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魔道体系学の祖  作者: 五反田鐡ノ進
第1章 幼少期の思い出
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12.アルのお仕え

 

 自室に戻ったら、従者のファーレが待っていた。3歳になると上級貴族には下級貴族の男爵家の同性の子がつけられるらしい。男爵はバロンと呼ばれる。このファーレも男爵家の子息である。


「おかえりなさいませ。汗を流す準備ができています。」

「ありがとう。」


 ファーレはできる男の子だ。というか、男爵家はほとんどが騎士職かお仕えとして働くらしい。お仕えは若いころから訓練されるらしく、とても同い年とは思えないくらい仕事ができる。


 ファーレは僕と気が合うように選ばれたらしく、本を読むのが好きである。兄の従者であるディリオスは正確に合わせてか体育会系だ。ファーレは見た目女の子みたいである。美形な男の子で、色白である。髪はオレンジでサラサラしている。いい子がお仕えに来てくれたなぁ。


 そうそう、そろそろ僕もアリストに入学する。まだ4歳だが5歳の学年なのでこの春から入学することになっている。研究三昧になれるかもと期待を膨らましている。すでにアリスト初等部の勉学はすべてできる。ユースが驚いていたなぁ。


「アルチュール様、そろそろ上がらないとのぼせますよ。」

「は~い。」


 湯船につかりながらいろいろ考えていたら注意されてしまった。考え込んで一回風呂で気を失ったことがあったからなぁ。体をふきながらまたいろいろ考える。お仕えと言っても身辺のすべてをやってもらうわけではない。さすがに服を着たり、タオルで自分の体を拭いたりはやってもらわない。


「アルチュール様、お召し物をこちらに置いておきますね。」

「んー。」

「また何か考え込まれていませんか?次は私に算術を教えてくださるのでしょう?」

「あぁ、すまんすまん。」


 せっかちなのか追い立ててくる。いや僕が考え込みすぎたのだろう。新しい服に着替えて書室に行く。そこには二つの机が並んでおり、一緒に勉強できるようになっている。


「さぁ、今日は『かけ算』だ。」

「『かけ算』ですか?」

「あぁ、すまん。かけ算だ。」

「なるほど。かけ算のことですね!時々、アルチュ-ル様はよくわからない単語を話されますから困ります。」


 日本語で言うと通じないのだ。こちらの言葉で何というか考えなければならない。日本語の『かけ算』はこちらの世界でのかけ算に言い直さなければならない。そのためにこの世界の辞書を丸暗記しておいた。あぁ、大学受験のときも辞書を何冊か丸暗記したなぁ。


「さて、かけ算とは・・・。」


 一時間ほどのかけ算の講義を始めた。ファーレは4歳児とは思えないくらい優秀なため、あっちの世界でいうと小学校低学年くらいまでは習得している。優秀だと言うとファーレは怒るので言わないが。どうやら僕が頭がいい(というか転生したからだけれど)からそれに追いつこうと必死なのだ。一生懸命なファーレはキラキラしている。なんだか転生してから周りの人に恵まれている気がする。


「さて、今日はここまでにしよう。」

「はい。ありがとうございました。」

「ファーレは将来有望だな。何かなりたい職はあるのか?」


 僕がそう言うとファーレがぽかんとした。


「えっ、私は解雇されるのでしょうか・・・?」

「えっ、そんなことはしないぞ。ただの興味本位だよ。」


 どうやら一生僕に使える気であるらしい。うれしい反面、研究しかしなさそうな僕についてきて大丈夫なのだろうか。貴族らしい貴族にはなれないと思うし。


「私は『研究者』になる。その、だから、ずっとついてきてくれるのか?」

「『研究者』とはなんですか?また変な単語を使うのですね。」

「あ、すまぬ。研究者だ。」

「あぁ、研究者ですね。わかりきっていることを聞いてはいけませんよ。アルチュール様がそういったことに興味をお持ちなのはよく知っていますから。大丈夫です。何があっても一生お仕えしますよ。」


 ニコリとファーレは笑う。なんだろう、このけなげな生物は。前世では友達と呼べる人が少なかったが、今世では友達どころか親友ができそうだ。まぁ、上下関係あるけど。ファーレも大切な人リストに入れておこう。


大切な人リストには、家族と乳母であるラトハルラ、ユースの従者であるディリオス、そして、お仕えのファーレが入っています。

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