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第8話 撫でるは金城、麺吹くは向日葵、思いつくは久土

「二人で行きたかったけどやっぱり断られちゃった。僕も柊木さんとお食事に行きたいお~!」


 嘆く麺太がテーブル席に座る。うどん屋を紹介したんだから昼飯奢れと執拗に迫られた俺は仕方なく麺太と一緒に食堂へ来た。俺はおにぎりセットを、麺太はラーメンとうどんとソバを頼んだ。頼みすぎだろお前ぇ。俺の財布に結構なダメージ!

 麺太がラーメンを啜ってうどんを啜ってソバを啜る。順に啜っていきなんとまあ器用なことで。というかキモイ。


「あんなにも可愛い女の子と仲が良い直弥が羨ましいよ。この幸せ者」

「別にただの幼馴染だっての」

「はい、今あなたは全国の男子生徒に喧嘩を売った」


 憤慨しましたわよ!と言わんばかりに鼻息を荒くしてうどんとソバを同時に啜る麺太。箸を二膳、両手を使って同時に食べるだなんてまあ器用なことで。つーかやっぱキモイわな。


「直弥はアニメを観たことがないのかい?」

「ラピュタ大好きだぞ」

「それ観るのは日本人の義務だから」


 え、義務なの? 教育、勤労、納税、ラピュタの四大義務だっけ?


「とにかくだ! アニメで観れば分かる通り、幼馴染ってのは偉大なんだよ! どこに行くのも何をするのも常に一緒、互いのことは手に取るように分かって小さい頃には『大きくなったら結婚しようねっ』と約束して……くぅ~! たまらんぜよ!」


 力説どうも。俺はおにぎりを一口頬張ってモシャモシャと咀嚼してぼんやり過去の記憶を辿る。

 結婚の約束ねぇ……した覚えが全くない。自我に目覚めたのが小学校だし。ここ最近自我を連呼しているがそれは最近になって自我という単語を覚えたからです。


「直弥が羨ましい。僕も幼馴染が欲しかった」

「お前が思っているより大したモンじゃないからね」


 幼馴染ってのは文字通り、幼い頃からの馴染みってことだ。アニメのような間柄ではないと思う。ただの友達さ。


「つーか柊木さんマジ可愛い。穏やかで大人びた上品な佇まいの中に幼げな可憐さも兼ね備えて最高だよ」

「……んなことねーよ」

「じゃあ、柊木さんってブスだよな~。あんなブス見たことない」

「ふざけんな殺すぞテメェ! めちゃくちゃ可愛いだろうが!」

「直弥めちゃくちゃだぞ!?」


 俺はいいんだよ幼馴染だから! などと意味不明な理由を述べたら麺太がげんなりと顔をしかめる。なんだ文句あんのかオラァ!

 ふんっ、二度と久奈のことブスとか言うな。どの角度から見ても美少女だしクラスでも男子人気が高いだろうが。二組の清楚と言えば久奈で、二組のギャルと言えば金城のことを指す。


「誰がギャルだし」

「いたんかい。そして思考読むんかい」


 気づいたら俺の背後には金城が立っていた。いつものように髪を撫でてきやがる。

 金城はクラスで男女問わず人気が高い。女子グループのリーダー的存在だし、ギャルっぽい見た目と気兼ねなく話しかけてくるのは男子にとっては高ポイントらしい。


「久土もあたしのこと高ポイントなの?」

「マジでその能力すげーな!?」

「いいから答えてよ~」

「あ、はいはい! 僕は金城さんのこと高ポイントです!」

「向日葵君には聞いてないでーす」


 ガーン!と盛大に落ち込む麺太。金城はケラケラ笑いながらも手を止めず絶え間なく俺の髪を撫でまくる。

 はぁ……どうして俺の周りにはキャラ濃い奴ばっかり集まるんだ。久奈もたまに変なこと言うし。というか笑わないしぃ? というか顔に変化が見られないしぃ!?


「ねえ久土、今度の土曜暇? ハロウィンパーティーの衣装を見に行きたいー」


 ワシャワシャ撫でつつ金城は喋る。ハロウィン? ……あぁ、そういえばそうだったな。今度、クラスのみんなでパーティーをやるらしい。仲良しだねぇ。


「あの、僕、誘われてないんだけど?」


 麺太は恐る恐るといった具合で金城に尋ねる。金城はそれに対してニッコリ良い笑顔を浮かべて返事を返す。


「うん、幹事の人が向日葵君には声かけてないもん。ちなみにあたしが幹事ね」

「ガーン!?」


 麺太二回目のダウン。口からラーメンを吐き出して鼻からうどんを噴き出した。なんつー器用な奴。つーかキモイ、キモ過ぎる!

 ま、まあ誘われなかった麺太はドンマイってことで……ん、待てよ? ハロウィンなら、久奈を……。


「いいこと思いついた」

「どしたの久土?」

「ふふっ、なんでもない」

「気持ち悪い。なんでもないのに気持ち悪い笑み浮かべるとか気持ち悪いし」

「気持ち悪い何回言うつもりだ」

「三回」

「回数は問うてないわ!」


 久奈の笑顔を見る為、ふと思いついたアイデアを実践するのが俺の日常俺のジャスティス。

 今思いついた作戦は……うふふっ、楽しみだ。小さく笑い、新たな作戦に胸馳せる。

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