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第58話 お笑いコンビ結成

 床の上ライフを終えた俺と麺太は休み時間ライフを楽しむ。十分という僅かな時間で雑談に花を咲かせて和気藹々。


「年末のガキ使面白かったな」

「うんそうだね、コシのある中太麺には味噌ラーメンに合う!」


 会話が噛み合わない。でも和気藹々としています。


「ところで麺太、ちょっと相談したいことがある」

「中華そばについて?」

「違います」

「やはり中太ストレート麺かな。加水率を抑えて小麦密度を高めることで食感が増すんだ」

「違いますぅ!」


 中華そばについて聞きたくねぇわ。目ぇキラキラさせんな!


「もっと大事な話だ」

「今直弥の頭を撫でている金城さんについて?」

「それはもうすぐ終わる」

「終わらないよ~」

「終われよ!」


 休み時間になってからずっと髪をワシャワシャ。いつまで触っているつもりだ。そんだけナデナデするなら俺もお前の髪を……とか言うと金城が低い声で拒絶して俺のハートがブレイクなので口には出さない。俺、学習した。


「じゃなくて、俺とコンビを組んでほしい」

「「コンビ?」」


 麺太と金城の声が重なった。麺太は口を半開きにしてきょとん顔、キモイ。金城は口を半開きにしてきょとん顔、可愛い。


「僕が料理人で直弥が美食屋ってことね」

「いやそういう意味のコンビじゃない」

「麺作りなら任せて!」

「だから違いますぅ!? ますぅ!」


 仮にそれでどうやって人生のフルコースを決めろと? 前菜がスパサラ、スープがスープパスタ、デザートがモンブランになっちゃうだろ。


「美食屋のコンビではなくお笑いコンビだ」

「僕と直弥がお笑い?」

「……俺は決めたんだ。今年こそは久奈を笑わせてみせると」


 今年は本気だ。本気と書いてガチと読む。これまでの体を張ったギャグやモノマネでは通じないと痛感し反省したよ。だから今年は違う攻め方をするつもりだ。

 そんな俺が先程、久奈が笑っていたコンビ芸人の動画を参考に思いついたのは……漫才。そう、漫才で久奈を笑わせよう作戦である。であーる!


「頼む麺太、協力してくれ」


 漫才は二人一組で行うもの。相方に選ぶとしたら、初めにパッと思いついたのが麺太だった。


「ちなみに聞くけど金城はどうよ」

「あたし無理~。久土とお笑いするなんて薄ら寒い」

「薄ら寒い!?」

「うすさむ」

「略すな!」


 麺太の次に思い浮かんだ候補だったがキッパリ断られた。金城はうすさむと連呼して去っていく。

 くっ、やはり麺太しかいない。頼む、お前以外考えられないんだ! なんかプロポーズみたいになってる?


「いいよ」

「マジか」

「僕と直弥で笑いの頂を獲ろう」


 麺太が快諾してくれた。やったぜ。ここに一組のお笑いコンビが誕生した!

 見てろよ久奈~、抱腹絶倒の漫才で大爆笑させてやる。今年の俺は一味違います!


「コンビ名は『麺処・麺太弥』でいい?」

「却下だ。俺の要素が『弥』しかねぇ!」











 その後、ガッツリと話し合ってコンビ名は『土日のジェントル麺』に決定。絶望的なまでに売れそうにないが無問題。

 漫才コンクールに挑戦するわけではない。久奈を笑わせる、それのみを目標に結成した!


「てなわけで今日から練習開始や!」

「おお、直弥元気だね」

「ったり前だるぉうがあ!」


 てなわけで放課後、相方の麺太と教室に残ってネタ作りを始める。うおおおテンション上がってきたぞおおおお。


「僕、部活があるんだけど」

「んなの休め。サボれサボれ!」

「結構なこと言うね」


 俺だって久奈に寄り道を誘われたが断って今ここにいるんだ。相方ならお前も何か代償払え!

