな。お茶も飲んだことだし、アルの話を聞こう。」
それから少しの間、自分の立ち位置について話した。自分が政争の火種であること、ミトロファン関連などなど。みんなそれぞれ思い思いの顔をして聞いていた。
「・・・ということだからみんな私の味方になってくれないか?」
「わ、わわ、私でよければ・・・。」
「私はお父様からあんたの味方するように言われてるから。」
「僕は平民だからよくわからないのですが、アル様を尊敬しているので頑張りますね~。」
「わわわわわ私も、そそそそそっ、尊敬してまひゅ・・・。」
あっ、噛んだ。フランシスカの顔が真っ赤になった。耳まで赤い。ケルヴィンもフランシスカもうれしいことを言ってくれる。セレスはまぁ予想通りだ。オルフェだけ考えている。
「あんたはどうすんの?」
「私は・・・。」
また、黙ってしまった。どうやら彼にも彼なりの事情があるようだ。
「今日言ったことを黙っていてくれれば無理に仲間になってくれなくてもいいよ。」
「違う。そうじゃないんだ。私の父は今どちらかというと第一王子派なのだ。中立だが最近よくそっちの派閥とよくいるのだ。」
「そうか・・・。それは仕方ないな。」
「なぁ、アル、個人的には君を助けたい。だから、もし政争の際に私が父を裏切ったら、君の家で匿ってくれるかい?」
すごい覚悟である。まだ対して知りもしない相手にここまで頼むのはなぜだろうか。
「なんで君は実の父親より私を優先できるんだい?」
「簡単に言うと父のことを憎んでいるのだ。母を捨てたというのが理由さ。」
うーん、思ったよりも根深そうな話だぞ?どうしたらいいんだろうか。
「あんたが男爵まで地位を落とす覚悟があるなら私は別に仲間になってあげてもいいと思うわ。」
セレスが言ったように、保護者のいない子は没落貴族扱いになることが多い。その場合の位は男爵である。しかも、父がいるのに保護者がいなくなるということはほぼ将来要職に就けなくなることと同義だ。優秀な彼が自分の人生を棒に振るのは好ましくない。
「やっぱりやめたほうが・・・。」
「君に仕えるのも吝かではない。私は君が英雄になる気がするからだ。地位よりも仕える人の選択権の方が私はほしい。」
ここまで言われて断るのもなんだか申し訳ない。しかも、優秀な人にほめられうれしい。
「わかった。何かあったときは運命を共にしよう。」
「ありがとう。君が受けてくれてうれしいよ。」
「まぁ、私も死ぬときは一緒になりそうね。」
笑いながらセレスが言う。笑っている方がかわいい。眉間にしわを寄せるのはやめて笑う癖をつけてほしいものだ。
「わ、わ、私も一緒に死にます!」
「それは違うだろう。」
フランシスカが頑張って変なことを言うものだからつい突っ込んでしまった。赤くなっているフランシスカを見てみんなが笑った。
イケメンリア充なオルフェヴル、じゃじゃ馬ツンデレなセレスティア、マイペース平民ケルヴィン、気弱な天然フランシスカ、そして、天才問題児アルチュールというメンバー構成になります。ファーレは輪に入れないのを悔しがっています。