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第62話 Re:ゼロから漫才スタート

 朝五時、起床。携帯には『六時集合だね、分かっタンメン!』という返信と麺のスタンプが来ていた。

 ちゃんと来いよ? あと麺類のスタンプなんてあるんだね。森羅万象ありとあらゆるジャンルを食い尽くすクリエイターズスタンプ界の貪欲さには驚嘆っす。探せば久土専用スタンプもあるのでは?


「っと、提案した俺が遅れちゃ話にならん」


 制服に着替えて部屋を出る。

 リビングのソファーには母さんが座っていた。


「びびびビックリしたぁ!?」

「おはよう」

「ナチュラルな朝の挨拶! いや母さん寝てないだろ!?」


 テーブルには何枚も重ねられたDVD。オールナイトでドラマを観ていたらしい。四十代の主婦とは思えないタフネスっぷり。


「何をそんな熱心に観ていたんだよ」

「マイボス、リーガル、パパムス」

「ガッキー推しか」

「ガッキーと私そっくりやん?」

「しばくぞ」


 実母でもさすがに今の発言には殺意沸いた。舐めんな!


「そんでアンタはもう学校に行くん?」

「朝練がある」

「ほーん、将棋部にも朝練あるんやな」

「息子が所属する部くらい把握しとけ……」

「そんなん興味ない。悪いけど朝ご飯は用意しとらんわ。自分でなんとかしーや」


 朝五時だろうと朝七時だろうと乳酸菌飲料しか用意してくれないだろ。

 冷蔵庫のミルミルを飲んで朝ご飯終了。さて、行きますか。






 夜明け前、バスはまだ運行してなかったので電車に乗る。

 こんな時間に通勤するスーツ姿を見て「うわぁ、これが社畜か」と畏怖しちゃいました。というか声に出してしまってリーマンから「あ? 文句あるの?」と絡まれました。早朝からイライラしすぎぃ。

 リーマンに謝罪し終えて凍える思いで学校へ到着。

 しんと静まり返った校内にはまだ誰もいないと思ったら何人か登校している人がいた。三年生や部活生かな。なんにせよすげーっす。


「直弥ういっす~」


 教室に入ると既に麺太が着席していた。電気ケトルで沸かしたお湯をカップ麺に注いで鼻歌を歌っている。


「今日は電気ケトルか」

「ガスコンロもパスタマシンも駄目なんでしょ? じゃあこれしかない」

「それもどうかと思うが……」

「ルンル~ン、カップ麺~♪」


 昨日あれだけ女子から精神攻撃食らったのに今はケロッと血色の良い顔。ホントお前のセーブ機能どうした。一週間ならぬ一日フレンズか。


「直弥も食べる?」

「サンキュー」


 体の芯まで冷えていたから温かい食べ物は大歓迎。

 熱いスープと麺を堪能する数分後に胸馳せる俺の眼前に、麺太が鞄を広げる。


「どれがいい? ラーメンは味噌と醤油と豚骨とシーフードと塩、うどんは肉うどん、かき揚げ、ワカメ、カレーがあるよ」

「ラインナップの豊富さ!」


 鞄には大量のカップ麺がぎっしりと詰まっていた。多すぎ! こいつホント麺が好きだな……。


「じゃあ麺職人の醤油で」

「ほう! 麺職人にするんじゃな? この麺は ほんとに 元気が いいぞ!」

「オーキドみたいに言うな」


 カップ麺にお湯を注いで四分待つ間、俺は麺太にノートを渡す。麺太はノートを開いてぎょっと目を見開いた。


「これは、漫才の新ネタ……?」

「家で考えてきた」


 昨日は麺太のセクハラ発言のせいで何も出来なかったからな。明日の発表までになんとかしなくてはいけない。


「今から二人で構成を練るには時間が足りない。俺が書いたこのネタでいくぞ。今日から明日の本番までみっちり練習だ」

「おー、直弥が本気」

「たりめーだ」

「ここまでされたら僕も文句は言えない。本気出して覚えるよ!」


 麺太もテンションアップ、カップ麺を勢いよく食い終えてネタ帳を食い入るように凝視する。


「言っとくが残された時間が僅かでも妥協は一切なしだ。授業中も、飯食う時も、うんこしている時でさえ常に台詞を覚え続けろ。覚えたら頭の中で何度も反復して完全に定着させろ。本番までに百回は通しで練習するからな」

「よーし頑張るぞっ。金城さんを見返してやる。そしてチョコレートをもらってやる!」


 闘志の火が炎に。ぜってーに笑わせてやる。待っていろ久奈ぁん!

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