 というか久奈には見せられない。てなわけで先に帰ってもらった。てなわけ!


「早速ネタを書いてみた」


 ネタ帳を渡す。我ながら面白いと自負してまっせ。


「直弥って柊木さんのことになると頭おかしくなるよね」

「ごちゃごちゃうるっせい! 早く読めや!」

「わ、分かったよ」


 麺太はネタ帳に目を落とす。ふむふむ、と頷き読んでいく。


「なるほど」

「どうだ」

「全然駄目」


 麺太はネタ帳を投げ捨てた。馬鹿な、俺が数学の授業フルタイムを使って考えたネタが面白くなかっただと……!?


「どこが駄目だったんだ」

「麺を題材としていない。麺って単語は絶対に入れなきゃ」

「単語縛り? 麺は必需じゃなくていいだろ」

「いいわけないでしょ! こらあああぁ!」

「急に叫ぶ! ちょ、やだ、ビックリした」

「僕らは『土日のジェントル麺』だ。麺について熱く語る漫才が売りじゃないか」

「ツッコミはキレよりコシ、て馬鹿野郎!」

「ノリツッコミいいね。その調子だよ直弥っ」

「マジかよ!? これでいいの!?」


 そうして一から麺太とネタを作っていく。


「僕がボケで直弥がツッコミ。立ち位置は」

「おっ、立ち位置を決めるのそれっぽいな」


 時に意気投合し、


「なんでやねんは古い。麺でやねんってツッコミにしよう」

「それ意味分からねーよ」

「麺でやねん!」

「即実践すな!」


 時に殴り合いの喧嘩をし、切磋琢磨と呼ぶには拙いながらも意見を出し合って漫才の形を練っていく。


「決めポーズは僕が湯切り、直弥も湯切りね」

「ダブル湯切りか。いいね」

「せっかくだし衣装も統一しよう」

「例えば?」

「黒のTシャツ着て頭にタオルを巻く!」

「おお、ラーメン屋の店員みたいだ」

「漫才中は常に腕組んで気難しい店長顔で」

「すげぇ! どんどん決まっていく」


 第一回目の打ち合わせは予想以上に好スタートを切れた。調子が良くて笑いが止まらないっす。

 お? おお? 俺と麺太って漫才の才能あるんじゃね? こりゃ久奈も笑い転げてくれるぞ~!


「じゃあ僕が衣装を作ろうっ。明日も練習は放課後にやる?」

「俺はいいけど、お前二日連続で部活サボれないだろ」

「平気さ。何なら朝も集まろうよ」

「……なんか、急に誘ったのに結構ノリ良いな」


 友達からお笑いをやろうと誘われたら迷うはずなのに麺太は快諾してくれた。それどころか今なんてノリノリでネタを書いている。なぜだろう?


「僕にもメリットがあるのさ。金城さん率いる女子メンバーを見返してやりたいんだ。……それに」

「それに?」

「漫才でカッコイイところ見せたらチョコを貰えるかもしれない」


 ああ、もうすぐバレンタインデーだったな。漫才が面白い=チョコ貰えるの式には賛同しかねるが。


「センス良い僕のボケを見て金城さんも『きゃっ、惚れた。向日葵君だいしゅき!』となること間違いなし」

「そう上手くいくか?」

「いく! だから直弥よ、共に頑張ろう。目指すはチョコ二桁だ!」


 俺は久奈を笑わせたらそれで十分なんだが。まあ、麺太がやる気になっているなら別にいいや。


「それに、直弥に頼まれたら断らないよ。柊木さんを笑わせるのを僕も協力したい」

「麺太……」

「さあ休憩は終わり、もっと内容を詰めていくよ!」

「そうだな……その、サンキューな」

「おいおい声が小さいって。お礼は、二人で頂きを獲った時に言い合おうぜい」

「麺太……よっしゃやったるで!」

「「うおー!」」

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