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魔道体系学の祖  作者: 五反田鐡ノ進
第1章 幼少期の思い出
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22.お父様のお叱り・中編

 

「エシェルトリア先生に改案を言っただけです。マジェステに直接言うことなどしません。」

「いや、それはそうだろう。直接話す機会などないだろうからな。ん?エシェルトリア?エシェルトリア・フランシスか?」

「そうです。お知合いですか?」

「私たちの学友よ。私たちの世代で学術、魔術ともに1位だった天才よ。あぁ、もちろん、剣術の1位はお父様よ。」


 お母様はこんな時にものろけを入れてくる。ここまで愛しているならもはや見ていてうらやましいぐらいだ。なるほど、やはり知り合いだったか。照れているのかお父様がわざとらしく咳をする。


「それより、他に何か問題は起こしていないか?あぁ、でも、アルの問題意識のなさは折り紙付きであった。何が問題かわからないからここ数日のことをすべて話しなさい。」


 問題意識が希薄なのは薄々気づいていたが、どうしようにもないので放置していた。とりあえず、ここ数日のことを洗いざらい話した。両親は吐きそうなくらい真っ青な顔をしていた。話し終えても返答することはなく、二人はしばらく沈黙していた。


「・・・なんと言おうか。まず、全クラス1組なのはおめでとう。本当なら喜びたいところだが、叱らねばならないことがたくさんあるからな。」


 お父様が重い口を開きそう言った。お母様は隣で硬い表情をしている。


「まず、ザダンカイ侯爵についてだ。ザダンカイ侯爵が我が家と敵対関係にあるのは知っているかな?」

「はい、なんとなく。」

「聡明なアルにだからこそ話すが、次のマジェステ候補について、我が家は第二王子派、ザダンカイ侯爵家は第一王子派で対立しているのだ。今のマジェステは先代の若いマジェステが暗殺され、急遽戴冠なされた。とてもお年を召しており、いつ天に召されるかわからないのだ。だから、現在時期対立が激化しているのだ。そう、彼らは政敵なのだ。その息子同士が敵対するのは致し方ないことだ。しかし、ザダンカイ侯爵は黒い噂が絶えない。敵対する勢力をどんな手を使ってでも蹴落とすだろう。その際に、アルが狙われる可能性があるのだよ。」


 思ってもみなかった。ただのくそ親父とくそ息子だと思っていたが、ここもで根深い問題だとは・・・。やっぱり無視しておいてよかった。これ以上殴っていたら難癖つけられていたかもしれない。


「すみません。知らずに軽率な行動をいくつもとっていました。」

「いや、知らせなかった私たちも悪い。この機会に伝えられてむしろ良かったのかもしれないな。アリスト内に大人は介入できない。つまり、それは私たちが守れないということなのだ。しかし、ザダンカイは黒い手段を使ってアルを暗殺するかもしれない。なにせマジェステの目に留まる優秀な子だからな。今のうちに芽を潰しておきたいと思うかもしれない。」


 なるほど。死の危険がこれほど近くにあるとは思わなかった。やはり悪目立ちは良くないのだなぁ。出る杭は打たれる。お父様たちに迷惑かけるのも申し訳ない。


「まだ叱らなければならないことがある。私たちもアルの魔力量がそんなにあるとは知らなかったが、普通、メタンを壊したら死刑だ。あれは学園が年に一度借りている王の魔術具なのだ。」


 ぐぇぇぇ!死の危険と隣り合わせすぎる。気づかず呑気に生活していた自分を殴りたい。


「すみません。もう謝っても謝りきれないくらいです。」

「まだ、まだなんだ。まだ懸念しなければならないことがあるのだ。」


 もう勘弁してください。死の危険はもうお腹いっぱいです。そりゃあ二人とも死人のように青ざめるわ。僕も今は自然と顔が青ざめているのだろう。


「ミトロファン信仰の過激派がアルのことを知ったら是が非でもまたさらいに来るだろう。共通点が多すぎるのだ。しかも、ミトロファンの魔術具を改良した日には崇め奉られるだろう。」

「しかし、今私を誘拐しても、言うことに背かなければいいのではないですか?ミトロファンの生まれ変わりならば殺されはしないでしょうし。」

「世の中には知らなくて良いことが多くある。が、これもまたあえて伝えよう。自我を抜き取り洗脳させるような薬物が存在するのだ。遅効性で長い期間かけて洗脳するわけだが、もし捕まったらそれを使われ元のアルではいられなくなるだろう。」


 そうか。この世界もキレイごとだけでは生きていけないのか。家族や周りの人々の優しさに触れ、キレイな世界しか見てこなかったのだろう。研究だけしてれば良いわけがない。のっぴきならない現実に打ちひしがれる。お父様、お母様ごめんなさい。


お父様が1位を取れなかったのはエシェルトリアのせいだったようです。

本日も3話連続投稿です。

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