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魔道体系学の祖  作者: 五反田鐡ノ進
第1章 幼少期の思い出
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13.入学式・前編

 

 春になった。アリストへの入学である。入学試験があるのだけれど、僕にとってみれば余裕であった。そのせいで、入学主席という座をいただき、入学式では発表をすることになってしまった。お父様もお母様も見に来るらしい。両親は相も変わらず僕にデレデレだ。家の玄関で服装の最終チェックをされる。


「アル、あなたなら立派にやり遂げられるはずよ。」

「そうだな。何せ主席卒業の父さんの息子だからな。」

「そうね。あなたの息子ですからね。」


 すご-くプレッシャーをかけてくる。これでも緊張に弱いのだ。やめてほしい。朝からいちゃつく両親を尻目にそばに控えているファーレの方に近づく。ファーレも入学なので正装をしている。


「ファーレ、私は緊張してきた。お父様もお母様もプレッシャーをかけてくるのだ。」

「それは期待しているからですよ。なに、アルチュール様なら大丈夫です。」

「ファーレまでプレッシャーをかけるのか・・・。」


 ニコリとして一歩下がる。兄のユースが来たからだ。


「やぁ、アル、おはよう。」

「おはようございます。」

「主席なんだろう。もっとピシッとしなければだぞ。」

「お兄様にまでプレッシャーをかけられるとは・・・。」

「アルチュ-ル様、こちらの飴をなめると緊張がほぐれますよ。アルチュ-ル様が緊張しているだろうからと母が持たせてくれました。」


 ディリオスが小さな飴を渡してきた。渡された飴をなめてみる。柑橘系の味付けで、すーっとした感じもする。のど飴みたいだ。ディリオスもラトハルラもありがとう!!


「ありがとう、ディリオス。」

「いえいえ、今度母に礼を伝えてあげてください。」

「さぁ、アル、そろそろ行くぞ。」


 お父様に呼ばれたのでそちらの方に行く。出発の時間のようだ。


 屋敷を出て大通りに出る。この家からアリストはなかなか近い。大通りを歩いていると途中、自分たちと同じくらいの人を連れた一団を見つけた。その一団を見てお父様が目を細める。太い男性がその一団からこちらへやってくる。


「やぁ、ゴアティエ侯爵。」

「ザダンカイ侯爵ではないですか。今日はそちらも息子さんの入学ですか。」


 どうやら政敵のザダンカイ侯爵の一団らしい。父と同じ騎士団のグラントフィシエであるらしいのだが、なかなかお腹が出張っている。なんだかたぬきみたいだ。


「トレゾールのお坊ちゃんは神童と呼ばれているそうですが、うちの子もなかなかやりますぞ。紹介します。息子のワルーイです。」

「ワルーイです。ゴアティエ侯爵のことは父からよく聞いております。以後お見知りおきを。」


 ワルーイだって!笑ってしまう名前だ。フルネームは悪ーい座談会かな?あ、僕をすごくギラギラした目で見ている。赤い髪に灰色の瞳、挑戦的な目つきで僕の苦手なタイプだ。


「こちらが私の息子のアルチュールだ。」

「ザダンカイ侯爵、初めまして。今後お世話になることがあるかと存じますが、よろしくお願い申し上げます。」

「ほう。とても行き届いた教育をなされているのですな。」


 ザダンカイ侯爵はいやらしい笑みをしながらこちらを見つめる。お父様は困った顔である。


「その右手では家督を継げないでしょう。トレゾールの子を持つのも大変ですな。」

「いえいえ、兄のほうが家督を継ぎますから。この子はそれ以外のところで才能を発揮すればよいのです。」


 お父様の目が少し怒っている。表情は笑っているのでギャップがおそろしい。これが貴族の社交というものなのだろうか。めんどくさいぞ。


「では、主席のお言葉を楽しみにしております。遅れてしまうのは困るのでこれにて失礼いたします。」


 ワルーイがこちらをキッとにらんだ後、先を歩くザダンカイ侯爵についていく。お父様もお母様も苦い顔をしていた。僕もなんだか入学式の日だってのにあまりいい気分にはなれなかった。



ザダンカイ父の名前はゲースです。ゲース・ザダンカイです。

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